『はねるのトびら』がスタートしたのが20歳の頃。大阪の賞レースでブイブイ言わせて、勢いそのまま東京に出てきたが、当時、東京では誰も僕らのことなんて知らなくて、誰も『はねるのトびら』のことを知らなかった。
夜中の2時か3時に始まった東京ローカルの弱小ド深夜番組を続けていく為には、気が狂うほどコントを作るしかなくて、くわえて、誰かに見つけてもらわないといけなかった。
番組スタートから2~3ヶ月が経った頃、番組のファンだと公言してくださる有名人の方が出てきて、番組は月に1度ほど、番組のファンを公言してくださる有名人ゲストをお招きするようになった。
そのおかげもあって(それだけじゃないけど)、人気番組となり、あれよあれよという間に放送時間が上がり、僕が25歳の頃にはゴールデンタイムに昇格した。
ゴールデンに上がってからは、誰も観ていなかったド深夜時代と違って、番組の構成にテレビ局の事情も反映されるようになった。
ドラマの改編期になると、新ドラマの役者さん達がドラマの番宣で来てくださるようになったのだ。
深夜時代のようなコントはできなくなったが、ゴールデンタイムで局の看板をはるということは、そういったことも込み込みなので、甘んじて受け入れたし、ドラマのスターや映画のスターに出ていただけるのは番組にとってもプラスなので、それに対して不満を持ったことは一度もない。
番組のゲストで出ていただく方には極力オイシイところを持っていっていただいた。
また来て欲しいからだ。
レギュラー陣は全員そのことを分かっていたので、隙間を狙って、笑いを取りにいっていた。
いつだったか忘れたが、映画やドラマの番宣で出てくださるスターの皆さんのギャラがとても安いことを知った。
そりゃそうだ、たくさん番宣をして、たくさんの人に映画やドラマを観てもらった方が、役者さんにとってはプラスだ。
詳しくは知らないが、名だたるスター役者さん達が番宣で来られた時は、僕ら若手芸人よりもギャラが安かったのかもしれない。
そうこうしているうちに、一つまた一つと骨太のバラエティー番組が終わっていった。
芸人の極端なスキルを求めれらる現場が減ったとも言える。
これに対しては別に悲観的にはならなかった。
時代がそれを求めているのだし、発信する場所は、テレビ以外もたくさんある。どうしても自分のフルスロットルを見せたければ、そこでやればいい。
ただ、一つ問題があった。
あいかわらず番宣でテレビに出演するスターのギャラは格安で、そこまで骨太の『お笑い』を求められていないのに若手芸人のギャラが高いのだ。
テレビに軸足を置いている若手芸人は、番宣で来るスターのようにギャラを下げることができない。
そして、お届けしているのは、そこまで『お笑い』のスキルが求められない番組だ。
ギャラの安いスターと、ギャラの高い若手芸人。
タレントをキャスティングする側の目線で見たときに、若手芸人は圧倒的に分が悪かった。
その時からだ。
「若手芸人が己の収入の軸足をテレビに置いてしまうとジリ貧になる」と考えたのは。
そのまま逃げ切れる世代もある。
しかし30代以下の芸人は、テレビ以外の収入源を確保しておかないと、なかなか厳しくなるだろう。というか、もう、なっているハズだ。
特例もあるが、しかし、30代以下の芸人は作品を作らねば生きていけない。
ヤル気や思想ウンヌンの話ではなくて、今の日本のテレビのシステム上、そうなっている。
テレビの椅子を狙うなら、役者さんや歌手の方のように、芸人も「自分の作品の宣伝で格安で出演する」という流れになってくる。
先輩方や世間が「芸人のクセに何やってんだよ」と言ってくるかもしれないが、彼らとは置かれている状況が明らかに違う。
若手は作品を作った方がいい。
千人~万人規模の単独ライブでもいいし、又吉君のように小説でもいいし、オリラジのように音楽でもいい。
僕は1年に一本ぐらいのペースで作品を発表している。
『えんとつ町のプペル』ぶりの新作が『レターポット』だ。
ありがたいことに10年以上こんな活動をしていると、もう「芸人のクセに絵本を描きやがだて」とか「芸人のクセにプラットフォームを作りやがって」なんてことは言われない。
作品は、数字で結果が完全に出てしまうので、残酷だけれど、僕らはもうそこから目を背けることができない世代だ。
そして、世代交代のチャンスはそこにしかない。
面白いよね。
来週は『ゴッドタン』で劇団ひとりサンと対決しています。
服以外に様々なものを失いました。
是非、ご覧ください。
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