ROA(総資産利益率)とは？総資産で測るROEとの違い

徳田陽太

2018/01/08

スチュワード・シップコードの高まりやJPX日経400指数の誕生を背景に、投資効率を考える指標が重要視されるようになってきました。今回取り上げる用語、ROA(総資産利益率)も投資効率を測る指標のひとつです。

ROE(株主資本利益率)と非常に近い投資指標ですが、実は似て非なるもの。ROEとの違いを交えながら、ROAの意味を確認してみましょう。

ROAとは？

ROA(総資産利益率)とは、その名の通り総資産に対する利益の割合を表します。計算式は当期純利益を総資産で割ることで求められます。

ROA = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100

総資産に対して生み出した利益の割合を確認すれば、どれくらい効率よく利益を上げられているかが解ります。ROAが高ければ高いほど、効率的な経営が行われていると判断することができるのです。

ROAを求めるうえでの総資産の考え方

ROAを正確に理解するには、総資産の考え方が重要です。総資産には、返却を要する資産も返却を要しない資産も含まれます。つまり、ここでの総資産には株主資本も含まれるのです。

ROAを求めるうえで注意すべきポイントは、あくまで分母は総資産であるということ。自己資本も他人資本もひっくるめて計算することに注意する必要があります。

ROAとROEの違いとは？

資本には自己資本と他人資本が存在します。ROA(総資産利益率)とROE(株主資本利益率)では、この資本の考え方が異なるのです。まずは、用語の意味から簡単に整理してみましょう。

株主資本は主に、株主が拠出してくれた資金で返却不要な資金ですので、自己資本となります。安定した企業経営には非常に重要な資本です。

対して総資産は、株主資本だけでなく借入金も含めた値、自己資本と他人資本を足した値です。総資産には、返却を要する資金である銀行からの借入金も含まれるのです。

ROAとROEの計算式の分母になる、株主資本と総資産の違いを知れば、投資指標の意味を正確に理解できるようになります。

ROA、ROEともに経営の効率性を測ることができるが…

純粋な自己資本に対する収益性を調べるROE、返却を要する他人資本を含めた総資産からのリターンを確認するROA、どちらも経営の効率性を測る指標という点で共通しています。

しかし、企業経営の状態を包括的に判断する際には、ROAが重宝されるケースがあります。なぜなら、たとえ上場企業であっても、有利子負債を抱えているケースがほとんどだからです。

ROAとROEのバランスが重要

同業他社の比較を想像してみましょう。仮に、ROEが同じ値だったとします。ROAはA社の方が高くて、B社の方が低い状況では、どちらの方が企業の財務状況が安定していると思いますか？

この場合、A社の方が安定経営が行えていると考えられます。なぜなら、ROAが高いということは他人資本が少ないことを意味しています。ROAは借入が少ないことも暗示しているのです。

では、ROAが同じ値の場合はどうでしょう？ROEはB社の方が高くて、A社の方が低い状況では、B社のほうが資本をうまく使って利益を生み出していることになります。ROA、ROEは両方の値を見比べて判断することが大切なのです。

ROAに頼りすぎた分析は避けるようにする。

ROAの高い方が効率経営を行えており、ROAが高い銘柄に投資をするのがセオリーですが、ROAの値に必要以上に頼りすぎる投資判断は避けるべきです。なぜなら、ROAだけでは借入金の状況がつかめないからです。

借金が多くても順調に利益を上げていれば問題ないという考え方もありますが、このような銘柄は株価が急落するリスクも内包しています。上場企業の多くが有利子負債を抱えていることを考えると、ROAを信頼しすぎる分析はおすすめできません。上記の例の通り、その他の指標と組み合わせて分析することで、投資効果が高まるのです。

まとめ

ROAをはじめROEやROIなど、現代のマーケットでは投資効率性を測る指標が非常に重要視されています。個人投資家でも、これらの用語の意味を押さえておく必要があります。

ファンドによってはこれらの指標が悪い際には投資対象から除外しますので、上場企業もこれらの投資指標を改善するために躍起になっています。指標が改善される傾向の企業には投資チャンスがあるかもしれませんね。

徳田陽太

札幌で働く元証券マンのファイナンシャルプランナー。専門分野は株や投資信託を用いた中長期での資産形成。 趣味はスポーツ全般で小、中、高と野球部に所属。また、米国への留学経験があり、海外スタートアップ事情にも精通。

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