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"骨という美 Sideデミウルゴス", is tagged with「デミ→アイ」「デミアイ」and others.

前作と同時進行で書いていた物をまとめてみました。オバロのデミアイ二次創作です。と...

Aqvarium

骨という美 Sideデミウルゴス

Aqvarium

10/31/2017 00:15
前作と同時進行で書いていた物をまとめてみました。
オバロのデミアイ二次創作です。
というか、著しくデミ→アイです。
注:若干グロい表現を含んでいます。
(タグを入れるほどでは無いと思いますが)

・表紙素材は此方からお借りしていますillust/51034251

・前作に、コメント、ブクマ、いいねを下さり本当にありがとうございます。
 楽しんで読んで頂けたなら嬉しいです!
 別サイドも見てみたいとのお言葉、とても励みになりました。
 アインズ様の内心が耽美でなくて申し訳ないです(笑)
【骨と言う美】sideデミウルゴス


 ナザリックに帰還した際、デミウルゴスはまず主人の下へ脚を向ける。
 主へ帰還の挨拶を最優先に据えるのは、下僕として当然の礼儀だと心得ているからだ。
 しかし、今回は少々タイミングが良くなかったようだ。アインズ様は執務室を離れ、同階層の別の部屋でお過ごしと伝え聞いた。浴室を備えた部屋に御出でとは、私的に寛ぎの時間を過ごしになられているという事だ。
 デミウルゴスは逡巡した。迷わず出直すという選択をしなかったのには理由があった。
 一つは、デミウルゴスが現在手にしている『資料』がアインズ直々に命じられた物であり、出来次第持ってくるよう言われていたからだ。『作成自体は特に急がず、手が空いた時にでも纏めればよい。しかし仕上がったら持って来い』という変わった命をデミウルゴスは受けた。
 風変わりな命令。その真意を悟った瞬間、デミウルゴスが震えたのは言うまでも無い。
 外に出て中々謁見を許されないデミウルゴスに、主は『理由』を与えくださったのだ。
 『作成は急がないが、出来上がったら持って来い』とはつまり『お前が会いたくなった、その時は会いに来いと』そういう意味に他ならない。
 (嗚呼、アインズ様。私の心の内など貴方様には全て見透かされているのですね)
 恥ずかしくもこの上ない喜びにデミウルゴスの尾が揺らぐ。
 デミウルゴスが逡巡するもう一つの理由、それは正しくアインズ様にお目通りしたいという僕ならば誰もが持つ願いからだ。
 結果、前者の『出来たら直ぐに持って来い』という表向きの言葉を建前に、デミウルゴスは己の望むまま、主の過ごす部屋へ足を向けた。


 『帰還の挨拶』と『資料完成の報告』。
 この二点の要件をすませた後は、速やかに御前を辞す予定だ。
 主人の私的な時間を邪魔するのは極力控えるべきなのだから。そう思いながらも、一目でも一言でもと足を運ぶ己に苦笑を禁じ得ない。
 以前であれば、アインズ様が執務室に戻られた事を確認した上で出直していただろう。偉大なる支配者に相応しい下僕たる為に常に向上を。デミウルゴスが自身に架した忠義の一つだ。

 (この変化はどうであろうか)
 主の過ごす部屋の前に立ったデミウルゴスの脳裏に僅かな疑念が過った。


 部屋の前に立ちドアをノックする。扉が開かれメイドが姿を見せた。現在、アインズ様は次の間にて御人払いを成され独りお過ごしとの事。尋ねる者がいれば取り次ぐ様に仰せつかっているので少々お待ちくださいと、慇懃な礼を残してドアを閉じた。
 少し時間を置いて再びドアが開かれ、「アインズ様がお会いになられるそうです」と笑顔で告げるメイドに、デミウルゴスもまた心からの礼と笑みを浮かべ部屋の中へ身体を滑らせた。

 踏み込んだ部屋の天井には護衛を務める八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)の姿があった。本来なら、隣室で過す主の元で職を全うすべき者たちの姿に、デミウルゴスは心中で眉を顰める。
 主の望みとは言え、御傍に身を衛ずる刃と盾が無い状況はいただけない。偉大なる地『ナザリック』その第九階層に在って、身に危険などそう起こりはしないと分かっていても、御身の尊さを想えば、やはり近侍がいないことに違和感は拭えない。
 主が独り過ごしている部屋の前で、デミウルゴスは再び身なりを確認してから恭しく声を掛けた。

「失礼いたします」
「入れ」

 久方ぶりに、正確には5日ぶりに聞く支配者の声。
(御声だけで(しもべ)たるこの身は震え、喜びに胸が躍る)
 デミウルゴスは逸る気持ちを落ち着かせ、あくまで優雅にドアを開いた。
 人払いされた部屋で寛ぐ主の姿を視認した瞬間、時間が停止した。
 そこにある光景をどう表すべきか。自分の妄想という可能性すら捨てきれない。
 白い骨の姿態にに纏わりつく漆黒の絹。羽織っただけでは【装備】と認識されない為、体型補正が働かず華奢な骨格も露わな様はあまりにも倒錯的だった。分不相応なこの身には過ぎた光景である。

「これは御寛ぎのご様子、失礼しました。改めて」
「よいよい、気にするな」

 撤退という最善の策は、無情にも切り捨てられた。

「それでは失礼ながら。帰還のご挨拶と、幾つか纏めた資料をお持ちしました」

 頭を垂れるという姿勢が有難いとこれほど感じた事が今までにあったであろうか。
 いや、無い。

「ああ、私が命じた物だな」
「はい」
 
 主の言葉に含まれるニュアンスを感じ取り、デミウルゴスは更に深く頭を下げた。『ああ、私が命じた物だな』とはつまり『ああ、会いたかったのだな』という意味に間違いない。慕う気持ちを恥じることは無いが、筒抜けとなれば頬が染まる。どこぞの淫魔(サキュバス)と違い、デミウルゴスは慎みを知る悪魔なのだ。

「ふむ、お前とこうして会うのは何やら久しぶりだな。それもこれも私がお前に仕事を多く任せている所為なのだが」

「有難き幸せ」

「デミウルゴスよ。多忙の身のお前には悪いが、その資料をお前の口から説明しはくれないか。直ぐに別れるのは寂しいものだ。・・・それにお前の声は耳に心地良い」

 至高の御方でなければ、確実に誘われていると判断しただろう。実際、デミウルゴスをして指をネクタイに掛けるという愚行を犯しそうになったほどだ。
(なんと愚かな。御方は共に過ごす時間の少ない私を憐れに思い情けをかけて下さっているに過ぎない)
 『情け』に色が含まれていない事は言うまでも無い。
 
「喜んで」

 デミウルゴスは奥歯を僅かに噛みしめる。
 『アインズ・ウール・ゴウン』その思考は、叡智を創造主より与えられた悪魔(じぶん)を遥かに凌ぐ。
 しかしながら、劣った情欲に関する事には、時折無知なご様子を御見せになる。結果、アルベドの劣情を踏み抜き、押し倒されることもしばしば・・・。これもその身が尊く、下賤の欲とは無縁な為に違いない。

(良い機会かもしれない)

 下賤の劣情など、御方の思考の端にも上らせたくは無い。しかし、御身の玲瓏さを一端でも自覚して頂くのは良い事だ。

「デミウルゴス…先ほどから少し落ち着かぬ様子だが、何かあるのか」

 まさか気付かれていたとは。
 隠せていた積りでいただけに動揺が走る。
 
「御身を前にしてのご無礼許しください」

 己の不敬な情欲を指摘された悪魔は、あまりの羞恥に尾を揺らした。
 
「余りの麗しさに…少々、自失しておりました」

 デミウルゴスの言葉に、主は首を傾げる。
 やはり、この御方は我が身の端麗な事には自覚が薄い。
 そうで無ければこの状況も、守護者筆頭の謹慎問題も起こりはしない。

「御身の美しさは下々の目に入れるには過ぎるかと。アルベドは言うに及びませんが、血迷う者が後を絶たない事態になることは必定」

 本来なら言うまでもない。
 自明の理を口にする愚を、デミウルゴスはあえて侵す。

「そう言われてもなぁ。お前の方がよっぽども男前だろうデミウルゴスよ」

「何を仰られます。御体は至上の白磁。真珠すら濁り、白雪すら汚れて映るほど。白皙の美貌とは御身の為にこそある言葉。ご尊顔の端正な事は当たり前ながら、御身の骨格は、この世の造形物の到達点であるかと。」

 『至高の御方』と『創造物』である自分とでは、比較にもならない。比較する事すら恐れ多い。それでも、心酔する方から褒められれば喜ばずにはいられない。そんな内心を振り切るように、デミウルゴスは主に対する賛辞の言葉を紡いだ。

「御身を前に血肉のなんと空しいことでしょう。そのお姿こそがこの世の真。美と言うもの真理と心得ます」
 
 そんな賛辞も主の心を動かすには至らない様子。どうしたものかとデミウルゴスが思案を始めた時、主は口を開いた。

「デミウルゴスよ。骨であってお前の方がイケメンだろうよ」

「イケメン・・・?」

「お前が言うところの造形美に優れていると言う意味か」

「ご冗談を。・・・いえ、そういう事ですか」

 主の言葉の意味を察する。

「ん?」

「それを御身が御望みならば、私に否はありません」

 アインズ様はこの身の下にある『骨』をご覧になりたいと望まれている。
 主の御体とは比べるべくもないが、この身は至高の41人が御一人『ウルベルト・アレイン・オードル』様より創造された者。そう考えれば、ご尊眼を楽しませるに値する価値はあるやもしれない。

「アインズさまがご覧になりたいと仰いますならば、幾らでも、どの部位でもご覧にいれましょう」

 主人の意に沿うつもりであるが任せると言われたなら、どこから始めるべきか。
 やはり、顔だろうか。容姿をお褒め頂けたのであれば手始めとしては良いかもしれない。それとも、大胆に胸骨から肋骨までを開くのが良いか。
 どちらにしろ、その程度のダメージが命に係わることは無い。むしろ、直ぐに回復しないように幾つかスキルを加減しておく必要があるだろう。骨格の鑑賞が目的ならば何度も肉を裂くのは見苦しい。血流に関しても、切り裂く前に、開く部位の血管に止血を施す必要がある。

「デミウルゴス、傍に」

 上向けた手の平が、その指先が、デミウルゴスに伸びる。揺れる中指に呼ばれ、淡い期待がデミウルゴスの胸をゆさぶった。
 (まさか御方が自らの手で、この身を裂いて下さると言うのか)

「もっとだ。もっと近くに」

ああ、なんと畏れ多い。
私はどうすれば良い。お手を煩わせるなど・・・辞退すべきか。
しかし御方が望まれてのこと。
せめて、少しでもその身を汚さぬように止血を。いや、アインズ様は血が流れる方がお好みか。赤く染まる白磁は確かに麗しいが。こんなことになるのならば、アインズ様のお好みをもっと探求すべきであった。

「そう、そこで良い。跪け」

 跪いたデミウルゴスに、中指が伸び下顎の底を押し上げる。
 至高の主を仰ぎ、赤々と燃える灯火の眼差しを注がれる幸福に酔いしれた。

「口を開けよ」

 想定に無い命だ。しかし、考えるまでも無くデミウルゴスは口を開く。主から命令を受けるというのは僕にとってその存在意義の証明に他ならない。
 ただ、口を開けば、必然的に顎に当てられた御方の指を押し返すことになる。それが少々遺憾でならなかった。

 デミウルゴスの下顎骨の底を押し上げていた指が離れる。
 疑問を感じる間も無く、三本の指がデミウルゴスの口の中に突っ込まれた。
 驚愕に目を見開く。
 何が起こったのか理解出来なかった。
 しかし、指が侵入する感覚はあまりに生々しい。
 前歯の裏を撫で、下へと滑り落ちる主の指。
 震えたが、逃げ退る愚を犯すことは無かった。
 主の命を違えるなど、死に値する大罪である。

「ほら、デミウルゴス。もっと、あーんしろ」

幼子を宥めるような優しく柔らかな声だった。

「骨を照覧させてくれるのだろう」

 カツンッ。
 内側で鳴った音が脳裏に響く。
 御方の指が前歯の内側を突いたのだと理解する。
 遅れて、御方の命令を。
 思考速度が著しく落ちていく感覚に、焦燥を覚えながら口角を動かす。
 『骨を照覧させてくれるのだろう』との言葉が、歯を見せろという意味であるのならば、それに沿った開き方をしなければならない。
 しかし、歯をむき出しにしたその容貌は、獣の威嚇に酷似していた。
 御身に望まれた事とは言え、主と仰ぐ方に敵意を向ける貌をとるのは恥辱の極みだ。不敬の念がデミウルゴスの胸を掻きむしる。

「ァ…イン・・・さ・・ぁ」
 
 歯に指を掛けたまま無言で見つめる主に、堪らずデミウルゴスはその名を呼ぶ。ほとんど、言葉になってはいないが、どうやら通じたようで主が口を開かれた。

「お前は私を美しいと言うが…。己には疎いと見える」

 歯の裏に当てた指が奥歯に滑る。

「お前は私を至上の白磁と言うが。お前も劣らず美しい」

 そこから順々に、並ぶ歯に指が這う。

「真珠すら濁り、白雪すら汚れて映る…だったか。」

 この世でもっとも尊い指がデミウルゴスの歯を撫でている。
 必至で、無様な声を上げぬ様に耐えるが、歯を食いしばれないこの苦境。

「この造形。完璧とはこういう事を言うのだろうな。ふふふ、この牙、実に素晴らしい。悪魔として存在するお前を彩るに相応しい畏れを感じさせる。私の指すら切断できそうな鋭さだ」 

「・・んぅ・・・・を・・・・い」
(御身を傷つけるなど、滅相も無い)

 否定を紡ぐことも出来ず、唸るこの身のなんと無様なことか。
 智謀にかけては守護者筆頭に勝るとも劣らないと自負する悪魔の口を塞ぐ。
 反論など赦さない物理による圧倒的な蹂躙。
 絶対なる支配者、アインズ・ウール・ゴウン様・・・。
 どのような酒にも酔えぬ身が酩酊に沈む。
 酒は身を亡ぼす。そんな言葉が頭を過った。確かにそれは事実なのだろう。
 粘膜を通して感じる固く滑らかな感触。
 舌を押す間接のくぼみ。
 当惑は酔い痴れ、思考は溺れた。
 不意に八重歯を撫でていた指が離れる。
 そして、素早く指先の一本が、歯の表面を奥から奥へと一直線に滑った。
 カカカカカカッ。
 デミウルゴスの歯が楽器のように鳴る。
 共鳴して背骨を走る鮮烈な感覚。
 顎から背骨へ、尾てい骨から尾の先へ。
 駆け抜けたのは紛れも無い快楽だった。

「デミウルゴス、実に美しい骨であったぞ」

 後少しでも刺激を受けたら膝が崩れただろう。

「堪能した」
 
 言葉と共に、口から指が抜き去られた。
 絡んだ唾液が糸を引く様が、留めようとする己の浅ましいさに重なり、デミウルゴスは愕然となる。事実、その脆い糸が切れた瞬間の喪失感はどうだ。

「中々に有意義な時間を過ごせた。礼を言うぞデミウルゴス。報告の続きは執務室で聞く。お互い姿を整えて落ち合うとしよう。一時間、いや二時間後に私の私室で良いか。もし戻る用事があるなら、後日でも良いのだぞ」

 まるで、何事も無かったかように命じる主に、デミウルゴスは必至で冷静さを掻き集めて応じる。

「過分のご配慮ありがとうございます。何を置いても私が優先すべきはアインズ様以外にございませんが。もとより何日かナザリックで過ごすつもりで帰還しましたので、ご心配には及びません。二時間後、アインズ様の私室に訪ねさせていただきます」

 その視線が、デミウルゴスから離れたのは幸運であった。
 頭を下げつつ、口元を密かに拭う。
 立ち上がるにはまだ痺れが抜け切れていない。

「うむ。では後ほど語らうとしよう。楽しみにしているぞ」

「有難き幸せ。では一旦御前を失礼させていただきます」

 そこで、ようやくデミウルゴスは立ち上がった。
 最低限の礼儀を保てるだけの余裕を理性で勝ち取った悪魔は、優雅な、しかし普段とは明らかに劣る一礼の後、御前を辞した。

 ドアを開いて出てきたデミウルゴスに、メイドが目を見開く。どうやら取り繕うのも限界だったようだ。しかし、メイドは静かに目線と頭を下げると何も言わず、デミウルゴスを見送った。珍しいことでも無いのだろう。デミウルゴスにとっては幸運であり、同時に懸念事項が増えた瞬間だった。

 誰にも姿を見られないよう急ぎ戻った自室で安堵の嘆息を吐く。
 重なった体幹骨と、絡まり合う体肢骨。
 二体の異形の骨格をデミウルゴスは夢想する。
 夢想は叶わぬが故の痛みを伴い、それでいて想い焦れずにはいられない甘さを含んだ毒だ。

 「いっそ、血肉を剥がして交わりたいなどと・・・創造主に対しても酷い不敬だ」

 崩れ落ちるように椅子に座った悪魔は顔を覆う。
 時間を頂けたのは、本当に幸いな事だ。
 いや、それすらもお心の内か・・・。
 己の権謀叡智を持ってしても、計り知れない畏ろしい御方。
端倪すべからざる存在を脳裏に想い描きながら、デミウルゴスは己の牙を撫でた。


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