■いち宝塚ファンとして悩むこと。

anond:20180106164019

私も結論が出ていないけど、ブコメやトラバの誤解をいくつか正したくて書く。長くて申し訳ないけど。

まず、宝塚音楽学校は日本人しか入れない、これは間違い。

宝塚では劇団員のことを「生徒」と呼ぶ。

中国系、韓国系の生徒が占める割合はそれなりに多いし、トップスターに上りつめた生徒もいる（発音に問題がないことが前提条件だとは思うけど）。

アメリカを中心とした欧米諸国出身の親をもつ、いわゆるハーフの生徒もそれなりに多い。むしろ、舞台映えする頭身バランスはかなり好まれている印象がある。

ただ、相当顔の濃い生徒や東アジア、東南アジアのルーツを持つ生徒はいるけど、黒人の生徒が入ったことは今までにない。

それが1000人が受けて40人しか受からない選抜過程の問題か、日本の人口バランスの問題か、宝塚歌劇を好む層の問題かはわからないけど、実際この先どうなるんだろうね？　とたまに思う。

和ものであれば、必要に応じて舞妓さんのような白めのドーランを塗る。

フランスもの、スペインもの、日本ものでドーランの塗り方がすべて違うのが宝塚のやり方である。それはおそらく、生徒の肌色が白〜黄色であることを前提としている。

さて、宝塚のラテン・ショーの「黒塗り」は、どちらかというと日焼けした肌の色、褐色の塗り方であって、今回のブラックフェイスの議論からは少しずれてくると思う。明らかに「黒塗り」という名前が先行して誤解を招いている。

個人的に、通称「黒塗り」をしたタカラジェンヌがラテン風の衣装に身を包み、舞台で目をギラつかせながら踊り狂っている姿を見ると、日常のすべてのことを忘れられる。めっちゃかっこいい。

この文化がなくなることを、私は望んでいない。

今回元増田が投げかけた宝塚のショーでの「黒塗り」は、日焼けした、褐色の肌をセクシーなものとして消費する目線に基づいているけど（このへんは補足を読んでほしい）、小麦色の肌をしたラテン系の色男という、（宝塚歌劇の描く）ヨーロッパのイメージに基づいているいるために、差別的文脈かというとかなりのグレーゾーンにある、というのが個人的所感。

長々書いてきて結論がなくて申し訳ないけど、私は、万国さまざまな時代を舞台にしたショーや芝居を上演することで、美しい夢の世界を見せてくれる、宝塚歌劇を愛している。一回3500円で見る宝塚歌劇は、私のとるにたらないこの人生を支えてくれている。

「風と共に去りぬ」で黒人奴隷を演じるにあたって真っ黒なドーランを塗るといったことは、もうやめたほうがいいのかな、と思う。ブラックフェイスという議論があると知った以上。

ただ、宝塚では様々な国や時代の物語を演じられる、舞台となる時代や国に合わせて、さまざまな化粧のあり方がある、それが夢の世界の演出をある程度支えている。

そのこと自体はどこかで守られてほしいと思っている自分がいる。

風と共に去りぬの黒人奴隷の黒塗りや「〜ですだ」という口調はアウト、ここには同意しても、ラテンショーの上演や、インド映画を宝塚化するにあたって、肌を褐色に塗ることを否定されると、反発したり戸惑ったりするファンは多いと思う。

それは、宝塚歌劇が常に新しい演目に挑戦して、様々な世界の舞台を作り上げていくことそのものを揺るがしうるから。

宝塚歌劇も演出家が代替わりしていくにつれて、観客がノーをつきつけるような描写が減りつつあることは感じている。

今後観客がどう考えるか、宝塚の中の伝統と欧米諸国と日本の規範の整合性をどうとるかだと思う。

【補足】

宝塚のショーの「黒塗り」は、ラテンのイメージだと述べたので少しずれるんだけど、黒人差別の文脈ではなく、むしろ褐色の肌をエキゾチックなものとして消費する、オリエンタリズムの問題の文脈に近い危うさをたたえているかも、とたまに思うことがある。

私も専門家ではないので誤りがあったら申し訳ないけど、オリエンタリズムとは、かみくだいていうと、「実体に基づかない、西洋の勝手なイメージを押しつけて消費し、それを東洋の後進性とむすびつけていくような考え方」のことだ。

たとえが貧弱で申し訳ないけど、よく古い映画や絵画に出てくるエキゾチックなオスマン帝国のハーレムとか、アラブの美少年のイメージ。

そうしたものをエキゾチックなものとして描くことが、どこかで東洋を劣ったものとして位置づける差別意識につながっていき、それが西洋の東洋（特に中東）に対する植民地支配を正当化する装置としてはたらいた。

それを問題にしたのがエドワード・サイードをはじめとする学者だ。

日本もその「東洋」に属することは間違いなくて、ゲイシャだのなんだのというイメージを押し付けられているわけだけど、日本のクリエイターが他の国々に対して、無自覚にオリエンタリズムに基づくイメージを投げかけていることはままある。

宝塚歌劇のなかには、ショーの一場面などでオリエンタルなアラブ風の演出を好む演出家がいるので、遠い先、いつか問題になるかもしれない、とは思っている。肌色の問題ではなく、あまりにも典型的なオリエンタリズムの再生産だとして。

ちなみにこうした場面が、ショーの一場面として上演される場合は、大体洋風の色白メイクだけど、上で述べたとおり、今度アラブなりインドなりを舞台にした物語を上演するときに、メイクをどうするかという問題は難しい。

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