ケーターの可逆振り子の間違った作り方 - 重力加速度の測定
ケーターの可逆振り子の作り方とそれから重力加速度を求める方法を要約すると次のようになります。
1. 二つの支点A、Bを持つ実体振り子で
2. Aを支点としたときの周期とBを支点とした周期が一致し T であるとき
3. A、B間の距離をLとすれば重力加速度は 4*π^2*L /T^2 である
まあこれだけのことなんですが、ここには落とし穴があります。
※ (私のような)こういうことに慣れていない方向けの記事です。恥ずかしいのでこの方面に明るい方は読まないでください。
※ ケーターの可逆振り子の特徴(他の方法より優れているところ)や参考となるコンテンツへのリンクは
「ケーターの可逆振り子の作り方 - 1 - 重力加速度を測る」
にあります。またケーターの可逆振り子で重力加速度を測った例は
「ケーターの可逆振り子の実験例 - 重力加速度を測る」
にあります。
おまけ、ケーターの振り子を自分で作ろうという方に役にたつかもしれない記事。
「ケーターの可逆振り子の設計法 - 重力加速度を測る」
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はじめてケーターの可逆振り子というものを知り、上に書いたことをもとにさっそく実験して重力加速度を求めようとしたらとんでもないことになりました。
極端なケースを考えてみます。
厚さも密度も一定である長方形の金属プレートを用意し四隅に対称になるようにA、B、C、Dの四つの穴(軸受け)を開けます。
均質な材料で対称に作ってあるわけですから四つの穴どれを支点にしても振り子の周期は同じになります。これをTとします。
AとDの穴で実験したとします。AとDの距離をLADと記します。上の2.の条件を満たしているのでこれから重力加速度が求められるはずです。
gAD = 4*π^2*LAD /T^2
次にAとCの穴で実験したとします。AとCの距離をLACと記します。これも上の2.の条件を満たしているのでこれから重力加速度が求められるはずです。
gAC = 4*π^2*LAC /T^2
さらにAとBの穴を支点にして実験したとします。AとBの距離をLABと記します。これもまた上の2.の条件を満たしているのでこれから重力加速度が求められるはずです。
gAB = 4*π^2*LAB /T^2
ここでgAD、gAC、gABは重力加速度ですから三つとも同じ値になるはずです。
でも LAD > LAC >> LAB になっていますから
gAD > gAC >> gAB
となってしまいます。特にgAD、gACとgABは一桁は違ってきます。
重力加速度が実験方法によって違う値になるなんてことはありえませんからこれから導かれる結論は
ケーターの可逆振り子では重力加速度を求めることができないようだ
ということになってしまいそうです。
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上のようにヘンなことになるのは
支点間の距離 = 支点Aから重心までの距離 + 支点Bから重心までの距離
という前提を忘れてしまったからです。支点Aと支点Bを結ぶ直線上に重心がある必要があります。
重心の位置がわからなくていいというのがいいところなのにそれでは話が違うではないか、ということはないです。ここで必要なのは重心の位置ではなく重心の方向なので支点Aを使うとき振り子を静止して鉛直線上に二つの支点があればいいわけです。
この記事に書いたようなことをやるのは私くらいだとは思いますがおもりの調整をしているうちに重心が二つの支点を結ぶ直線上からずれてしまったなんてことは起こりそうなのであえて書きました。
ところで実験で使われているケーターの可逆振り子の写真を見るとヘンな(バランスが悪そうな)形をしています。次はそのことについて書きたいと思います。
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関連
「記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
重力加速度測定
「ケーターの可逆振り子の作り方 - 1 - 重力加速度を測る」
「ケーターの可逆振り子の設計法 - 重力加速度を測る」
「重力加速度測定装置 - プロトタイプ」
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