2018年1月、大きな期待を背負いながら静かに船出をした制度があります。それは積み立て型の少額投資非課税制度、いわゆる「つみたてNISA」です。実は、つみたてNISAはマネーハックの観点からもとても有用な制度なのです。今月はこの制度をマネーハックのテーマとしたいと思います。
つみたてNISAは、従来のNISAに加えて新しく登場しました。従来のNISAは5年目に入ります。金融庁によれば、17年9月末現在で口座数は1101万に上り、証券投資の普及に一役買ったといわれています。制度スタート時にはテレビCMも多数流され、金融機関からダイレクトメールや営業提案を受けた方も多かったのではないでしょうか。
しかし、つみたてNISAはそれに比べれば、ややひっそりとしたスタートとなっています。運用益や分配金に対する非課税の投資額の上限は年40万円と、従来のNISAの3分の1ですが、非課税の期間は最長20年と4倍になっています。個人の長期資産形成に非常に役立つ内容になっており、ファイナンシャルプランナーとしては皆さんにぜひ利用してほしい制度の一つです。
ところが、つみたてNISA口座の受付窓口となる金融機関は積極的な広告や営業をあまり行っていないようです。その理由は何でしょうか。
■つみたてNISAは顧客本位の仕組み
実は、金融機関にとってつみたてNISAは「うまみ」がない制度なのです。はっきりいうと「利益が薄い」ということです。
メディアではしばしば金融機関によるリスク商品の販売についての問題点が指摘されてきました。個人顧客に対し「高い手数料の商品を売る」「短期的な回転売買を勧める」といった内容です。つまり、
「同じ商品なら10万円ではなく200万円売ったほうが手数料が多い」
「同じ200万円売るなら、販売手数料ゼロの商品ではなく3%の商品のほうが手数料が多い」
「含み益が出ていれば利益確定を勧め、別の商品を販売して手数料を得る」――といったような話です。いずれも金融機関がもうけ優先で営業しているからです。
投資初心者ほどこうした手口から逃れるのは難しいもの。むしろ、金融機関による投資の提案をすべてシャットアウトしたほうがいいとすら思ってしまいます。「興味なし」とはっきり告げれば、営業攻勢はトーンダウンするからです。
しかし、こうした顧客軽視の姿勢を正そうとしたのが金融庁です。同庁の肝煎りで創設されたつみたてNISAは、顧客本位(つまり、これまでの金融機関の姿勢とは正反対)の仕組みとなっています。例えば、つみたてNISAでは手数料の低い商品しか購入できません。
要するに、つみたてNISAは金融機関にとってはあまり取り組みたくない制度なのです。もちろん、すべての金融機関がそういうわけでありません(ネット証券などは積極的に取り組んでいる)が、消極姿勢が目に付くのはそういう理由なのです。
■積み立て投資をすると利益が非課税に
逆に見ると、言い方は悪いですがつみたてNISAは個人にとって「金融機関にだまされにくい」画期的な制度です。制度の概略を改めて説明しますと、以下の通りです。
・国内に居住する20歳以上の人が口座開設できる
・1人1口座を毎年開設できる
・元本で年40万円まで投資できる
・定期的な積み立て投資を原則とする
・投資対象は金融庁が定める商品に限られる
・非課税投資期間は最長20年
・その間の運用益や分配金が非課税となる
このほかにもいろいろありますが、まずは「積み立て投資をすると利益が非課税となる口座」と理解してください。
つみたてNISAのターゲットは、投資未経験者あるいは投資経験が浅い個人投資家です。現役世代の資産形成が想定されています。
■NISA未開設なら、つみたてNISAを
もし、あなたが従来のNISA口座を開設していなかったとしたら、つみたてNISAの活用をお勧めします。投資経験がまだなく、これから投資をスタートしてみようと考えている人には最適な制度だからです。つみたてNISAであれば、少額から始め、低コストの投資を確実に実行できるからです。
あなたがNISA口座をすでに保有していた場合で、有効活用できていないのであれば、つみたてNISAに切り替えてみるのも選択肢です。NISA口座とつみたてNISA口座は同じ年には同時に開設できず、1つしか選べません。詳しくは個々で確認してください。条件を満たせば金融機関の変更を行うことも可能です。
次回はつみたてNISAが個人にとって利点が大きいという理由を、具体的に説明します。