戦車の音はすべて新規に作り直しました
── 話を少し戻しますが、小山さん、最終章で新たに行ったことって、何かありますか? 小山 実は、戦車の音をすべて新規に作り直しました。新しい戦車、BC自由学園の戦車などはもちろんですが、大洗の戦車の音もすべて新しくなっています。
── まったく異なるものにしているのですか? 小山 いえ、いままでの音をベースにしつつ、さらに複雑な音といいますか、キャラクター性がハッキリと際立つ音に仕上げました。劇場版は、オールスターに近い戦車の出演台数だったので、大まかには敵と味方がハッキリわかればいいところはあったので、大洗の戦車は基本的にTVシリーズとそれほど変化ないですが、最終章 では、たとえ画面に映っていなくてもそこにいるのがわかるような、個性を感じる音に仕上げています。
岩浪 作品の中では短い期間ではありますが、大洗のメンバーもずいぶん成長していますので、そういった部分も感じられる、たくましく力強い音にしてもらいました。そうしないと、話にそぐわなくなってしまうんです。そのあたりは、自動車部がチューンアップしたということで自分の中では解決しています(笑)。
小山 前作にとらわれ過ぎず、あえて新作だと意識することで新しいチャレンジを行いました。
岩浪 人間面白いもので、同じ音だとグレードダウンしてしまった気になるときもありますし。音響チーム全体で、さらなる上を目指したのは確かです。
山口 セリフのパンニングを多数しているのも特徴ですね。
小山 先の劇場版とは、そのあたりが違います。
山口 日常シーンなどでは、セリフで遊べるといいますか、登場人物の位置、セリフの位置などに演出に盛り込むができるので、そういった空間の使い方になっているのは確かです。このあたりは、岩浪さんのプランニングです。
岩浪 絵コンテが、そうなっていましたから(笑)。
山口 確かに、画が要求していました。
岩浪 日常ではあっても、あくまで戦いの間の小休止で、平和の中の日常ではないので、そういった緊迫感がゆるんでしまわないよう、どこかに引っかかりのあるサウンドに仕上げていったのも確かです。
山口 ここまで濃い日常って、そうそうないとは思いますけどね(笑)。実際、「ガールズ&パンツァー」シリーズの中で、一番水島監督らしい作品だと思います。
小山 確かに、僕らが知っている“水島監督らしさ”が一番表現されている気がします。
岩浪 ガルパンって、水島監督が満を持してオリジナルシリーズにチャレンジした作品なので、隅々まで手の行き届いた緻密な世界観が構築されているのですが、最終章で自分のほうにちょっと寄せてきた感じです。
山口 どこか新しいガルパン、と思ってもらえる気がします。
小山 ガルパンシリーズ以外の水島監督作品をそれほど知らない人は、新鮮に感じていただけるんじゃないかな。
岩浪 確かに、キャラクターたちがここまで群像劇をつむいでいるのは、初めてです。
小山 シナリオでは、もっと長かったという話も聞いています。
岩浪 最終的に、絶妙な長さに仕上がっていると思いますよ。