古代魚としての系統

今世紀 最大の魚類発見

1798年 フランス皇帝 ナポレオンがエジプト遠征を行った際に、学術的に新発見されたポリプテルス。
遠征は領土目的の他に、エジプトの考古学・美術・博物学を中心とした調査を行う目的もありました。そのため軍隊と共に学者・画家など総勢175人の調査団が同行し、数多くの貴重な情報を収集たと記録されています。 その同行班にいたフランス国立自然史博物館の動物学者でナポレオン軍将校のエティエンヌ・ジョフロワ・サン=ティレール(Etienne Geoffroy Saint-Hilaire, 1772-1844)は ナイル川流域の魚類調査で「ナポレオンのエジプト遠征の最も大きな功績の一つ」とか「19世紀最大の魚類の発見」とも言われる奇妙なサカナを発見しました。

そのサカナはサン=ティレールによって 「ポリプテルス・ビキール・ビキール」 として論文発表され、魚類が両生類へ進化した過程を裏付ける極めて貴重な魚として学会で知れ渡りました。 学名のポリプテルス(Polypterus)とは背ビレが背中一列に連なった小離鰭(しょうりき)が特徴的なところからギリシャ語由来で「多くのヒレ」という意味があり、 古称でも同じように多鰭魚(たきぎょ)と呼ばれています。

poly
多くの

pterus
ヒレ

Polypterus
ポリプテルス

ポリプテルス

pterus の原意は古典ギリシア語の接頭語 πτερόν、pteron で、これは 翼・羽・翅 などの意味もあります。 pteron由来の有名どころは、翼竜プテラノドン(Pteranodon)とか ヘリコプター(helico-pter)とか。これらはヒレでなく翼を意味しています。
エジプト遠征で得た数多くの情報は収集してまとめられ、1809年から14年間の歳月をかけて「エジプト誌」として刊行されました。 エジプト誌は「古代篇」「現代篇」「博物篇」「地図篇」があり、ポリプテルスの原記載図は博物篇に収められています。 残念ながらポリプテルスはエジプト誌刊行後ほとんど研究が進まないまま現在に至っているようです。
ポリプテルス:古代魚としての系統