【元米大統領主席戦略官のスティーブ・バノン氏 撮影/太田真三】
米大統領選でトランプ氏を勝利に導いた男として一躍名をはせた。スティーブン・バノン氏、64歳。首席戦略官兼大統領上級顧問として政権入りをするも、政府内の確執から昨年8月に辞任。しかし、現在もトランプ大統領とは親密な関係にあるとされる。
トランプ大統領の登場以降、北朝鮮はミサイル実験を繰り返し、米国との間でチキンレースを展開する。東アジアの緊張が高まるなか、日本はどう生き残ればいいのか。昨年12月中旬、来日中だったバノン氏に訊ねた。
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日本では近年、北朝鮮問題への危機感が高まっている。近隣に核兵器と弾道ミサイルを相当数保有する挑戦的な国家が突然出現し、ミサイルを向けていると。だが、危機の火種はずっと以前から存在した。北朝鮮に核やミサイル開発を許したものは何だったのか? 日本のみなさん自身が理由をよく考えていただきたい。
今回、日本では安全保障が危機に直面しているという問題について講演を行った。日本は戦後、平和主義国家として専守防衛につとめてきたが、もはや現実を直視しなくてはならない。
私は40年ほど前、米海軍将校として第7艦隊にいた。日本の海自と様々な共同演習をおこない、何度も横須賀に来ている。
当時と比べ、日本の安全保障は危機的な状況に落ち込んだ。日本人にとり非常に難しい問題ながら、(日本の一部では核武装論議も提起されつつあるが)何が必要なのかも自身で熟考してほしい。
現在、危機はアジアの東西にある。東は北東アジアと南シナ海、西はペルシャ湾だ。東の二つは直接日本に関係し、また石油資源を考えれば西の湾岸地域も無縁ではない。日本のより積極的な関わりを望みたい。
私は2014年4月、『ブライトバート』(*)のラジオ・ショーで5~10年後に南シナ海で戦争が起きると話した。中国の南シナ海での動きは、アメリカ以上に日本を害するだろう。
【*大統領選中のトランプ応援団としても機能した、バノン氏が会長を務めていた右派系ウェブメディア。バノン氏は昨年8月に大統領首席戦略官を辞任後、会長職に復帰】
北朝鮮問題は南シナ海に次ぐ深刻な問題だ。かつて1914年、バルカン半島の緊張が第一次大戦の起点となったが、現代の北東アジアにも類似の緊張が存在する。小さな事件が一つ起これば大きな破壊を生む。北朝鮮は中国の属国で、中国が責任を取るべきだ。加えて日米両国が一緒に、中国と対話を進めねばならない。
特に中国に関する問題で、アメリカは日本を真のパートナーとして必要としている。中国は世界2位の経済大国だが、1位のアメリカと3位の日本がタッグを組めばメガパワーとなる。
日本人は常に勇敢で、日本はすばらしい同盟国だ。「アメリカ・ファースト」は優れたパートナーと共に実現されるのだ。日米が中国と対抗し、北朝鮮への行動を取るよう促すべきである。
私は今回の来日で、日本の保守派に影響力を及ぼしたいと考えた。日本の国家の誇り、日本自身が自国の将来を決定していくことが重要だ。保守派がその議論の前面に立ってほしい。
キーになるのは安倍首相だ。彼は日本人にプライドを抱かせる指導者だ。日本の若き保守派たちは将来のモデルとしてほしい。保守派かつ右翼・ナショナリストである私は、安倍首相を長年尊敬している。この点での彼は間違いなくトランプに先立つ人物だ。
【PROFILE】Stephen K. BANNON/1953年11月、米東部バージニア州南東部のノーフォーク市生まれ。1976年にバージニア工科大学を卒業。海軍入隊。ジョージタウン大学でも修士号を取得。海軍除隊後、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得。ゴールドマン・サックス勤務を経て1990年に独立し、メディア向けの投資銀行を設立。その後、ニュース・サイト「ブライトバート・ニュース」の運営会社会長に就任。その手腕を見込まれ、トランプ陣営の選挙キャンペーンの責任者に抜擢。
●取材・構成/安田峰俊
※SAPIO2018年1・2月号