まずいラーメン屋がまずい理由。ビジネスを成立させるのは仕組みと気遣い<魂が燃えるビジネス>
お正月休みは初詣や初売りなど家族や友達と出かける機会がたくさんありましたが、その時に困るのが食事処です。正月休みで普段は候補から外すようなお店でも、「ここで済ませるか」と妥協せざるをえません。
私もその例に洩れず、友人と普段は行かないラーメン屋に入りました。その店は背脂ちゃっちゃ系の醤油ラーメンがウリで、十年以上前はタウンガイドでもランキング一位になるような人気店でした。
しかし、時の流れは残酷です。久しぶりに入ったその店は雰囲気も接客も料理もどうしようもないレベルまで落ちていました。
・そこまで混んでいないのに注文がなかなか来ない
・スタッフ同士で常に私語を交わしている
・スタッフのTシャツがシミだらけで汚い
・スタッフのチノパンからトランクスが盛大にはみ出している
・研修期間の中国人留学生に一人でレジ打ちさせている
・ラーメンが不味い
悪夢のような出来事が一時間に満たない滞在時間で次々と繰り広げられました。それは「もう二度と来ない」と思わせるのに十分でした。もし来年の今頃、また同じ状況になったとしても私はその店だけは避けて他を探します。こうして商売は儲ける機会を損失していきます。
もしその店が10年前と同じ水準だったら、「久しぶりだけど、やっぱり美味しいな。また来よう」と考えたかもしれません。では「また来ようかな」と「二度と来ない」を分ける決め手は何でしょう。
私はそれを「気遣い」だと考えています。例えば今回のお店なら、研修中の留学生にレジ打ちをさせるにあたり、慣れたスタッフを一人つけるくらいはできたでしょう。店内が空いていて、私語をしている余裕があるならなおさらです。
留学生も研修中も問題ではありません。「不慣れなスタッフを気遣う」という発想がないから、結果的に接客にも支障が出ます。こうした一事が万事につながっています。私たちは決して馬鹿ではありません。特別にグルメや評論家でなくとも、料理が出される前から全体の雰囲気を通して、どんな店なのかを察することができます。
商売やビジネスする側に回るとつい「仕組み」だけで考えがちです。しかしどこまで仕組みを細分化してマニュアルを作っても、一瞬の気遣いまでは補いきれません。細かくレシピを指定しても「まあいいか」とスタッフが考えれば、それだけで味付けは崩壊してしまいます。クリンリネスも同様です。
こういった話題になると「バイトはそもそもやる気がないから仕方ない」とか「どう働いても月給や時間給で変わらないから頑張るだけ無駄」といった意見も出てきます。それこそが仕組みに依存した結果です。仕組みだけで成り立たせようとするビジネスは、「良いものを作ろう」という気概を萎えさせます。
その証拠にアルバイトを中心に回していても、不思議とやる気が伝わってきて「感じのいい店だな」と思わせるお店だってあります。もちろん仕組みやマニュアルは必要です。ただそれとは別に気遣いは店の清潔感やスタッフの接客や、料理の味を整えてくれるのです。ならば、それをあえて無視する理由はないでしょう。
私たちは何のために働いているのでしょうか。お金のために働いているのかもしれません。しかしそれだけだと頑張れなくなってしまいがちです。私も会ったことがありますが、世の中には純粋にお金のためだけに頑張れるタイプもいます。しかし大多数はそうではありません。
あなたは今の仕事に「張り合い」や「やり甲斐」を感じているでしょうか。そんなもの必要ないと思っているでしょうか、それともそう思い込もうとしているのでしょうか。
もし不満があるなら、「いい店」「いい仕事」「いい物」といった想像をしてみてください。すると「お金のため」だけでは浮かんでこなかった、人の顔が浮かんできます。それは同僚の顔であり、お客さんの顔です。彼らを笑顔にするのが気遣いであり、仕事を成立させるのに必要不可欠な要素になります。
【佐々木】
コーチャー。自己啓発とビジネスを結びつける階層性コーチングを提唱。カイロプラクティック治療院のオーナー、中古車販売店の専務、障害者スポーツ「ボッチャ」の事務局長、心臓外科の部長など、さまざまな業種にクライアントを持つ。現在はコーチング業の傍ら、オンラインサロンを運営中。ブログ「星を辿る」