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2018年1月 5日 (金)

水町さんが集団的労使関係派に?

経営民主ネットワークの『経営民主主義』という雑誌は、私も何回か登場したことがありますが、66号(12月号)では「日本の働き方改革を問う」と題して、水町勇一郎さんを呼んで討論をしています。それを読んでいって、正直水町さんが思った以上に非正規処遇問題の集団的労使関係による解決ということを考えていることが分かりました。

まず最初の問題提起のところで、「労働組合の役割」と題して、こう述べています。

・・・例えば、同一労働同一賃金の実現のためには、正規労働者の意見・利益だけでなく、パートタイム労働者、有期契約労働者、派遣労働者の意見・利益も吸収して、議論を重ねていくことが求められる。

このプロセスは、法的にも重要な意味を持つ。制度を作り上げた後に、裁判所でその制度の適法性が争われた際に、非正規労働者の意見・利益も適切に吸収・反映させながら労使の合意を得て制度を築き上げてきたことは、制度の適法性の判断に大きく貢献する事実となりうる。とりわけ、非正規労働者の多くが労働組合員として組織化されている労働組合と協議・交渉を重ねて合意が得られていることは、待遇の相違が不合理でない(適法である)ことを後押しする重要な事実となるだろう。その意味で、非正規労働者を組織化している労働組合が存在し、その組合と生産的な話し合いを行うことができることは、法的安定性・予見可能性をもって制度の設計と運用をしたい使用者にとっては、極めて重要な意味を持つ。・・・

これはまさに、私が『新しい労働社会』以来繰り返し論じてきたことでありますし、この間の政策決定過程においても、働き方改革実現会議や同一労働同一賃金検討会で岩村さんや神吉さんなどが繰り返し述べていたことなのですが、そういう場で水町さんはどちらかというとそういう集団的労使関係がらみのことにはあまり関心を示さず、司法的解決を中心に見ているのかな、という印象を持ってきました。

も少しいうと、この間の政策決定にもっとも影響を与えた水町さんが、この集団的労使関係による解決に消極的(あるいは少なくともそれほど積極的ではない)ので、結果として法案には(派遣の部分を除き)そういう趣旨の規定は盛り込まれなかったのではないかという印象があったので、この場での発言には正直意外感がありました。

それならもっと早く言ってよ、みたいな。

その後のパネル討論で、小林良暢さんの問いに答えつつこう述べています。

・・・今回の働き方改革がもしかしたら、組合の最後のチャンスかも知れない。実際、労働組合の組織率が17%を切るか切らないかで、このあとさらに組織率が減って、本当に労働者の代表なのかという問題を押しつけられている中で、ここでもう一回盛り返して労働者の代表なんだという方向に持っていく最後のチャンスであるかも知れません。同一労働同一賃金がふたを開けてみると、非正規を代表して非正規労働者の声を反映している組合と使用者が話し合いをし、同意していれば裁判に行って、不合理性を判断するときにプラスに評価されるだろう。

これは正社員組合だと、正社員組合と会社がサインし労働協約とか就業規則変更でサインしたとしても、むしろ自分たちの利益を守るために非正規社員の処遇を低くした合意をしているのではないか。この同一労働同一賃金で、均等均衡とか不合理が裁判になった時に、会社の一番敏感に感じているのは組合問題でなくて、この裁判なんですよ。・・・

いやまさにそうすべきだと言ってきたことをそのまま水町さんが述べていて、全く同感なんですが、だけどそれならなぜ政策プロセスでそういう方向に論じてくれなかったのかな、という思いが。

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