必見!「銃乱射事件に遭遇したときのサバイバル術」|逃げる? 隠れる? 戦う? 日本では教えてくれない!
From The Washington Post (USA) ワシントン・ポスト(米国)
Text by Ed Hinman
テキサス州サザーランド・スプリングスで起きた銃乱射事件の現場
Photo: Carolyn Van Houten / The Washington Post / Getty Images
避難訓練では、火災や地震から身を守る方法は教えてもらえるだろう。でも、もし旅先や赴任先で「銃乱射事件」に遭遇してしまったら? 米国海兵隊歩兵下士官としての経験を持つ国際安全セキュリティ・コンサルタントが、「万が一」のときあなたの命を救うマニュアルを教えます。
2017年11月、テキサス州のバプティスト教会で起きた銃乱射事件では、日曜礼拝中の26名が亡くなった。米「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙によると、銃声を耳にした近隣住民のジュリアス・ケッパーは、銃を手にして砲撃音がする方角へと走っていった。すると彼はそこで、武装したほかの隣人が容疑者に対峙しているのを目にしたという。
近所で働くキャリー・マテュラは、米テレビ「NBC」に対してこう話す。
「こんな小さな町で事件が起きるなんて思ってもみなかった。こういうのは大都市で起きることでしょ」
だが実際のところは、そうでもない。銃乱射事件は、地方でも郊外でも都会でも起こっている。誰もがどう対処するかを理解することが肝要なのである。
『戦争における「人殺し」の心理学』の著者デーヴ・グロスマンは、この問題について繰り返し講演している。彼は、よくこの質問で切り出す。
「近年、米国の学校の火災で生徒は何人亡くなっているでしょうか?」
答えは「ゼロ」だ。一方、学校で起きた銃乱射事件ではどうだろう。
2014年のFBI調査によれば、2000〜13年に学校で起きた銃乱射事件では117名が命を落とした。学校は火災避難訓練を実施しているが、それよりも生徒が学校で命を落とす可能性がはるかに高い銃乱射事件に備える訓練は、さほどおこなっていないというのがグロスマンの主張だ。大半の親も備えが足りないのは同様である。
意欲的な当事者たれ
2007年のヴァージニア工科大学での銃乱射事件では、銃撃犯が2丁の拳銃と何百個もの弾丸を所持していた。犯人は2階から侵入し、32名の犠牲者を出した。
この悲劇の教訓は、教室によって学生と教員がとった行動が異なり、それが生死を分けたということである。
206番教室では学生たちは机の下に隠れたが、犯人が机のあいだを行き来して10人を殺害した。
2名が殺害された204番教室では、数人の学生が2階の窓から飛び降りて助かった。
205番教室では、学生たちは椅子と机とで教室をバリケードし、床に腹ばいになってバリケードを支えた。突破しようとした犯人は2発撃ちこんだが、結局侵入しなかったため教室内の全員が助かった。
時間をかけて非常事態対処プランを作れ
先日、妻とカフェにいたとき、私は出入口をあごで指し示してこう訊ねた。
「あの出入口からいま、銃を構えた男が入ってきたらどうする?」
すると妻は言った。
「そいつの顔にこの熱いコーヒーを投げつけて、あの横のドアから逃げる」
私は妻の答えが気に入った。彼女にはちゃんとプランがある。
警備のプロである同僚のニック・プレズは、ガールフレンドとラスベガスの銃乱射事件が起きたコンサート会場にいた。彼に、助かった最大の要因は何だったのかと訊いたところ、「プランがあったことだね」と返事が返ってきた。
彼は開演前に、スマホのアプリでイベントの詳細を確認していた。そして入口や非常口など会場のレイアウトを頭に入れた。彼はこう話す。
「急いで脱出したり、警備員室や医務室を探したりしなければいけない場合に備えて、会場のレイアウトはつねに知っておきたいんだよ。それに正直なところ、銃乱射事件は想定していなかったけど、医者を呼ばなければいけない状況とかケンカとかが、突発的に起きるかもしれないと思っていたからね」
警備の世界では、彼の行動を場所の「先取り」と呼ぶ。要人の到着前に準備しておくという意味だ。警備員や医療従事者がいる場所を知っておきたいし、そして何より、緊急避難する必要が生じた場合の経路を前もって把握しておきたいというわけだ。
公共の場では、座席や位置に着く前にまず「襲撃があったらどうするか?」と自問しよう。ほんの一瞬あれば、答えを出せるものだ。ドアや登れそうな柵、窓などの避難経路や出口を確認しよう。
もし襲撃が起こって建物から脱出不可能になってしまったら、バリケードを作って篭れそうな部屋へ移動しよう。それでも襲撃者が侵入してきたら、覚悟を決めて消火器やはさみ、ペンなど即席の武器を使ってすばやく猛烈に反撃しよう。