「鉄道のまち福知山」の歴史を伝える施設として親しまれ、今秋で開館20周年を迎える京都府福知山市下新町の福知山鉄道館ポッポランド(足立和義館長)の存続が危ぶまれている。1931年に建設された施設の老朽化が進んでおり、安全性を考慮して旧市街地で移転先を探してきたが、見つからない状態。このため、管理する市は所有者との賃貸契約更新時期の3月末で休館し、市内全域に広げて候補地を探す方針だ。
同館は98年9月、市制施行60周年を記念し、中心市街地活性化のけん引役として開館した。地元商店街が長年運営し、14年春から西日本鉄道OB会福知山地方本部が引き継いだ。
かつて百貨店や銀行などとして使われた鉄筋コンクリート造り5階建ての建物の1階部分297平方メートル余りを利用。高架前の福知山駅周辺ジオラマやC57の動輪、北丹鉄道関係資料、旧国鉄時代の鉄道部品など500点以上を展示している。
元SL機関士らスタッフの経験談を交えた分かりやすい説明が好評で、一時は年間1万人を切った入館者が、一昨年度は過去4番目の多さとほぼ同じ約1万7千人に回復し、累計約30万人になっている。
しかし各地で震災が発生し、高い耐震性が求められるなかで、市では「施設が老朽化し、耐震性にも課題があり、不特定多数の人が出入りするため、安全性の確保が必要」と、昨年8月から同地方本部と対策を協議。賃貸のため市が改修するのは難しく、移転先を探したが、展示スペースや賃貸料などから適した物件は見つからなかった。
このため、昨年12月28日に開かれたポッポランド運営委員会で、市は現施設での運営を今年度内でやめ、旧3町を含む市内全域で移転先を探すことを伝えた。さらに、ポッポランドのあり方について、関係者、学識経験者、一般市民で組織する検討委員会を組織するという方向性を示した。
市では「SLを静態保存する2号館は休館しない。本館は苦渋の決断の末、いったん休館という方向性を決めた。今とは別の場所に適した建物を見つけ、一日も早く再開できるように努力したい」と説明する。
スタッフ12人の先頭に立つ足立館長は「運営を引き継いで以来、大切な鉄道遺産を展示するポッポランドの入館者を増やそうと工夫を凝らしてきた。入館者が回復するなかで、はしごを外された気持ち。鉄道のまちの灯を消すようなことをしてはならない。このままでは閉館となる可能性もあり、存続に向けて市に強く要望する」という。
写真=3月末で休館予定の新町アーケード内にある福知山鉄道館
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