組織改善、業務改善。これらをするときに、あるべき正解というのはわかっているが
変化を恐れる人、古い固観念。こういったものに阻まれて実際には変化を起こせなかったケースや、
諦めてその企業を離れる例などは多くあると思います。
書籍「学習する組織」には、その変化するために必要なものがのっていたのです。
- 作者: ピーター M センゲ,Peter M. Senge,枝廣淳子,小田理一郎,中小路佳代子
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2011/06/22
- メディア: 単行本
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今まで得ていなかった情報であり、私はかなりの衝撃をうけました。
そこで、この衝撃を他の人にもシェアしたくなり、概要をまとめることにしました。
ここでは各トピックに関する薄いまとめを書くだけに留めるので、
興味を持った方は是非書籍を購入してみてください。
書籍は500ページオーバーの大作で、より細かな情報があります。
なお、「その変化するために必要なもの」は書いてありましたが、
簡単に実現可能であるわけではない のであしからず。
学習する組織とは?
学習する組織とは継続的に変化し、進化していく組織です。
組織の成果は、組織に属する個人およびその集まりである組織そのものが変化し、進化することによって成長します。
そのため大きな成果を継続的に出していくためには学習する組織であることが重要です。
学習する組織に必要な5つの原則
システム思考
システム思考とは、ある出来事がその要素単体だけではなく、関連する要素が多くあり、
それらの原因と結果のサイクルからなる構造とメンタルモデルの結果として起こる、というような思考法です。
詳しくは以下の記事をご確認ください
自己マスタリー
自己マスタリーは個人のビジョンを明確にし、それを深めることです。
もっとカジュアルに言うと個人の夢ですね。ただ、誰もが夢があるわけでもないと思いますし、
「夢とまでは言わないが大まかにこんな人になりたい」ぐらいのものでも十分だと思います。
組織はその構成員である個人の能力を越えることはできません。
そのため、個人が成長することは組織にとって非常に重要となります。
個人が目的・ビジョンを持ち、それと現実との差を埋めたいと思う気持ち
の力を得て学習を加速・維持していきます。
この気持を 創造的緊張(クリエイティブテンション) と呼びます。
ほっておいても自分でうまくやっていける人はよいとして、
そうではない人への支援としてコーチングのスキルを持つ人間が組織にいると捗りどりそうですね。
例えば「システム開発者としてものづくりをして人の役に立ちたい」というビジョンを持っている社員に対して
「あなたは今日から営業です。会社のビジョンのために最大限の努力をしてください。」
といっても大抵の場合は大したパフォーマンスはでないでしょうし、おそらく遠からず退職するでしょう。
メンタル・モデル
メンタル・モデルは私達が世界をどのようにとらえ、どのように行動するかに影響を与える考えの傾向です。
人は、多くの場合自分の過去の経験を元にしたメンタル・モデルでものごとを意味づけします。
つい、自分の考え方の都合にあう材料ばかりを集めて自分好みの結論を導いてしまいがちです。
このことは、 「 抽象化の飛躍 」であったり、「 推論のはしご 」などと呼ばれます。
例えば、仕事の出来が悪い人間がいた場合に「こいつはサボっている」と無根拠に決めつけた場合、それは抽象化の飛躍です。
「真面目だけど能力が不足している」「実は周りの先輩が怖くて質問できない」など、他の可能性もあります。
「抽象化の飛躍」に気づき、真実にたどり着くためには振り返りと探求が必要となります。
振り返りをすることで、自分の思考や選択が偏ったものではないことを確認します。
この結果はどのような思考から生まれたか?
そこに「抽象化の飛躍」が存在するか?
振り返るタイミングを用意しなければそもそも気づきにくくなります。
探求は深掘りすることです。
例えば他者との間に「抽象化の飛躍」が存在した場合、
左側の台詞 という手法が有効です。
紙の真ん中に線を引いて右側に実際に発言した台詞を書きます。
左側に考えていたが表に出していない思考を書きます。
抽象化の飛躍が存在すれば、左右の差分によりそれが明らかになります。
例えば、「昔からルールだから」という理由には何の裏付けもありませんが、
「慣習はどのようなものであっても大切にする」というマインドセットの人は慣習の真の意義を考慮せず
抽象化の飛躍を起こし、時代の変化に即した新しい慣習づくりに反対する、というようなケースがあるでしょう。
この場合に、振り返りをすることで実はその慣習の目的を無視していたことに気づくかもしれませんし、
左側の台詞を活用したやりとりによって、実は自分の選択は無根拠だったことに気づくかもしれません。
共有ビジョン
共有ビジョンは組織・個人がそれぞれのビジョンを共有し、言われたからするのではなく
したいと思ったからする状態にしていくことです。
企業理念、MVV(Mission, Vision, Value)などを単にトップダウンに作って
命令しただけでは従業員が言われたから追従しているだけであり、コミットしている状態ではありません。
企業は善い目的を持ち、個人がそれに納得して協力したいと思い、コミットすること。
個人は自己のビジョンを明確にし、組織のビジョンと重なる事を理解し、
それにコミットすることを意思決定することが必要です。
何らかの変化の普及が一定の範囲で止まる時、その止まった範囲では
ビジョンが共有されていない可能性が高いです。
ビジョンの共有のためには、
- 個人のビジョンを組織と共有すること
- 自分の意見通すだけではなく、対話により他者の考えに耳を傾ける
- 強制ではなく選択を促すこと
などを行なっていく必要があるでしょう。
チーム学習
ものごとは個別の出来事だけではなく、組織やその外側も含めた大きなシステムで起こっています。
真に必要な変化のための情報を得るには自分以外の人との対話が必要です。
自分の主張だけを押し通すのではなく、各自の主張に耳を傾け
ともによりよい正解を作り上げていきます。
つまり 対話(ダイアログ) を行います。
こういった複数名による洞察は個人で行うよりもよりよい結果が生まれます。
対話(ダイアログ)を行う際は、お互いを仲間だと考えていることが重要です。
また、誤ったことや真実を言うことへの圧力があると対話は阻害されます。
つまり、心理的安全性が必要となります。
例えば、仲間を信頼せず自分だけの力でものごとを解決しようとした場合、
複雑な組織活動の真実に関する情報は得られず、他者との協力の上での解決が必要な問題への対処もできず、
結局は対症療法でいつまでたっても問題が改善しない、というようなことになるでしょう。
そこで対話(ダイアログ)を行うことで、お互いの知を集結し、協力して問題の解決にあたることで、
原因療法を導くことができるようになります。
まとめ
書籍中で私が衝撃を受けたのは主に3つです。
- システム思考とシステム原型
- 変化を起こすために対話と探求によって真実を導くこと
- ティッピング・ポイント
1は、制約理論(TOC)の内容と通じるところがありますが、
システム思考・システム原型の方がより詳細で、わかりやすく思いました。
実際に、この話を読んでからものごとが「出来事」による問題であるか「構造」による問題であるかの
感度が増したように思います。実際に業務に活かしています。
2は、記事タイトルの「あるべき論だけではできない組織改善に必要なものがここにあった」にあたるものです。
変化をするには単なる改善案だけではなく、人々の行動を変えるためのスキルが必要です。
SNS等でよくみかける「こうした方がいいのに、古い考えの人たちが邪魔をする」というような愚痴をしてもものごとは始まらず、
自ら先陣を切って、本音で話せる相手を増やしていったり、要人を巻き込んでいったりして
人々に本当の意味で必要なものや現在起こっていることの真実に納得してもらう必要があります。
ここで全く味方がいない、味方と思える相手もいないのなら、それは愚痴るタイミングというよりは
その場を後にするタイミングなのでしょう。
3は、実際に変化を起こすときに全員を味方に付ける必要はなく、ものごとが変化するのに
必要な閾値まで変化を起こせばよい、という話です。
例えばよくいわれるパレートの法則に従うならば、組織の利益を生み出す主要な2割との
対話に成功すればものごとは動く可能性が高そうです。