ランニングブームを狙った出店の負債で破産

経営者の「思い入れ」もあだになったアート・スポーツ

2018年1月9日(火)

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 ピーク時は売上高が65億円を超えた創業50年のスポーツ用品店運営会社、アート・スポーツ。テニスや自転車のブームが去り、売り上げが低迷。ブームを狙った出店の負債が重荷となり、資金がショートした。(この記事は、「日経トップリーダー」2017年7月号に掲載した記事を再編集したものです。肩書は掲載当時のものです)
東京・渋谷駅近くにあったアート・スポーツ渋谷店。破産手続き開始後の閉店セールは常連客などでにぎわった

 2017年4月初め、スポーツ用品店運営のアート・スポーツ(東京・台東、以下アート)から、ICI石井スポーツ(東京・新宿、以下石井)に緊急連絡が入った。

 「今のままでは、4月末で資金繰りがショートしそうです」

 石井は、13年秋からアートと業務提携し、社員を出向させるとともに、複数回にわたる融資や仕入れの代行など、合計2億数千万円の資金援助をした。これにより、アートは滞りなく経営ができていると見ていただけに、石井側には寝耳に水だった。

上野の本店。破産申請後の2017年5月12日、石井への事業譲渡が終わり、同日夕方から営業を再開した
同店のポイントカード。根強いファンが多かった

 アートは17年5月9日、東京地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けた。負債総額は15億8800万円(東京商工リサーチ)。

 アートは、1967年にスポーツ好きだった木村正男社長が個人で創業。69年に法人化した。学園紛争が落ち着き、サークル活動が華やかになった大学生のニーズなどをうまく捉えて成長した。

 77年、ランニング用品などの品ぞろえが充実した東京・上野の本店をオープン。86年に渋谷店、87年にアウトドア(登山、自転車、ダイビング)に特化した上野のODBOX(オーディーボックス)本店を開くなど、積極的に出店を続けた。ピーク時の92年2月期には都内を中心に約15店を構え、65億9000万円を売り上げた。

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「ランニングブームを狙った出店の負債で破産」の著者

宮坂 賢一

宮坂 賢一(みやさか・けんいち)

日経トップリーダー副編集長

1991年に電気通信大学を卒業後、日経BP社に入社。日経パソコン、日経エコロジーの記者、日経PC21副編集長などを経て2007年からオーナー経営者向け経営誌、日経トップリーダー記者。13年より日経レストラン副編集長を務めた後、16年3月より日経トップリーダー副編集長。最近は、製造業、飲食店、ベンチャー企業関連の取材が多い。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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内田 貴之 法政大学キャリアセンター課長