私は自分の名前を何度も何度も・・・
変えながら生きてきました。
そのはじまりは、私が生まれた直後。
大病を患った私が
「死ぬかもしれません」
なーんてお医者さんに言われたことです。
それを聞いた父は病気の原因をこう考えました。
「名前が悪いからじゃないか?」
縁起の悪い『A』という名前は辞めて、
新しい『B』という名前に変えよう!
というような話になったワケです。
なんでそんな話になるのか?
父は少し変わったモノを信仰していたから・・
だと思います。
話を戻しますね。
当然、戸籍上の名前は『A』のままですが・・
私はその後の18年間ずっと、
通称名『B』を名乗り続けることになりました。
家族も親戚も学校の先生も同級生も
誰も私の『本当の名前』を呼びません。
卒業証書は常に2枚。
『A』と『B』という名前でそれぞれ
卒業証書をもらっていました。
ちなみに保険証は『A』の名前
パスポートは『B』の名前でした。
理由は・・・・知りません・・・
「A君・・学校は楽しいかい?」
と私の本当の名前を呼んでくれるのは、
病院の先生と看護師さんだけです。
戸籍名は『A』なのですから、
もちろん保険証は『A』という名前。
だから病院でだけは、
私は『A』と呼ばれるのです。
・・・思い返せば
『B』は本当に無能なヤツでした。
小学校での最初の授業で
「折り紙でツルを折りましょう」
クラスでただ一人『B』だけが折れなかった。
周囲に馴染めず、何をしても上手く出来ない。
もちろん学校では変人扱い・・
しかし病院での私『A』は違います。
病院に検査に行くと、
看護師さんに褒められます。
「すごいね!ちゃんと喋れるんだね!」
「すごいね!ちゃんと歩けるんだね!」
当たり前のことが出来るだけで、
褒められて優しくしてもらえるのです。
『A』はエライ子。
『B』は無能な変人。
全く同じ人間のハズなのに、
他人からの扱いは真逆。
『多重人格』とかでは無いのですが・・
私の中でも
『A』と『B』は別の人間として・・
どんどん切り離すようになりました。
そして・・18歳になった私は、
圧倒的な無能力によって、
半年で警察官をクビになりました。
警察官になるためだけに生きてきたのに・・
もうどうしていいかわからない・・・
父さんも母さんも幻滅している。
親戚中みんな呆れている。
「警察官をたった半年でクビになった」
なんて・・もし同級生にバレたら?
ああ・・・・恥ずかしい。
そんなことになったら・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・
よし・・・・そうだ・・
悪いのは『B』だ!
よーしよしよしよし・・・・キューッ
キューキューッ
君が全ての恥と罪を背負って消えてくれ・・
ザックザック・・・
そうじゃないと・・そうとでも考えないと・・
私の心は耐えられない。
警察を去った後の私は、
強烈な鬱?のような状態になり。
錯乱していたのです・・・
こうして私は・・・・・
18年間名乗っていた名前『B』を捨てました。
わずかにあった人間関係も極力切り捨て。
そして新しく『A』と名乗り始めたのです。
人生リセット。
私は名前を変え、
新しい人生を始めました。
そう・・・・・
私が目指すべき『新しい自分』とは・・・
『警察官をクビにならなかった自分』
長い長い・・年月はかかりましたが・・
・・・すると周囲の人からこんな風に
言ってもらえることも増えてきました。
『A』君は仲間思いだよね・・・
『A』先輩は何でそんなに親切なんですか?
『A』は曲がったコトがキライだからなぁ・・
はは・・・・・・
本当にそういう人間だったのか?
いや・・・おそらく違います。
私は『警察官をクビにならなかった自分』
自分の思い描く『理想の警察官像』に
ずっと近づこうとし続けただけなのです。
だから・・・・
『愛』とか
『正義』とか
『思いやり』とか?
なんとなく警察官っぽいモノに対して、
異常なほどに執着し始めたのです・・・
うーん・・・・
自分とは一体・・・・・・・
・
おわり