第1回問1~問10の解き方

第1回キャリアコンサルタント試験学科試験問題を徹底解説!

選択肢の正誤と解説、参考文献をお伝えします。

全50問の目次

問1.個人の主体的な能力開発の支援

 資料からの出題もありますが、キャリアアップや高齢者の就業に関する状況から正答を導ける問題です。各資料に目を通しておきましょう。

1.× 「個人の意向にかかわらず」や、「何よりも優先して」はありえない選択肢。

2.○ 第10次職業能力開発基本計画からの出題(P9)。【第10次職業能力開発基本計画

3.× 日本の高齢者の就業率は主要国のなかで高い【総務省統計局】。それは養成講座テキストにも言及がある【テキスト1-P143】。また、就業の理由は経済上の理由が最も多い。【国民生活白書

4.× 第2回試験と同様に問1の選択肢4は「能力開発基本調査」に関連する出題。自己啓発に関する問題点としては、仕事が忙しく余裕がない点(時間)がトップで、次に費用である。【能力開発基本調査

問2.職業能力開発促進法(キャリアコンサルティングの定義)

 職業能力開発促進法からの出題です。この法律は今後も注意が必要です。法を一読しておきましょう。

1.× 出典は、広島県立教育センターにありますが、ポピュラーな資料とは言えず、あまり気にしなくてよいでしょう。【広島県立教育センター:PDF】

2.○ 職業能力開発促進法第2条5項。この法律において「キャリアコンサルティング」とは、労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うことをいう。 【職業能力開発促進法

3.× キャリアコンサルタント資格はあくまで名称独占資格であり、資格を持たないと活動できないとうことではない。【職業能力開発促進法

4.× 職業指導や職業紹介に関する手続き等が定められた職業安定法からの出題。木村先生の著書にも記述がある。【木村先生P18】

問3.キャリアコンサルティングの目的

 肩の力を抜いて、支援の基本姿勢に照らして考えましょう。

1.○ 選択肢2~4がありえないため、消去法でも求められるが、気になる文言は特に無く正答。

2.× 「能力の限界にチャレンジ」、「強く求める」はやりすぎ。

3.× 「情緒的な問題」を無視してはいけない。

4.× 「人間関係や職務内容の不満」などはまさに耳を傾ける必要がある。

問4.キャリアコンサルタントの役割

 4の不適切さがあまりに際立っているため、正答を導き出すことができる。

1.○ 主体的に考え、目標設定を行い、自己啓発に取り組むことを支援する。

2.○ 高齢期に入る前からの支援が大切である。

3.○ 制度の活用を組織に提案することも必要なことである。

4.× かつては美徳だったかもしれないが、滅私奉公、愛社精神、帰属意識といったメンタリティの強化は、現代では最も重要とはいえない。

問5.キャリアコンサルタントの行動や活動

 出典を検討すると、キャリア・コンサルティング協議会の「キャリア・コンサルタント行動憲章(2008年):PDF」と論点が揃っています。この行動憲章は、新しい国家資格に対してのものではないため、出題の意図はやや疑問ですが、憲章を知らなくても支援の基本姿勢に照らして正答を導くことができるでしょう。

1.○ キャリアコンサルタントの活動には、環境への働きかけがある。

2.× 遂行を本人に代わって管理するが不適切。相談者の「主体的」なキャリア形成が重要。

3.○ 質の高い援助を提供するため、自己研鑽する。

4.○ 自己評価や相談者の評価だけでなく、第三者の客観的な評価を受け、活動の質を高める。

問6.シャインの理論(キャリア・アンカー)

 正誤判定に難しさがありましたが、キャリア・アンカーの定義は第2回でも出題があり、今後も外せないトピックです。

1.× キャリア初期にやっと「発見」することができるといえる。正誤判定の難しい選択肢だが、「現実に評価」とまでは言えない。【テキスト3-P117】

2.○ 直接の出典は不明だが、「長期的な職業生活のなかで拠り所となるもの」【宮城先生P86】。キャリア・アンカーの定義は第2回試験にも出題されている。

3.× キャリア初期の何年かの間に発見することができる【テキスト3-P117】。親の養育態度が影響するとしたのは、ローの理論である【木村先生P28】。

4.× よく見ると、ホランドのRIASECに「+コンピタンス」になっている。キャリア・アンカーは8種類、①専門・職能的コンピタンス、②全般管理コンピタンス、③自律・独立、④保障・安定、⑤起業家的創造性、⑥奉仕・社会貢献、⑦純粋な挑戦、⑧生活様式。【テキスト3-P116】

語呂合わせ!キャリア・アンカー
「戦前(せんぜん) 自分(じぶん)は ほうきを持って 奉仕(ほうし)した 人生(じんせい)」

問7.スーパーの理論

 選択肢2の判定がやや難しいものの、3と4の定義は判定し易いでしょう。

1.○ 同様の記述が渡辺先生の著書にある。【渡辺先生P28】

2.× 「ライフキャリアレインボーを改定し、アーチモデルを発表した。」【宮城先生P54】

3.× 説明は、「ライフ・キャリア・レインボー」のものである。【テキスト3-P18】

4.× 「ライフ・キャリア・レインボー」は、年齢や場面の様々な役割の組み合わせを示すものである。【テキスト3-P18】



問8.ホールの理論(プロティアン・キャリア)

 1以外は、判定が難しい選択肢でした。積極的に2というより、消去法で残った、という解き方を私はしました。

1.× プロティアン・キャリアでは、キャリアは組織ではなく個人によって形成される。【テキスト3-P129】

2.○ 同様の記述が渡辺先生の著書にある。「キャリアは生涯を通じた経験・スキル・学習・転機・アイデンティティの変化の連続である」。【渡辺先生P148】

3.× 発達とは、継続的な学習、自己志向的、関係的、仕事のチャレンジにおいて見いだされる【渡辺先生P148】。ちなみに選択肢の文章は、ギンズバーグの理論の説明である【木村先生P34】。

4.× 適応コンピテンス(①反応学習、②アイデンティティの探索、③統合力)×適応モチベーション【テキスト3-P130】

問9.ライフステージと発達課題(理論家の特徴)

 レヴィンと著作の組み合わせが正答。技能士対策の問題集等では見かける著作で、ネーミングに印象が残りますので、知っていれば積極的に2を正答とすることができる問題でしたが、そうでなければ判断が難しかったのではないでしょうか。

1.× 青年期における発達課題は、アイデンティティVS混乱の結果、忠誠が確立される。【テキスト2-P80】

2.○ レヴィンは青年のことを、大人でもこどもでもない不安定な存在として「周辺人、境界人(marginal man)」と呼んだ。

3.× アンナ・フロイトとの出会いにより、精神分析の立場から8つの発達段階に区別し、特に青年期の自我同一性の獲得に重点を置いたのは、エリクソンである。【テキスト2-P77ほか】

4.× アイデンティティの確立を青年期の発達課題としたのは、エリクソンである。【テキスト2-P80】

問10.レビンソンの理論(成人発達理論)

 養成講座テキストに詳しい説明のあるレビンソンの成人発達理論ですが、一つ一つの選択肢の難易度は高いです。選択肢3の「安定を得る」に違和感を感じるかどうかがポイントです。

1.○ 成人への過渡期から始まる成人前期は、これまでの保護、養育の世界から、大人の世界に重心を移す時期である。【テキスト2-P83】

2.○ 30歳の過渡期では、生活はより現実的になる。【テキスト2-P84】

3.× 40~45歳の人生半ばの過渡期は、中年期への架け橋であり、今まで無視してきた自己の側面に目を向ける時期である。安定を得るには必ずしも至らず、中年の危機が待ち構えていることもありうる。【テキスト2-P84】

4.○ 本選択肢についてテキストに直接の記述はないものの、この時期には老年期に入る準備が行われる。【テキスト2-P85】

参考文献・資料

日本マンパワーキャリアコンサルタント養成講座テキスト(201604版)

キャリアカウンセリング宮城まり子著(駿河台出版社2002年)

キャリアコンサルティング理論と実際4訂版木村周著(雇用問題調査会2016年)

新版キャリアの心理学渡辺三枝子(ナカニシヤ出版2007年)

総務省、国民生活白書

キャリア・コンサルティング協議会

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