「いっぱいモーションキャプチャーを撮ったよね」(田中)
──久々の「Wake Up, Girls!」のアフレコ現場はいかがでしたか?
田中 アフレコって楽しいんだなと思いました(笑)。以前は自分のことでいっぱいいっぱいで、失敗したらどうしようとかばかり考えていたんです。ほかのことに気を配る余裕とか、ほかのキャストさんと話す余裕もそんなになくて。でも「新章」でまた集まって、ランガ(Run Girls, Run!)ちゃんもいるという新しい環境ではあったけど、それでもやっぱり楽しい。この数年で、周りを見る余裕が私の中にもできたので、みんなで一緒に「Wake Up, Girls! 新章」を作っている感じがしました。
吉岡 7人でいることの安心感はハンパなかったです。
──第1話上映会では、吉岡さんのファッションがおしゃれになったと言われていましたけど(笑)。
吉岡 それは音響監督の菊田浩巳さんにも言われました(笑)。何か変わったね? いいんじゃない?って。当時、相当ひどいものを着ていたんだなと思いました(笑)。
奥野 環境面で言ったら、新しいユニットの「Run Girls, Run!」の3人が同じブースで一緒にアフレコをしているので、失敗できない!っていう思いがやっぱりありました。どうしても、いいところを見せたいなって思っちゃうし(笑)。だから、ちゃんと自分の役に向き合って、失敗しないようにしています。「WUGさん、すごい」みたいに思ってもらいたいので、そういう意味での緊張感はありますね。
──後輩がいるってそういうことなんですね。自分たちが後輩のときに先輩がしてくれたことをやろう、みたいなこともあったり?
吉岡 私、(自分から)話しかけられないんです! でも少しずつ先輩に話しかけられるようになって、「これは私の中で成長だ」と思っていたんですけど、今度は自分から後輩に話しかけようとしても、謎の緊張でどう接していいかわからなくなってしまって。これまでずっと一番下だったからというのもあるんですけれど、これは今後クリアしていかないといけないなと感じました。
私たちの時は、先輩から台本の持ち方とか、マイクへの入り方とか、全部ていねいに教えていただいていたので、(ランガの)3人も聞いてくるのかな?と思ったら、できちゃってるんですよ! 「嘘でしょ! 私そんな余裕持ってなかったぜ……」っていう(笑)。
──ちなみに誰が一番積極的にランガの3人に話しかけられるんですか?
吉岡&奥野 美海じゃない?
田中 そう?
吉岡 美海と(高木)美佑がランガちゃんとしゃべっているのは見ました。私はランガちゃんと離れた席に座っているので……。話すことができないのは、席のせいです(笑)。
田中美海さん
──田中さんはどんな話をされるんですか?
田中 この間、あっちゃん(厚木那奈美)がサメのペンケースみたいなやつを持っていて、(林田)藍里のイメージアニマルがサメだから意識しているのかな?とか、いろいろ話しかけてみたんです。そしたら、ペンケースじゃなくてペットボトルホルダーだったんです。サメの口からペットボトルがワッと出てくるんですよ。「すごくかわいいのを持ってるね、これがはやってるの?」みたいなことを話したりしました。
吉岡 勉強になります(笑)! 持ち物から接触すれば……(ぶつぶつ)。
──今日の服かわいいね、とかでもいいんじゃないですか?
吉岡 私、服の話はダメなんですよ! でも、折り返し地点くらいまでには、何とか仲良くなりたいですね。
──奥野さんも、まだそれほど?
奥野 そうですね。私、ここちゃん(林鼓子)とは「今日、静岡に帰るの?」とか、ちょこちょこお話ししたんですけど、厚木那奈美ちゃんと森嶋優花ちゃんとはご挨拶ぐらいで、まだほとんどしゃべれてないですね。
──きっとランガの皆さんも待っていると思うので、ぜひ話しかけてあげてください(笑)。作品の話に戻すと、モーションキャプチャーを使ったダンスシーンも見どころですよね。
奥野 以前ゲームのために収録したことはあったんですが、アニメで使うのは初めてです。
吉岡 1話では「7 Girls War」だけ披露されたんですけど、これからもたくさんダンスシーンが登場します。
田中 いっぱいモーションキャプチャーを撮ったよね。
──実際に映像を見てどうでしたか?
吉岡 普通にテレビでは見られないアングルのカットや、すごいスピードで動くカメラなどアニメならではで、効果的だと思いました。
田中 やっぱり私たちがモーションキャプチャーをやっているから、動きのクセとかがキャラクターにも反映されていて、そこがよかったですね。
──キャラクターごとに歩幅も違っていたり。
吉岡 そうそう、美佑の足が長いから歩幅も大きかったり(笑)。
奥野 永野愛理ちゃんが抜群にダンスがうまいので、あの林田藍里がキレッキレだったり(笑)。
田中 藍里ちゃん、ダンスがうまくなってよかったねっていう(笑)。
──あはは(笑)。ライブ映像と比較して観てみたりしたいですね。
吉岡 2画面にして比べてもらったら、多分よくわかると思います。
「この子たちは変わらないんだなぁっていう安心感」(奥野)
──キャラクターを久しぶりに演じてみて、いかがでしたか?
吉岡 ずっとやっているキャラクターなので、声を忘れることはないんですけど、難しかったのは、その前に舞台をやっていて、それが一番最初の、劇場版「Wake Up, Girls! 七人のアイドル」時代のWUGだったんです。なので、島田真夢に関しては特にメンタル面というか、ミステリアスな部分が強調された時の真夢を直近にやってしまったがゆえに、どこまで明るく演じればいんだっけ?って思い出すのが大変でした。
それに舞台ではアニメとも違う演技をしていたので、どれが本当だったっけなと。でもTVシリーズはあえて見直さず、新しいものとして「新章」を作り上げるつもりでアフレコに行ったんですけど、……今思えば見直しておけばよかったなとちょっと思ったりします(笑)。
──菊田さんからは、何か言われましたか?
吉岡 一番はメンバーとの距離感ですね。続・劇場版 後篇「Wake Up, Girls! Beyond the Bottom」(2015年公開)の時の距離感近づけるように言われました。声というよりは中身、メンタルの問題が多かったです。
──田中さんは?
田中 片山実波ちゃんは演じていくにつれて、変に大人にしないほうがいいかもしれないと感じました。絵を見てもそこまで大人になっているわけではないし、グループの中でも妹的な存在なところが誇張されていたから、変に変えずに「かわいい」「元気」「明るい」に全フリしたほうがいいなって、アフレコのテストのあとにじわじわ思い始めました。そしたら菊田さんからも「もうちょっとやっていいよ」と言われたので、岡本未夕と一緒に、明るくグイグイ5人を引っ張るムードメーカーのつもりで演じてみました。
──ちなみに今までのアニメは見返しましたか?
田中 私は全部見返しました。舞台をやっていたのも大きかったですし、私がどれだけ成長できたのかということも知りたかったんです。実は今まではちょっと怖くて、過去の作品はあまり見ていなかったんです。でも、一度ちゃんと見たほうがいいかもしれないと思って、この機会に見直しました。でもあらためて見てみたら、今はみんなめちゃくちゃ上手になっているので、これを「新章」に持っていくためにはちょっと考えないとなって思いました。
──やっぱり見直すのに勇気がいりましたか?
田中 ホントに下手すぎて、私、テレビの放送は1度しか見ていなかったんです。でもあれから数年経って、今はこんな頃もあったなって俯瞰で見られるようになったのでよかったです。
──奥野さんはどうですか?
奥野 「新章」第1話で、菊間夏夜が林田藍里ちゃんがいない状態で「どうする? 私たちだけでも先に行く?」と言うシーンがあるんですけど、最初、夏夜が藍里を見捨てて、自分たちだけ行くなんて選択をするのかな?って疑問があったんです。やっぱりこれまで演じてきて、夏夜はやさしい子だと思っていたので、そのセリフに違和感があったんですね。それで迷っているような言い方をテストでしたら、菊田さんから「菊間夏夜はみんなと一緒におどおどするような子じゃない。その場に合ったいい選択のひとつを提案する子だから、もっとどっしりしてていい」と言われて「そうか」「そういう夏夜もいたな」と気づきました。それで、忘れていた部分を思い出しながら、本番ではどっしり言いました。
──多分キャラクターとの距離が近すぎて、ズレが出ちゃったのかもしれないですね。決して見捨てていたわけではなくプロとしての決断というか。
奥野 そうですね。プロとして、いい道を示していたんですよね。
──自分も第1話を見させていただきましたが、グリーンリーヴス(作中でWUGが所属する芸能事務所)は変わってないなぁという妙な安心感がありました。
吉岡 私も安心しました。
田中 チャキチャキの社長と、なんか頼りない松田さんがね(笑)。「新章」なんだけど、WUGはWUGなんだなっていう。キャラクターのデザインは変わったけど、キャストも変わらないし、違和感は実際それほどないと思いました。声が付いて動くと、やっぱりWUGちゃんだと私は思うし、みんなもきっとそう思うんじゃないかなと思います。
奥野 キャラクター7人のかけあいのセリフが、ホント変わらない! 日常っていう感じの言葉が飛び交っていて、この子たちは変わらないんだなぁっていう安心感は本当にありました。ワグナーさんもそう思ってくれたらいいなぁ。
──主題歌のことも少しだけうかがいます。OPテーマ「7 Senses」はどんな曲ですか?
吉岡 「7 Girls War」の進化版として作られていて、前のテレビシリーズからの繋がりと私たちの成長がプラスされた感じが出ていると思います。
──「7人でひとつなんだ」という強いメッセージも感じました。
吉岡 「新章」の内容にも、すごく沿っているなと思います。
田中 明るい曲だけど、歌詞を見ると泣けるんです。大団円っぽい感じがしますね。
奥野 OPテーマ、EDテーマのどちらもなんですが、今回はキャラクターの声じゃなくて、声優ユニット「Wake Up, Girls!」として歌っているんです。最初は「キャラじゃないんだ」ってビックリしたんですけど、これまで「灼熱の卓球娘」などをやっていた流れで、「WUGだけどWUGじゃない、けどWUG!」みたいな感じです。難しいんですけど、そういうところがすごく新鮮でした。そこに気づいてもらったら嬉しいですね。
──最後に、「新章」の見どころを教えてください。
吉岡 メンバー個人個人のパーソナルな部分が発揮される仕事が増えていくので、もっとキャラクターそれぞれの色が見えていくのかなと思っています。今までと同じく、表舞台のステージ上の「Wake Up, Girls!」と、ステージを降りた普段の「Wake Up, Girls!」の日常を楽しんでいただけたらと思います。
田中 食レポをすごくがんばっている実波ちゃんですけど、やっぱり壁にぶつかることもあるので、明るい実波ちゃんがそれをどう考えて乗り越えていくのか。きっと実波らしい答えを出してくれると思うので、応援してほしいです。あとまゆしぃ(島田真夢)がいろんなことに挑戦するところも見どころです。私たちもデビューしたときから年数を重ね、経験を積んだ中でアフレコに臨んでいるので、私たち7人の声優としての成長も見てほしいです。
奥野 それぞれがいろんなお仕事をして、支え合って生活している姿を見ると、本当にいい子たちだなぁと思います。本当にWUGの飾らなくて素直なところを応援したくなると思うので、7人のありのままを見てほしいなって思います!
──ありがとうございました!
(取材・文/塚越淳一)