90年代バブル映画『就職戦線異状なし』をいまの就活生が見たらトンデモ展開に唖然…

劇場公開は1991年6月。バブル期の超売り手市場で就職活動に挑む若者たちを描く。主演は織田裕二。フジテレビ制作。

1991年に公開された映画『就職戦線異状なし』はまさにバブル期を象徴した作品。学生たちが就職活動に挑むのですが、これが今見るとトンデモ展開が目白押しなのです!

とにかく、学生みんなが浮かれていて、

  • いい女、いい車を手に入れるために就職活動に励む!
  • 大手代理店の内定をもらった学生が、六本木で高級シャンパン飲みまくり!
  • 大学内で「就職杯内定獲得レース」が開催され、誰が内定を取れるのか賭けごと!

というエピソードが展開されます。

今の就職活動とはちょっと愕然とするほどのギャップがありますが、果たして現役の就活生たちが見たらどう思う??

というわけで、こちらの2人に協力していただき、映画鑑賞してもらいました!

就活中の大学生


まつもとくん:就職活動中の大学3年生。メーカーを志望している。インターンに積極的に応募して何社かで研修を受ける。飲み会好きで、Jリーグの横浜F・マリノスサポーター。

たなかさん:就職活動中の大学3年生。SI企業を志望しながら、インターンに応募している。囲碁ガール。

今と昔の就職活動の違いはどこにあるのか? 映画『就職戦線異状なし』を題材にして話を聞いてみます!

『就職戦線異状なし』ってどんな映画?:1991年に劇場公開された就職ムービー。織田裕二、仙道敦子、和久井映見など当時のトレンディドラマの顔が集結した。お調子者な性格の大原(織田裕二)や、マスコミにあこがれる立川(的場浩司)、親のコネで大手代理店の内々定をもらった北町(坂上忍)などが就職活動を通して、自分の生き方を考えていく…。DVD化されていないこともあり、いろいろな意味で伝説的な作品。

織田裕二にピンとこない。いきなりの世代間ギャップ!?

本作には当時の人気俳優陣がそろっている。織田裕二、和久井映見、仙道敦子、坂上忍、的場浩司、羽田美智子。みんな若い! イラスト:Nishi Aznable

--今回はご協力をいただきましてありがとうございます。『就職戦線異状なし』という作品はご存知でしたか?

まつもと:こんな映画があったなんて知らなかったです。佐藤健主演の『何者』(※)は周りから見ろ見ろって言われてまだ見てないのですが、就活映画だとそっちのイメージですね。

たなか:すいません…まったく知りませんでした。

--そうですよね、25年くらい前の作品ですし。主演の織田裕二(大原役)は知ってます??

まつもと:はい、『踊る大捜査線』はドラマも映画も見ているので知っています。

たなか:あっ…名前は聞いたことがあります…。

--織田裕二、ピンとこない??

たなか:あまり知らないですね…。

--なんと…。そうなると、坂上忍(北町役)は知名度高くなるのかな。

まつもと:坂上忍は、テレビでよく見ますよね。

たなか:あまり知らないです…。

--えっ!?

たなか:わたしがテレビ見ないだけかも…。

※『何者』…2016年劇場公開。佐藤健、有村架純、菅田将暉らが出演。今どきの就活生たちの嫉妬心がむき出しになっていき、就職活動のツラさを感じさせる。『就職戦線異状なし』と比べると、かなりコントラストがある内容になっている。

さっそく鑑賞してもらう。今と昔の就活の違いは?

当時は春ごろから模擬面接があったが、模擬というのは名ばかりで、本採用の面接だった。模擬面接で8割の人が内定が決まっていたとはびっくり! イラスト:Nishi Aznable

--映画鑑賞していただいて、どうでしたか??

まつもと:すごくおもしろかったんですけど、春の模擬面接で8割が内定ってホントかよ!と、愕然としました。今はインターンですら採用してもらうのは難関で、そこから就職にあたっては筆記や面接もあってフィルターが何重にもあるんですよね

たなか:この映画ではマスコミだけ競争率が高くて、ほかは内定が取れることが当たり前だったんですよね。びっくりしました。

--面接風景については、今との違いは感じましたか?

まつもと:男性の髪型が気になりました。あの当時の流行りなんですかね、整髪剤を使っていない感じで真ん中分けの人が多い印象で。今はワックスを使って髪を整えないといけない。美容院に行って、おでこを広く見せてほしいとかお願いするし。清潔さが大事なので。

--織田裕二はオールバックでしたしね。

まつもと:オールバック…あまり見ない(笑)。

たなか:面接で女性に対してセクハラがあったのはビックリしました。誇張しているとは思うんですけど、「恋人いますか?」とか「スリーサイズはいくつ?」なんて質問は今なら大問題! 就活体験記や2ちゃんなどで、どこの会社の何次面接でセクハラがあったとすぐ書き込みされます。

--そういう掲示板はけっこうチェックします?

まつもと:僕はあまり見ないですけど、気にする人は気にしていますね。どこがブラック企業とか。

ありえない! 学生が六本木でシャンパン飲んで豪遊

六本木で学生たちが豪遊! 内定者への囲い込みの一環で、企業による接待が行われる場面。豪華なオープンカーは乗り回すし高級シャンパンで乾杯するし、バブルの勢いを感じさせる。 イラスト:Nishi Aznable

--本作でインパクトがあるのは、六本木での豪遊場面じゃないでしょうか?

まつもと:学生なのにすごい! 高級シャンパンですよ!

たなか:接待があったなんて信じられない。大学の先生から聞いたことはあったんですけど…。あと内定者が背広をプレゼントされたり、内定者の両親に牛か馬を送ったって言ってましたよね? 耳を疑いました。

まつもと:内定者を集めての旅行もあったよね。囲い込みのためだけに旅行に連れて行ってくれるなんて、今は考えられないですよ。

--こういう状況はうらやましいですか?

たなか:うーん…私は、ああいった接待をされても嬉しくないですね。一人ひとりをちゃんと見てくれてるのかな、と思いました。「会社に来てください!」と言っているけど、はっきり言って誰でもいいんじゃないかなと。

まつもと:僕はうらやましいですね。接待を受けたいわけじゃなくて、会社に入る窓口が広いってことだから、希望する職種に就ける可能性が高い。それは嬉しいこと。入社してスタートラインに立つことができるなら、仕事で成果を出せるかは自分の実力次第になるので。

--今の就職活動とはだいぶ違うようですね。

まつもと:この映画の時代は、いかに学生を囲い込んで、内定を辞退させないかを重要視していますよね。今は、学生に対して入社してすぐ戦力になるかどうか、すごくシビアに見られている気がします。

たなか:この当時はライフスタイルもほぼ同じで、成功モデルがわかりやすかったんじゃないかな。

まつもと:この会社に入れば、いい車持てるし、いい女と付き合えるというモデルがあったのかもしれない。今だと、どういう生き方をしたいのか、そこから逆算して働く場所を考えないといけないなとは思います。

立派な人間とは? 立派な大人とは?

大原(織田裕二)はエフテレビから内定をもらうが、結局は辞退してしまう。エフテレビ社員である葉子(和久井映見)とのやり取りは、働くことの意味を考えさせられる場面だ。 イラスト:Nishi Aznable

まつもと:この映画で印象に残っているのが、大原(織田裕二)が葉子(和久井映見)に言われる言葉なんです。「大原くんは、立派な人間にはなれても、立派な大人にはなれそうにない」と言われてしまう。

--あぁ、大原がエフテレビの内定をもらったけれど、自分がなりたいものはここにはないと入社を辞退してしまった。そのときに言われた言葉ですね。

まつもと:そうです。「立派な人間」と「立派な大人」がこの当時は違う意味だったんだなと。「立派な大人」って会社に就職してお金を稼ぐ人って意味だと思うんですけど、今はこの2つがほぼイコールなんじゃないかなって。自己実現できていれば、「立派な人間」で「立派な大人」なんじゃないかなって。

--なるほど。大学生にそこを求めるというのも、酷な気がしますけど…。

まつもと:大学に入ったと思ったら大学2年から就職活動が始まって、企業側も即戦力を求めてくる。ひどいですよ!(笑)

--最後の質問になります。お二人にとって、就職活動はどういう意味があると考えていますか??

たなか:私は、個人の価値観と組織の価値観がマッチングするかを確認することかなと。就活でインターンシップのエントリーシートを書いた企業があって、受かってそれを求める人物を見てみたら、この企業いいなと思ったときは感動しました。そこから自分がどういう人間かも見えてくることがある。

まつもと:僕にとって就活は、自分を再確認する場所ですかね。何をしたってどこにいたって、この先、生きるにはお金が必要です。お金を稼ぐ手段が、自分の生き方や価値観に合っているかどうか。それによって自分が何者かを再確認することなんだと思います。その点では、映画の登場人物と共通するところがあると感じますね。

--本日は長時間お疲れさまでした。貴重な意見をありがとうございました!

取材・文・撮影:WakuBa編集部
イラスト:西アズナブル

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