3 Lines Summary
- ・あと10年で新しい経済がやってくる
- ・正社員である必要がない。収入源が複数あることも当たり前に
- ・基本的な仕組みがあれば国家と名乗れる可能性も
「お金2.0 新しい経済のルールと生き方」の著者で時間を売買できるサービス「タイムバンク」を展開する株式会社メタップス代表取締役CEOの佐藤航陽氏と、新しい経済をどう生きていくか語る。(聞き手:洪由姫NewsPicksエディター)
洪:
なぜ、この本を今書こうと?
佐藤:
お金はどういった形をしているのかその正体を暴いて、お金から解放されるような時が来てほしいと思っていました。仮想通貨も盛り上がってきている中で、おそらく自分が今の考えていることを話しても、世の中の半分くらいが頷けるんじゃないかなと思って一冊にまとめました。
もともと「経済を選べないのはズルい!」と思っていたんです。政治は政党があって選べて、結婚相手も選べます。いろいろなものが選べるのに、経済は資本主義しかなくて、選べないのはおかしいのではと。選べないから競争が発生しないので、経済は一社独占の状態。経済がいくつもあればお互いに競争し合って、良いものだけが残るという市場原理が経済自身にも働くと思い、それが今なら実現できると思いました。
「お金2.0」が予言する未来とは?
洪:
「10年で新しい経済がやってくる」ということですが、どんな経済ですか?
佐藤:
今の経済は役に立つとか儲かる、(1)有用性としての価値 といったいわゆる実用性や有益性をメインに扱っています。(2)「内面的な価値」 は、興奮やこの人を応援したい、感謝しているなどの人間の精神的な価値。あとは世の中へ良いことをしたいという(3)社会的な価値 があります。
資本主義は役に立つのかなど、メリットのあることだけしか扱ってこなかった。けれど、それ以外に価値のあることはあって、(2)や(3)がようやく経済として成り立ち始めてきたため、今後は目立ってくるのではないかと思っています。
洪:
「内面的な価値」を具体的に言うと?
佐藤:
典型的なのはユーチューバー。面白がっていて楽しい、見ていてワクワクする、それだけでも人間の心にとってはプラスになる。ただ、役に立つだけではない。
人の精神に対してプラスな、ポジティブな働きをさせるのもちゃんと価値だよね、と。それが評価されて収益につながる、もしくは生活できでもいいのでは?というのが(2)です。
洪:
(3)「社会的な価値」はNPOのイメージですか?
佐藤:
ソーシャルビジネスと言われているのは、政治の領域が解決するはずだったのものを経済で解決しようという試み。東大生で本来なら商社へ就職する人があえて、ソーシャルビジネスやNPOに就職したり、社会起業家の方もいます。ここもちゃんと経済として成り立ち始めています。
洪:
私たちが生きてきた資本主義から多様化した主義(価値主義)が認められて、そこで生きていくという生き方を選んでもいいということですよね?
佐藤:
そうです。なので、お子さんがユーチューバーになりたいというのは間違ってはないんです。「儲からない」とか「フリーターだから」というのは資本主義的枠組みの話で、いまの現象ですと、(2)も(3)もちゃんと経済が成り立ちます。10年後は「ユーチューバーでも問題ない」となっていきます。
洪:
「お金2.0」が予言する未来には「あらゆる仕組みが分散化していく」とありますが、どういうことですか?
佐藤:
近代は中央に管理者がいて、その人に情報と権限を集めて世の中を成り立たせていたという歴史があります。国だと国家、企業だと社長。組織には必ず管理者がいます。理由は、情報はバラバラに存在していて、同時にすべてを全員が共有できないという前提があったから。
けれど、いまは同時に共有ができます。リアルタイムで全員が同じ情報を持てる。全員が知っているから管理者がいなくても成り立っていくということがわかってきた。そうなると、強かった中央の管理者の力がバラバラになってネットワークのノードが、自分一人一人で動けるようになっていく。その過程を分散化と言っています。
洪:
そういった社会は個人がものすごい責任を負って、自分たちで決定して動くという能力が分散化されないといけないのでは?
佐藤:
多種多様化していくと思います。今の働き方がセーフティーネットのような土台になり、新しい働き方がその上に乗ってくるのではないかと。どちらかではなくて、どっちも混ざっていることが理想です。
今の社会や会社の仕組みがインフラに近く、その上で多様化した、分散化した仕組みが2層乗っているイメージ。
正社員である必要がなくなる
洪:
どちらのレイヤーにも行き来できる働き方や生き方になっていくということですか?
佐藤:
新しい働き方が向いている方はそっちに振り切ってもいい。既存の枠組みの方がうまくいく方はそっちでもいい。今、その中間地点に私たちは今ちょうど、いるのかなと思っています。
洪:
「お金2.0」が予言する未来には「正社員である必要性がなくなる」とあります。これはどういうことですか?
佐藤:
1人の人が1つの会社、職業から収益を得ていくという体制自体がここ10年でガラッと変わるのではないかと思っています。収入源が5個、10個あることが当たり前になります。どこか一つに属していることがレアケースだなという状況ができていくんじゃないかと思っています。
洪:
一つの会社に所属して給与をもらうという既得権益がなくなる?
佐藤:
逆に言うと、会社もいろいろな人に仕事を頼みやすくなります。実力があるのであれば働く側の人もいろいろなところから受注が得られるという仕組みになると思います。かなり自由度は上がりますね。
洪:
実力がない人は生きにくい世界になる?
佐藤:
その場合には既存の枠組みの中にいた方がいいと思います。
洪:
さっき言っていたレイヤーを選べるということになるんですね。
洪:
「お金2.0」が予言する未来には「国家は多層化する」とありますが、どういうことですか?
佐藤:
国家はもともと領土を持っていたから国家になれました。もはや領土が必要でなくなってきているので、思想や哲学があって、通貨があるというような基本的な仕組みがあれば領土はなくても国家と名乗れてしまう可能性がある。
企業が国家になったり、キリスト教やイスラム教が国家化していったり、地域やコミュニティー、趣味も共同体として成り立ち始めて、最終的には国家に近づいてくるのではないかと思いますね。
洪:
それは国家という呼び方ではないんですよね?
佐藤:
超巨大なコミュニティーですね。その中に通貨のシステムやヒエラルキーが、普通に発生している。それが国をまたいで発生していく。国の上にいろいろなレイヤーができていて、1人の人間が5個や6個とかに属しているのが当たり前になる。
日本であれば国家が日本円で、地域にそれぞれの通貨があると思うので、6個や7個の通貨を持っていることが普通になるのではと。現に、私たちは日本円とビットコインを持っている人もいます。
洪:
隣にいる人同士が全然違うコミュニティー、または同じコミュニティーに属していて、その都度、通貨を使い分けているということもあるかもしれないということですね。この世界は、いつぐらいに来ますか?
佐藤:
20年も経たずに来ると思います。10年以内にはこの原型ができていて、いまの10代が20代になるころにはそうなっていると思います。
「お金2.0」タイトルに込めた思い、中国政府はビットコインを再開するなどはこちら
https://www.houdoukyoku.jp/archives/0029/chapters/29327
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