実に不愉快な年末年始だ。

 東アジアで中国、北朝鮮による緊張が高まる中、足並みをそろえるべき韓国の文在寅大統領は昨年末、慰安婦をめぐる日韓合意が「欠陥」と断じ、30年間非公開とされる外交文書をわずか2年で勝手にさらした。

 年明け早々には、平昌五輪への選手派遣の用意と南北会談という北朝鮮の甘言を喜々として「歓迎」した。米紙ウォールストリート・ジャーナルはかつて「文氏は信頼できる友人だと思えない」と喝破したが、「親中・親北」「反日」政権が改めてはっきりした。

 ことの経緯はこうだった。慰安婦問題をめぐる2015年の日韓合意に対し、韓国外相直属の作業部会が12月27日、検証結果の報告書を発表。報告は「被害者(元慰安婦)の意見を十分集約せず、政府間で最終的・不可逆的解決を宣言しても問題は再燃するしかない」と指摘した。

 さらに合意には「非公開部分」があり、「海外の慰安婦像設置を支援しない。性奴隷の表現を使用しない。運動団体を説得するなど日本側の要求を韓国側が事実上受け入れていた」とつまびらかにした。

 文大統領は2017年12月28日、検証結果について「政府間の約束であれ、大統領として、この合意で慰安婦問題が解決できない」と表明した。さらに「国際社会の普遍的な原則に反し、当事者(元慰安婦の女性)と国民を排除した政治的な合意だ」とし、「手続き、内容にも重大な欠陥があることが確認された」と断じた。文氏は新たな対策を政府に指示、1月中に方針を決める見通しだという。

 文氏は一方で、「歴史問題解決とは別に韓日の未来志向的な協力のために、首脳外交を回復させる」と日韓関係を悪化させる意図がないことも強調したが、やってる事と言ってることが違う。

 文氏は2018年1月4日、元慰安婦の女性らを大統領府に招き、非公開の昼食会を開き意見を聞いた。

 日本政府は日韓合意に従い、2016年8月、元慰安婦の女性らを支援する韓国側の「和解・癒やし財団」に10億円を拠出し、国としての責務を果たしている。

 産経新聞(12月28日付1面)によると韓国の康京和外相が19日に来日した際、河野太郎外相と以下のやりとりがあった。

 康氏「日韓合意について韓国民は納得していない」

 河野氏「納得させるのはそちらの仕事で、こちらの仕事ではない」

 康氏「朴槿恵前大統領が勝手に決めて韓国外務省は関与していないので、正当なプロセスを経ていない」

 河野氏「首脳同士が合意し、両国外務省が最後は握手した。これを正当なプロセスでないというのであれば今後、韓国とは何も決められない」と。河野外相は28日、「韓国政府が合意を変更しようとするのであれば、日韓関係が管理不能となる」と厳しく批判、合意見直しには応じない考えを重ねて示した。

 河野氏の評判が良いようだが、毅然とした態度は頼もしい。

 今回の報告は朴槿恵前大統領が大統領府主導で進めた交渉を一方的に糾弾、前政権の「積弊を清算する」という文政権の方針に沿った国内向け“ガス抜き”の側面が色濃いという。また、韓国を取り巻く状況は、北朝鮮の核問題があり、米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備をめぐる中国との関係悪化など八方塞がりだ。

 さらに、平昌五輪開幕まで1カ月となり成功に向け、日本の協力は不可欠だ。それゆえ韓国政府は五輪が終わるまでは、日韓合意への立場表明はせず、日本を刺激しない意図がにじむが、終わった暁に何が起こるか想像に難くない。「慰安婦カード」は決して手放すまい。

 文在寅政権は歴史問題と経済協力を切り離す「ツー・トラック」の対日政策を掲げているが、厚かましいにもほどがある。

 さすがに韓国マスコミからさえ「国際社会の信頼を低下させる」「(破棄すれば)韓日関係は破綻」と至極真っ当な論調で、文氏はこれらを傾聴すべきだ。

 韓国が合意を検証しようがしまいが勝手だが「最終的かつ不可逆的」とする結論は変わらないし、変えてはいけない。韓国は慰安婦撤去の約束も守らず、海外に気味の悪い像をまき散らしている。 

 日本政府の高官は12月28日夜「ここまで踏みつけられたら日本国民も反発する。安倍晋三首相が平昌冬期五輪に行くのは難しい」述べたが当然だ。日本は「無視」を決め込むだけではいけない。「無言」は「容認」だと受け取られる。 

 そんな最中、韓国海軍は年末に海兵隊や海上警察などと共同で、竹島(島根県隠岐の島町)周辺の防衛訓練を開始した。訓練は、駆逐艦など艦艇5隻に加え、戦闘機や哨戒機、ヘリコプターを投入。「外部勢力の独島(竹島の韓国名)への侵入を阻止する」との想定で実施された。

 「慰安婦報告」に加え「竹島訓練」、これで日本を刺激していないと考える神経を疑わざるを得ない。

 政権浮揚のため「反日無罪」を容認し、国際ルールを守らない国とまともに付き合う必要があるのか? ああ、お屠蘇がまずい。

 (WEB編集チーム 黒沢通)