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科学

ドイツ人女性の声が低くなり、日本人女性の声が世界一高い理由

Text by Yuki Kubota
久保田由希 ベルリン在住のフリーライター。各メディアで、ベルリンのライフスタイルについて執筆。著書に『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』、最新刊に『心がラクになる ドイツのシンプル家事』プロフィール詳細

Illustration: drante / iStock / Getty Images

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なぜドイツの女性の声が低くなっているのか


ドイツのライプツィヒ大学病院による調査で、女性の声が低くなっていることが判明したと「ターゲスシュピーゲル」が報じている。

この調査は生活習慣病などを調べるために、40〜80歳の健康な男女2500人を対象に実施された。

同大学病院のミヒャエル・フクスによれば、男性の声の周波数は世界標準で110Hz、女性は220Hzだという。つまり女性の声は男性よりも約1オクターブ高く、これまで教科書にもそのように記載されていた。

だが調査の結果、ドイツの女性は平均165Hzで話していることが判明。この数値は生物学的に有意だとフクスは話す。

女性の声が低くなったのは、体格が以前よりも大きく重くなり、寿命が伸びたためではないかとも推測されたが、その可能性は否定された。体格の変化が要因ならば、男性の声も同様に低くなっているはずだからだ。

同様に、喉頭の大きさが変化したのではないかとの仮説も否定された。環境変化によるホルモンの変化も見られなかった。

同大学病院では、女性の声が低くなった原因として、女性の社会的役割の変化を挙げている。女性は以前に比べて自信を持ち、仕事で成功を収め、より多く稼ぐようになっている。そうしたジェンダー意識の変化が、低い声に表れているという。

なぜ日本の女性の声は世界一高いのか


人は男女ともに、低い声を心地よいと感じ、低い声の持ち主は性別にかかわらず人からの信頼を得やすい。一方、高い声は、相手に保護者としての本能を呼び覚ます。

たとえば米国の女優ドリス・デイは、ほとんど子供のような高い声で知られている。ドイツの女優メヒティルト・グロースマンは、その低い声がトレードマークになり女優として成功した。もっとも、彼女の低い声はタバコによるものだ。喫煙によって人の声はしわがれる。

仕事でコミュニケーションがより重要視される現代では、声は大きな役割を果たす。男性のなかには、低くしゃがれた女性の声を脅しだと感じる人もおり、高い声を神経質、気難しい、低能と受け止める人もいる。

人の声が社会的環境によって変化するとすれば、それは各人がその社会に属するためであり、意識・無意識の両面に関わるものだ。

ミヒャエル・フクスは「日本女性の声は世界で最も高い。日本では女性の高い声が理想的とみなされています」と言う。

女性の声が世界で最も低いのはスカンジナビアで、その国々では男女平等が進んでいる。

アンゲラ・メルケル独首相。ニュルンベルクにて。2017年12月15日
Photo: TF-Images / Getty Images


信頼を得ることが重要な政治家は、スピーチトレーニングをする。マーガレット・サッチャーが政治家としてのキャリアを歩み出した当初、彼女の声は高かったが、トレーニングして低くなった。

じつは現代ではすでに、子供の歌が以前よりも低く歌われている。幼稚園教諭や保母たちが低い声で話し、歌うようになっているからだ。

フクスは自分の声を意識的に扱うトレーニングを教育課程に取り入れることに賛同している。こうしたトレーニングは、ドイツではいまのところほとんど実践されていない。

女性の声を聞けば、その国・社会で求められている女性像がわかると言えるかもしれない。日本人女性の声の高さが変わるときは来るのだろうか。

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