あのキャラに花束を:「動く抗うつ剤」「ストロングゼロの擬人化」―― バーチャルYouTuber輝夜月(かぐや・るな)を見て今年も元気にやっていこう
彼女の「おはよー!」の力強さよ。
2017年12月9日にスタートし、登録者数21万(2017年12/31現在)、動画再生回数ミリオン連続という輝夜月(かぐや・るな)が、Twitterやpixivなどで人気大爆発中です。人間も含めたYouTuberの12月22日から28日のチャンネル登録者上昇ランキング1位。冬コミではコスプレも薄い本もあったらしいぞ。
人気に火がついてから広まるのが、極端に早い爆弾娘です。まだ動画数本しかないのにね。
そもそもバーチャルYouTuberってなんだよとか、なんで人気なんだよとか考える前に、見ましょう。お願い、3分半だから!
この有無を言わさぬテンションの高さ。もうバーチャルとかYouTuberとか、そんなのどうでもよくなる。押し切られて最後まで見てしまう。声質がくせになる。わちゃわちゃ動くキャラかわいい。トークがいい意味で雑。
頭に思い浮かべたはずだ、ウザカワの文字を、そしてハ○太郎の文字を。
輝夜月の強烈な個性はTwitterで拡散されまくり、公式Twitterのフォロワーも膨れ上がり、ファンアートも飛び交いまくり。瞬く間にバーチャルYouTuber界のダークホースとなりました。
動く抗うつ剤とか、ストロングゼロの擬人化とか、首絞めハム太郎とか、褒めてるのかなんなのかわからない愛称も。いやうん、愛情こもってますよね。
バーチャルYouTuberとは何か
「バーチャルYouTuber」とは、自作の3Dモデルまたはイラストのキャラクターになりきって、「そのキャラクターがYouTuberになりました」という体で動画配信する形態のこと。
少々ここ境界線が曖昧。例えばニコニコ動画の歌い手とかも顔イラストでやってる人が多いけれど、そこは「本人」がメインなのでバーチャルではない。こちらはあくまでも「キャラ」がメインです。……とはいえ回を重ねていくと、中の人の素が出てきてごちゃごちゃになってくるのも面白さなので、本人が「バーチャルYouTuber」と名乗っているかどうかで分けちゃいましょう。
基本的には他愛のない会話、ゲーム実況、視聴者とのやりとり(Twitterやコメントなど介して)、生放送、「やってみた」などと、基本一般のYouTuberと同じ。AIという設定のバーチャルYouTuberもいますが、全員ではないです。
ネット歴が長い人なら「バーチャルネットアイドルちゆ12歳が動いてしゃべるかのような、数分の動画」という方がわかりやすい人も多いかも。
最も有名で登録者数も120万と飛び抜けているのが、キズナアイ。リボンが目印。スーパーAIを名乗る、天然っ子。2016年末にスタートし、総再生数5500万超え。大御所中の大御所です。
ふんわりかわいい空気感と、安定した巧みなトーク力と、レベルの高いモデリング。加えて今いるバーチャルYouTuberの中でも屈指のポンコツっぷりと、カワイイ顔してしれっと毒を吐くのと、行き過ぎたドルオタっぽさと、唐突な奇声が魅力。どうやら彼女世界中での人気が半端じゃないらしく、有志による字幕が何カ国語も付く(英語、中国語、韓国語、ベトナム語、イタリア語、スペイン語、タイ語、フランス語、ロシア語、ポルトガル語、アラビア語、ポーランド語などなど)ほど。
更新頻度がめちゃくちゃ高いのも、トップバーチャルYouTuber感あります。あと時々発狂します。公式LINEスタンプもあるし、『ゲーマーズ!』のコマーシャルにも出ました。
輝夜月がオタクに突き刺さった
改めてバーチャルYouTuber輝夜月を見てみましょう。
「おはよー! こんちわー! こんばんわー! おやすみー! おきてえええ!」挨拶の暴力。この部分はファンアートでも頻繁に描かれます。一発で覚えられるキャラ性が、ここだけですでに仕上がっている。
YouTuber文化って、ぼくの観測範囲では、あんまりオタクと相性がよくなかった。動画それぞれ見ると、とても凝っているし、ネタ多彩だし、やっぱり面白いんですよ。多分好きなYouTuberさん、どんな人でも最低1人は見つかりますよ。
でも顔出しでもりもりやっているのって、リア充寄りの空気が強い。ニコニコの「踊ってみた」ですら顔を隠していたのに、なんかもう生きてる世界が違う感じがして、どうも近寄りづらい。
ところがバーチャルYouTuberは、基本声優さんを公表しない。見た目かわいい女の子。YouTuberのいいところを取り、現実を取っ払い、小骨のない魚のようなパーフェクト安心空間を作っている。
特にキズナアイの理想郷感は見事なもの。アホな行動は小動物的にかわいく、視聴者にはひたすら優しい。癒やされます、っていうコメントがあるのもよくわかる。仕事から帰ってきたら寝る前に見たい。
一方で、輝夜月は全然優しくない。ものすごい勢いで視聴者を煽る。
ここも、オタク層にウケた。
オタク層が通ってきた、ニコニコ文化、2ちゃんねる文化の「煽りのテンション」を、パンチがあるのに耳に馴染む声で、明るく楽しく振ってきた。正統派ではない斜めに切り込む、王道じゃない尖った感じが、オルタナティブを生きてきたオタクのハートに刺さる。「らき☆すた」の「らっきー☆ちゃんねる」のひねくれた構造を思い出す。
YouTuberに必須な、細かくセリフを調整して間をのばさない編集技術も、レベルがものすごく高い。声優さんの声力と製作者のテクニックで、輝夜月は開始してすぐにキャラクターとして独り歩きしはじめました。
ぶっちゃけ二次創作が作りやすいキャラなのです。独自の魅力を数分でわかりやすく伝える、作り手の巧みさが見える。
輝夜月さん、好きです。
想像してほしい。輝夜月が学校の後輩で、教室にぽつんと座っていたぼくのところにやってきて「うぃーっす!! めりくり~~!」って言いながらこんな感じで煽ってきたら。腹立って「ふざっけんな!」「お前に言われたくない!」って返しつつも、うれしくない? うれしいよね? どう?
謎の元気が出てしかたない。だってかまってくれてる感じがするもの。
アニメ「おしえて!ギャル子ちゃん」や「はじめてのギャル」を筆頭に、ギャルキャラ人気が最近とても高い。彼女たちが自分が楽しいことをやっていて、明るくて元気な太陽に見えるから惹かれる。まぶしすぎる活力に、憧れてしまう。
輝夜月もその枠にずぽっとハマった。何から何まで、世界を楽しんでいるように見えてならない。彼女のあいさつ「おはよー!」の力強さよ。こっちまで元気になる。
キャラ的に一番近いと思っているのは、マンガ『イジらないで、長瀞さん』の長瀞さん。めっちゃひどい煽り方してくるのにそれがなんだかうれしいし、この子どんな気持ちなのかなとか考えちゃう。自分キモいってわかってるんだけどドキドキする日々が愛しい。
なんだかんだで元気をわけてくれる幸せを、輝夜月動画は疑似体験させてくれる。こっちからもキャラクター輝夜月に対して友達のように接してもいいのかな、「おはよー」って言ったら「おはよー!」って返してくれるかな、って気持ちになる。
輝夜月が後輩っぽいと言われるのは、キズナアイを始めとするバーチャルYouTuberに絡んでいるからもあるでしょう。キズナアイのことを「親分」って呼ぶのかわいい。
ゲームやっていたら、「www」な感じでやってきて後ろから「せんぱいやらせてwww」みたいに奪ってゲームして、唐突に冷めて帰るみたいなそういう妄想が、ぼくの頭のなかにすんなり浮かぶ。そんなん恋するじゃないですか……。
中毒性の高すぎる輝夜月。煽り上手な輝夜月。脳に割り込んでくるので、見たら嫌なこと強制的に忘れさせられます。お酒やタバコよりはるかにいいよ。
公式Twitterのテンションも異常なまでに高い。もう素で、他のバーチャルYouTuberにも、視聴者にも、人懐っこい後輩。輝夜月いわく「友達」だと言ってほしいとのこと。友達百万できるかな。6月くらいまでにいくんじゃないかなあ……こんな友達、こんな後輩、ほしいよ……やかましいのにこんなに癒やされるなんて。
今日も、ストロングゼロ片手に輝夜月の動画を見よう。
(たまごまご)
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