2017年4月初め、スポーツ用品店運営のアート・スポーツ(東京・台東、以下アート)から、ICI石井スポーツ(東京・新宿、以下石井)に緊急連絡が入った。
「今のままでは、4月末で資金繰りがショートしそうです」
石井は、13年秋からアートと業務提携し、社員を出向させるとともに、複数回にわたる融資や仕入れの代行など、合計2億数千万円の資金援助をした。これにより、アートは滞りなく経営ができていると見ていただけに、石井側には寝耳に水だった。
アートは17年5月9日、東京地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けた。負債総額は15億8800万円(東京商工リサーチ)。
アートは、1967年にスポーツ好きだった木村正男社長が個人で創業。69年に法人化した。学園紛争が落ち着き、サークル活動が華やかになった大学生のニーズなどをうまく捉えて成長した。
77年、ランニング用品などの品ぞろえが充実した東京・上野の本店をオープン。86年に渋谷店、87年にアウトドア(登山、自転車、ダイビング)に特化した上野のODBOX(オーディーボックス)本店を開くなど、積極的に出店を続けた。ピーク時の92年2月期には都内を中心に約15店を構え、65億9000万円を売り上げた。
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