◇サッカー通し平和伝える V・ファーレン長崎 高田明社長

 J1昇格を決めた昨年11月11日の讃岐戦後、高田明社長はあいさつで「もう少し続けていいですか」と切り出し、平和への思いを付け加えた。

 「長崎という地は、広島とともに原爆を落とされた地であり、世界で唯一、平和を語れるクラブと思うわけであります。長崎を通して世界に平和を伝えていく力を、役割を持っていくようにしようじゃありませんか、みなさん」。スタジアムはさらに大きな歓声に包まれた。

 長崎は被爆70年の2015年から、普段着用するものとは異なるデザインの「平和祈念ユニホーム」を製作し、夏場のホームゲームで着用してきた。昨季は初めてアウェーの福岡でも着用した。

 昨年9月には、ユニホームを提供するメーカー「ヒュンメル」とともに、サポーターが折った千羽鶴と平和祈念ユニホームを長崎原爆資料館に寄贈。今年は広島との“平和祈念ダービー”も実現する。

 高田社長は今季もユニホームに平和のメッセージを込める。「国境や人種、言葉を超えてスポーツができる幸せは平和そのもの。V・ファーレンはその大きな役割を持っている」【浅野翔太郎】

………………………………………………………………………………………………………

 初めてのJ1に挑む長崎。5年間を戦ったJ2と比べ、何が違うのか。さまざまなデータやリーグの仕組みを解説する。【今野悠貴、浅野翔太郎】

 ◇経営規模は桁違い

 J1のクラブ経営は、資金力でV長崎と大きく差がある。Jリーグの公開資料によると、2016年度決算の営業収益でV長崎は7億4900万円。一方、J1での最高額は浦和の66億600万円でV長崎の9倍近い。J1全18クラブの平均でも36億4000万円でV長崎の約5倍だ。戦力強化には高額選手の獲得など人件費がかかるため収益増が欠かせないが、V長崎のチーム人件費は3億2200万円で、J1平均15億7500万円と大きな開きがある。

 営業収益の柱は広告料収入。戦力強化に伴う人件費の増加に向けて、V長崎のあるスポンサー企業関係者は「クラブ側から昨年のスポンサー料の1・5倍を提示された」と明かす。V長崎は18年度、J1に定着できるだけのチーム強化が求められており、そのための大幅な営業収益増がポイントとなる。

 ◇ACLからクラブW杯へ

 2018年、長崎が挑む主な大会は、2月24日開幕のJ1リーグ戦(18クラブ、34試合)▽3月7日に予選リーグが始まるカップ戦(ルヴァン杯)▽アマチュアも含めたトーナメントの天皇杯−−となる。J1上位、天皇杯優勝などで最大4クラブがアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場権を獲得する。ACLで優勝すれば、17年の浦和のように世界一を決めるクラブW杯への出場も可能で、長崎が「世界一」のクラブになるチャンスがある。

 一方、J2との入れ替え戦の方式も18年から変更となり、下位3チームの自動降格から、下位2チームの自動降格に。16位はプレーオフでJ2上位クラブと対戦する方式となった。

 ◇全国のサポーターが長崎に

 J1昇格という好成績を残した今季でも、V長崎のホームゲームの観客数は1試合平均5941人にとどまる。J1平均は1万8883人で、トップの浦和は3万3542人と6倍以上の観客が詰めかけた。J1になると、多くのサポーターが本拠地である諫早市のトランスコスモススタジアム長崎に集結し、経済効果をもたらす可能性を秘めている。

 大きな課題はスタジアムへのアクセスと周辺道路の渋滞だ。現在、V長崎は周辺での広大な駐車場の確保を検討し、JR九州への臨時駅設置要請などもしているが、いずれも実現は難しいのが実情だ。このためJR諫早駅からのバスなどでの輸送体制の強化や、島原鉄道を含めた臨時列車の運行、やや離れた場所の駐車場からバスなどでスタジアムを結ぶ「パーク&ライド方式」の充実などが現実的な対応策となる。快適にスタジアムに足を運んでもらうことが、集客の鍵となる。