警察官をクビになった私が
家に帰って真っ先に考えたことは
『何が一番の失敗原因だったのか?』
という至極真っ当なことでした。
警察学校での記憶がよみがえります。
「オマエ頭おかしいんじゃねえか?」
初老の教官が自分の頭をトントンと指しながら、
よくそんな言葉を私に投げかけました。
何でもないよくある侮蔑の言葉に聞こえます。
が・・・・私にとっては違います。
それを聞いて思わず自分の頭部にある傷を
そっと指でなぞりました。
そそそそ・・・・・っと・・・・
もちろん教官は知った上で言っているのです、
私が幼い頃に大きな脳の手術をしたことを・・
つまり教官が頭をトントンと叩いて、
「頭がオカシイんじゃないか?」
と言うのは私の脳の病気の事を指してるのです。
ああ・・・残酷な人でした・・・
ここから遡ること18年前・・
私が生まれた直後の話・・・・
お医者さんは両親にこう言いました。
「この子は状態が悪い、
手術をしてもまず死ぬでしょう」
・・・突然の死の宣告でした。
私の両親は
「それでも手術をして下さい!」
そう答えたそうです。
しかしお医者さんは話を続けます。
「もし万が一手術が成功したとしましょう」
しかし・・・・この子には
『重い障害』が残るでしょう。
そんなクッソみたいな話を聞かされた両親は・・
相当なショックを受けたと思います。
しかし・・・・それを聞いても両親は
「それでも手術をして下さい」
そう先生にお願いしたそうです。
ハハハ・・・・大したもんですよ。
もし自分が逆の立場だったら・・
一体どうしていたでしょうかね・・・?
結果・・・『手術は大成功』
まさに奇跡的な話なのですが・・・
これは奇跡ではなく、
当時私が住んでいた田舎に、
天才脳外科医と呼ばれた先生が
たまたまいらっしゃったからなのです。
私が生き残ったのは奇跡などではなく、
先生の経験と技術のオカゲなのです。
こうして私は生き残りました・・・・
しかしまだ大きな問題が残っています。
私には障害があるのか?無いのか?
という難しい話です。
私は検査と入院を繰り返しましたが・・・
『とりあえず問題はない』
というような結論だったそうです。
しかし・・・先の事はわかりません。
天才脳外科医と呼ばれた先生にだって
未来の事はわからなかったのです!!!
18歳になった私は『頭がオカシイ』と言われ、
その後・・・警察官をクビになりました。
それはただの軽口だったのでしょうか?
事実だったのではないか?
ただただ真実が知りたかった・・・
だから私はまず・・・・
警察官をクビになってから・・・
自分の病気のことを調べてみました。
で・・・・調べて驚きました・・・・
私が大人になるまで正常に育つ確率は・・・・
『約70%』
背筋がゾクゾクするような微妙な数字でした。
しかし・・・私にこの確率は当てはまらない。
なぜなら・・・私は・・・
この病気と手術を2度もやっているのです。
ええっ・・・・
じゃあ・・・
私が正常に育った確率は・・・?
ああ・・・くそぉ・・・
認めるしか無いのか?
教官の言うとおり・・・
私は『異常者』なのか?
後編に続く。