相続税を知らない人でも自分で計算できる相続税計算ガイド

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相続税を知らない人でも自分で計算できる相続税計算ガイド

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相続税の計算というと、専門家に依頼しないととてもわからない…というイメージをお持ちの方もおられるかもしれません。
しかし、相続税の計算は基本的な部分であれば専門知識がなかったとしても理解することはそれほど難しいことではありません。
実際の申告手続きについては税理士に相談するにしても、スムーズに手続きを進めるために相続税計算の大まかな流れについて理解しておくことは大切です。
そこで、相続税計算の基本的な仕組み・流れについて、相続税の計算を事例によって解説させていただきます。
最終章では相続税シミュレーション機能を使い、概算で簡単に相続税がいくらかかるか?が計算できるようになっています。
これから相続に関する手続きを行う予定の方、「相続税がかかる?」「どれくらいかかるのか?」を知るため相続税の試算をしたい方は是非、参考にしてみてください。

目次

  • 2016年から2017年の相続税3つのポイント
  • 相続税計算の4ステップ
  • 正味の相続財産の計算
  • 相続財産の評価方法
  • 相続税の基礎控除額の計算
  • 課税遺産総額を計算
  • 相続税を計算する
  • 相続税特有の税額計算の仕組み
  • 事例で実際に相続税を計算してみよう!
  • STEP1 法定相続分を確認する
  • STEP2 課税遺産総額を法定相続分で割り振る
  • STEP3 相続税の速算表から税額を計算する
  • STEP4 相続税の総額を計算する
  • STEP5 相続人が実際に相続する財産額の割合に応じた相続税額を計算する
  • STEP6 各相続人の相続税納付額を計算する(相続税の2割加算、税額控除)
  • 相続税の税額控除、2割加算
  • 相続税シミュレーション

〇2016年から2017年の相続税3つのポイント

まずは最近の相続税の改正点についてみていきたいと思います。
「相続税が改正されて、税金の負担が大きくなるとはよく聞くけれど、自分にはどういう影響があるんだろう?節税のための対策をするとしたらどういうことから始めればいいの?」という視点でも確認しておきたいたいのが相続税の改正事項についてです。
特に納税者に影響の大きい点としては次の3つが挙げられます。

  1. ①相続税の基礎控除額が40%減少
  2. ②最高税率が50%から55%にアップ
  3. ③不動産所有者の相続税対策の必要性が増加

以下ではこれら3つについて順番に説明させていただきます。

◎①相続税の基礎控除が40%減少…相続税の課税対象者数が1.5倍に
相続税の計算は、「相続財産−基礎控除額」で計算した金額に相続税の税率をかけて計算します。

平成27年以降はこの基礎控除額の計算方法が以下のように変わりました。

平成27年以降の基礎控除額の計算方法

例えば、法定相続人として妻と子供2人の合計3人がいたという場合の相続では、改正前は遺産の合計額が8000万円までであれば相続税はかかりませんでした。

これが改正後には4800万円の遺産から相続税がかかるように変更になっています。

法定相続人の人数によって影響の大きさは違いますが、上の場合であれば基礎控除の金額が40%も減少したことになり、相続税の課税対象となる人は大幅に増えるものと思われます。

◎②最高税率が55%にアップ…富裕層の税負担が増加
相続税の税率は、法定相続分に応じて取得した遺産の金額によって異なります。(遺産の金額が大きくなるほど税率は高くなります)

これまでは最高税率が50%だったところ、平成27年以降は55%に増税されることとなったため、富裕層に属する人たちの負担が大きくなっています。

具体的な税率を見ると以下のようになります。

なお、上の表にある「控除額」というのは、相続した遺産に税率をかけて計算した金額からさらに差し引きされる金額のことをいいます。

例えば、取得金額が4000万円だった場合には、4000万円×税率20%−200万円=600万円というように負担する相続税の金額を計算することになります。

◎③不動産所有者は課税対象になる可能性大
上でも解説させていただいたように、相続税の基礎控除額が大幅に小さくなったことによって、今後は相続税の課税対象となる人は大幅に増えるものと思われます。

特に、財産に占める不動産の割合が多いという方は注意が必要です。

というのも、日本では相続財産として残される財産は不動産が最も多く、相続財産の全体のおよそ4割を占めているのです(土地が37.99%、建物が5.34%で合計すると43.32%となります:平成27年のデータ)

相続税の納税は現金で行う必要がありますから、不動産の形で財産を所有しているという方は「相続税を納税したくても現金が足りないので納付できない」という状態になってしまわないように特に注意が必要です。

どうしても納付するための現金が足りない…という場合にはせっかく相続した土地や建物を売却して納めなければならないというようなケースも少なくありませんから、早めに対策を講じておかなくてはなりません。

相続税対策については、税理士に相談することでさまざまな節税方法を提案してもらうことができますから、必要に応じてアドバイスを受けるようにしましょう。

参考:相続税対策の基本的な方法をご紹介

相続税計算の4ステップ

相続税の計算は、大まかに分けると次の4つの順番で行います。

  • 正味の相続財産の計算
  • 相続税の基礎控除額の計算
  • 課税遺産総額を計算
  • 相続税を計算する

以下、順番に解説させていただきます。

1 「正味の相続財産」の計算

(1)正味の相続財産の計算
財産を所有している人が亡くなった場合、その財産はその人の家族が引き継ぐ(相続する)ことになります。
相続の対象となる財産はプラスの財産(資産)だけではなく、マイナスの財産(つまり借金)も含まれます。
相続税はこのプラスの財産からマイナスの財産を差し引きした「正味の相続財産」に対して課税されますので、まずはプラスの財産の金額と、マイナスの財産の金額を確定しなくてはなりません。

例えば、亡くなった方の財産として銀行預金が1億円、借金が3000万円残されているという場合には、正味の相続財産は7000万円(1億円−3000万円)ということになります。

参考:債務控除

(2)相続財産の評価方法
相続税がどのくらいかかるかというのは結局のところ、相続財産がいくらくらいに評価されるかにかかってきます。では、各財産の評価の仕方がどのようになっているのかを見てみましょう。

現金預貯金、有価証券などの場合

現金や預貯金は相続発生時点での価格で見ればよいのでシンプルです。ただ、有価証券の場合、株式については上場株式、非上場株式のどちらであるかによって異なります。上場株式については毎日の終値や月平均値を基準にしていますので、証券会社などに問い合わせることで比較的簡単に知ることができます。しかし、非上場株式は取引相場がないので会社の規模や状態によって評価方式が細かく分かれています。

路線価による土地評価方法

市街地にある宅地については「路線価方式」という評価方式がとられていますが、これはその宅地が面している道路に付けられた値段を基準にして評価額を計算する方法です。路線価が一覧で見られる「路線価図」というものがあり、税務署で調べることができるほか、インターネットでも公開されています。ただ、すべての土地について路線価図に掲載されている値段をそのまま使えるわけではなく、各土地の条件(土地の立地や形状など)を加味してあらかじめ決められた計算式を使い、補正を加えていきます(「画地調整」とよばれます)。

評価倍率法による土地評価方法

上記の路線価が定められていない地域は、「倍率方式」という方法を使って評価します。倍率方式を使う場合はその宅地の固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて価額を算出することになっています。倍率についても一覧表になっており、これも税務署での閲覧以外にインターネットを使って調べることもできます。また、路線価方式、倍率方式ともに自用地(自分で自由に使える土地)ではないものは計算の仕方が変わってくることに注意が必要です。借地(人から借りている土地)の場合では自用地の評価額に借地権の割合をかけて求めます。また、逆に貸地(人に貸している土地)の場合では自用地としての評価額から借地権の価額を差し引いて計算することになります。

参考:相続財産に占める土地の割合

※小規模宅地の特例とは

小規模宅地等の特例は、被相続人(亡くなった人)の自宅や店舗、事務所など、事業用に使っていた宅地につき大幅に評価額を下げてもらえる措置のことです。不動産の評価額を下げることにより、結果として算出される税額も下がることになります。

■3種類の小規模宅地の特例

小規模宅地等の特例をあてはめることができる宅地には、大まかに分けて3種類のタイプがあります。
1 特定居住用宅地等
被相続人が住んでいた自宅の土地、被相続人と生計を一つにする親族が住んでいた宅地がこれにあたります。
相続した人が被相続人の配偶者であれば、何ら要件なしにこの特例の適用を受けることができます。他の親族でも受けられる場合がありますが、やや要件が厳しくなり「同居の親族」もしくは「同居でなければ被相続人に配偶者がおらず、相続人自身に過去3年、自分や配偶者名義の家がない」などの要件を満たさなければならないと定められています。
この要件に該当すれば、自宅の敷地330㎡まで相続税評価額を80%減額することができます。
図解で分かる!相続税の仕組みがわかる!自分で計算できる相続税計算ガイド
2 特定事業用宅地等
被相続人や生計を一つにする親族の事業に使われていた宅地のことです。被相続人がオーナーになっている会社などが使っていた宅地であっても、「特定同族会社事業用宅地」として特例の対象になります。
この要件に該当すれば、店舗の敷地400㎡まで相続税評価額を50%減額することができます。
図解で分かる!相続税の仕組みがわかる!自分で計算できる相続税計算ガイド
3 貸付事業用宅地等
被相続人や生計を一つにする親族が貸付事業に使っていた宅地のことです。

この要件に該当すれば貸家の敷地200㎡まで相続税評価額を50%減額することができます。

小規模宅地等の特例は上手に使えばとても節税に有効なものですが、「居住していたのは誰か」「取得するのは誰か」「面積はどのくらいか」など、 利用にあたっての要件が若干複雑です。税務署や税理士などの判断を仰いで慎重に判断したいものです。

参考:土地を相続したら、小規模宅地等の特例で大幅評価減

参考:賃貸アパート 小規模宅地等の特例を使えるか?

建物の評価方法

家屋の価額は固定資産税評価額がそのまま評価額となります。固定資産税評価額は毎年、市区町村から送付されてくる固定資産税の納税通知書にある課税明細書からも把握することが出来ます。課税明細書に記載のある「価格」のところが固定資産税評価額となります。なお、貸家は自用家屋の60%または70%の評価になります。相続財産がいくらになるのかによって相続税の金額が変わることはもちろん、場合によっては相続税申告の要否までもが決まってくることがありますので、それぞれの計算を慎重に行わなくてはなりません。

参考:家屋を相続した場合の相続税評価方法は?

生命保険の評価方法

「500万円掛ける法律で決められている相続できる人の数」で算出された金額分は相続税が非課税に成ります。例えば、自分に生命保険をかけていたご主人が亡くなられて奥様が保険金を受け取った場合は、死亡保険金として相続税の対象になります。ただし、死亡保険金には、生命保険の非課税枠があります。(下記図参照)受け取った保険金額から非課税額を差し引いた金額が生命保険の評価額となります。

また、奥様に生命保険をかけていたご主人が亡くなられて奥様が生命保険会社からお金を受け取った場合は、解約返戻金として相続税の対象になります。

参考:生命保険にかかる相続税評価方法とは?

家庭用財産の評価方法

相続財産に含まれている動産すべてのものが課税対象になります。具体的には、自動車・船舶、金やプラチナなどの貴金属、有名ブランド品やアクセサリー、骨董品、書画やその他の美術品、エアコンや洗濯機などの家電、家具、農機具、電話加入権、書籍や書類などが挙げられます。故人のライフスタイルや趣味などが色濃く表れているものも多く、財産価値の有無という観点から見ると、それほど価値の高くないものもあります。

参考:家庭用財産などの相続税評価方法とは?

2 「相続税の基礎控除額」の計算

相続税は一定額以上の相続財産がある場合にのみ課税されます。
簡単にいうと「お金持ち以外は相続税がかかることはない」ということですが、具体的に説明すると以下の通りです。
この「相続税がかかるお金持ち」と「そうでない人」をわける基準となるのが「相続税の基礎控除額」です。
相続税は、正味の相続財産から相続税の基礎控除額を差し引きした金額に対して課税されるため、もし「正味の相続財産相続税の基礎控除額」となっている場合にはそもそも相続税の発生もしなければ相続税の申告も必要ありません。改正点のところでも説明しましたが、この基礎控除額がいくらになるかで相続税がかかるか?かからないか?いくらくらいかかるか?の最初の目安となってきますので、再度詳しく説明します。

相続税の基礎控除額は下記の計算で求めます。

平成27年以降の基礎控除額の計算方法

たとえば、父親が亡くなって、母親と子ども3人が相続人になるケースでは、法定相続人は、4人です。そこで、基礎控除は、3000万円+600万円×4人=5400万円になります。よって、この事案では、遺産総額が5400万円以下なら相続税はかかりませんが、それを超える場合には、超える部分に対して相続税が課税されます。

法定相続人の数に応じた基礎控除額一覧

3 「課税遺産総額」の計算

正味の相続財産と相続税の基礎控除額がわかったら、次に「課税遺産総額」を計算します。
(計算式は以下のようになります)

2でも少し解説させていただいた通り、正味の相続財産の金額が相続税の基礎控除の金額を下回っている場合(正味の相続財産<相続税の基礎控除額)、相続税の金額は0円ということになります。
例えば、
正味の相続財産が3000万円で、相続人の人数が3人という場合には、課税遺産総額は以下のように計算できます。
3000万円−(3000万円+600万円×3人)=0円未満(相続税は発生しません)
一方で、正味の相続財産が1億円あるという場合には、課税遺産総額は以下のようになります。

4 相続税を計算する

(1) 相続税特有の税額計算の仕組み
相続税の計算は、法定相続人が法定相続分で遺産を分割したものとして算出した各人の相続税を合計し、その相続税の総額を各相続人が実際に財産を取得した割合に応じて負担することになります。

それでは具体的に相続税額の計算についてみていきましょう。

課税遺産総額の金額が計算できたら、次に相続人となる人それぞれが法定相続分※で取得したものとみなして相続税額を計算し、その相続税の総額をまずは計算していきます。
この相続税の総額を各相続人が実際に取得する相続分に応じ、相続税の総額を按分して各相続人の相続税額を計算します。
最後に、各相続人の相続税額から適用できる税額控除を差し引いた野残額が各相続人の最終の相続税納付額となります。

(参考1)法定相続分とは?
法定相続分というのは、法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)の誰に、どれだけ相続分があるのかということを決めた民法のルールのことです。民法の基本的な考え方としては、配偶者は被相続人(亡くなった人)の財産を形成することに貢献しており、被相続人が死亡した後もその生活をある程度保障しなければならないという観点から、離婚や死別などしていなければ無条件に相続人になりますし、その相続分も他の立場の相続人より多く定められています。極端な話をすれば、結婚して1日しか経たずに被相続人が死亡した場合でも、配偶者の相続分は50年連れ添った人と同じなのです。こういった背景から、高齢者の再婚がその子供によって反対される事例も珍しくありません。
法定相続人は基本的な親族の相続分を定めたものではあるものの、決してその通りでなければならないということではなく、たとえば遺言書で法定相続分と異なる相続分を定めてもかまいませんし、遺産分割協議が成立すれば結果的に法定相続分と異なる割合になったとしても違法ではないのです。実際、ほとんどの家庭では遺産分割協議を行って法定相続分と異なる割合で相続しているのが実情でしょう。

(参考2)法定相続分の具体的割合

法定相続分は相続人のケースによって以下のように定められています。

① 相続人が配偶者と子の場合

法定相続分は、配偶者が1/2、子が1/2となります。子が複数いる場合は子の1/2をそれぞれ按分します。

② 相続人が配偶者と直系尊属の場合

法定相続分は、配偶者が2/3、直系尊属が1/3となります。直系尊属が複数いる場合(父と母など)は、1/3をそれぞれ按分します。

③ 相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合

法定相続分は、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4となります。兄弟姉妹が複数いる場合は、1/4をそれぞれ按分します。

④ 相続人が配偶者のみの場合

相続人が配偶者のみの場合は、配偶者がすべての財産を受け継ぎます。

⑤ 被相続人に配偶者がいない場合

相続人が子のみ、直系尊属のみ、兄弟姉妹のみの場合、相続人となった者がすべての遺産を受け継ぎます。複数いる場合は人数で按分します。

⑥ 代襲相続の場合

代襲相続の法定相続分は、本来の相続人の相続分と同じです。代襲者(代襲相続で相続人となる人)が複数いる場合は、その相続分を按分します。
※ 配偶者は必ず法定相続人になり、相続分を持ちます。
※ 非嫡出子の相続分は嫡出子の1/2となります。
※ 子供が養子であっても実子と同じ法定相続分となります。
※ 相続放棄した人は、はじめから相続人とならなかったものとみなされます。

それでは事例でみていきましょう。

ここでは課税遺産総額は5200万円で、相続人として亡くなった方の配偶者(妻)、子供2人(長男と次男)がいる場合を考えてみます。遺産分割はそれぞれ、配偶者(妻)が4000万、子供がそれぞれ600万円づつで相続するものとして相続税が各人いくらかかるのか?について見ていきます。

法定相続分は配偶者と子供2人ですので、それぞれ下記のとおりになります。

妻 2分の1
長男長男 4分の1
次男次男 4分の1

実際に取得する相続財産額とは異なりますが、まずは各相続人が法定相続分で相続したものとしたものとして課税遺産総額を割り振ります。

STEP.02課税遺産額を法定相続分で割り振る

妻 5200万円×2分の1=2600万円
長男長男 5200万円×4分の1=1300万円
次男次男 5200万円×4分の1=1300万円

STEP.03相続税の速算表から税額を計算する

上で計算した各人の相続税額をもとに、相続税の具体的な金額を計算していきます。
相続税の速算表というのは、課税遺産総額の金額によって異なる相続税を計算する一覧表のようなもので、一部を抜粋すると以下のようになっています。

課税遺産総額1000万円超〜3000万円以下 相続税率は10%、控除額は50万円
課税遺産総額3000万円超〜5000万円以下 相続税率は15%、控除額は200万円
課税遺産総額5000万円超〜1億円以下 相続税率は30%、控除額は700万円

この速算表に従って、法定相続分により取得する財産に対する相続税額を計算すると以下のようになります。

妻妻の相続税額 2600万円×相続税率10%−控除額50万円=210万円
長男長男の相続税額 1300万円×相続税率10%−控除額50万円=80万円
次男次男の相続税額 1300万円×相続税率10%−控除額50万円=80万円

STEP.04相続税の総額を計算する

相続人がそれぞれ法定相続分で相続したものとして計算した相続税額を合算して相続税の総額を計算します。

今回の事例でいいますと、相続税総額370万円になってきます。

STEP.05相続人が実際に相続する財産額の割合に応じた相続税額を計算する

今回の事例では、課税遺産総額は5200万円、遺産分割協議で、妻4000万円、長男600万円、次男600万円で相続しますので、相続人それぞれが取得する相続財産割合に応じて相続税の総額を按分して、個々の相続人の相続税を計算します。

各相続人が実際に取得することとなる相続財産

妻妻の相続財産 4000万円
長男長男の相続財産 600万円
次男次男の相続財産 600万円

相続税の総額は370万円ですから、相続人それぞれが実際に相続する財産の負担割合でこれを按分し、各相続人それぞれの相続税額を計算します。

妻妻の相続税額 370万円×4000万円/5200万円=284万
長男長男の相続税額 370万円×600万円/5200万円=42万
次男次男の相続税額 370万円×600万円/5200万円=42万

これが各相続人が実際に納付する相続税額ということになります。

STEP.06各相続人の相続税納付額を計算する(相続税の2割加算、税額控除)

ただし、配偶者は被相続人の相続財産を取得した場合、「配偶者の税額軽減」の制度を適用できるため、法定相続分が1億6,000万円までであれば1億6,000万円までの取得分が非課税となります。

今回のケースでは相続人に配偶者がいるため配偶者の税額軽減を適用します。
(それ以外の税額控除はないものとします)

妻妻の相続税額 370万円×4000万円/5200万円=284万
⇒配偶者の税額軽減の適用により 0円
長男長男の相続税額 370万円×600万円/5200万円=42万
次男次男の相続税額 370万円×600万円/5200万円=42万

また、相続税には税額控除の制度や一親等の血族及び配偶者以外が相続人の場合には、算出した相続税額の20%相当額を加算する「相続税の2割加算」といった制度があります。
次の章では、これら税額控除、相続税の2割加算について見ていく事にしましょう。

5 相続税の税額控除、2割加算

相続税には相続税を減額できる税額控除の制度、また、相続人が一親等の血族及び配偶者以外の人で有る場合には、相続税の2割に相当する金額が加算される制度があります。

(1) 配偶者の税額軽減(配偶者控除)
お亡くなりになった被相続人の配偶者が相続財産を取得した場合、その配偶者が取得した相続財産にかかる相続税額が大幅に軽減される「配偶者の税額軽減」を適用することができます。配偶者は被相続人の財産形成や維持に貢献したと考えられるので、被相続人の亡き後も生活ができる様に、多くの財産を手元に残しておけるような配慮がなされているのです。ただし、配偶者には内縁関係にある妻や愛人は含まれません。婚姻届を提出し、法的に正式に夫婦となった方のみ、配偶者控除の対象となります。
また、配偶者控除を適用して相続税額がゼロになる場合においても、相続税の申告書を提出する必要があります。

1.配偶者の相続税から控除できる額の計算式

相続税の総額 下記①と②のうち少ない金額 配偶者税額軽減税
相続税の課税価格の合計
  • ① 配偶者の法定相続分に相当する額(1億6,000万円未満のときは、1億6,000万円

  • ② 配偶者が実際に取得した額(配偶者の課税価)

たとえば、配偶者の法定相続分が3億円であれば3億円、法定相続分が1億6,000万円までであれば1億6,000万円までの取得分が非課税となります。

(2) 税額控除
1 障害者控除・未成年者控除
相続又は遺贈により財産を取得した者が障害者又は未成年者である場合には、それぞれ下記計算式によって求めた金額を控除することができます。

①. 障害者控除

障害者 : 10万円 × (85歳 - その相続人の年齢)= 障害者控除額

特別障害者 : 20万円 × (85歳 - その相続人の年齢)= 障害者控除額

②. 未成年者控除

10万円 × (20歳 - その相続人の年齢)= 未成年者控除額

相似相続控除
ある一定の期間内に立て続けに相続が発生することを相次相続といいます。
例えば、父が亡くなり母が遺産を相続し、すぐに母が亡くなったケースです。相続が発生する度に相続税が課されることになりますので、短い期間に同じ財産に対して再び相続税が課税されることになります。この二重課税による税負担を防ぐために、短期間に相次いで相続が発生した場合にはこの相次相続控除が適用されます。
この場合の短期間とは、具体的には10年以内に続けて相続が発生した場合のことを言います。

1. 相次相続控除の計算

  • A:今回の被相続人が前回の相続時に取得した財産に課された相続税額
  • B:今回の被相続人が前回の相続時に取得した財産の価額
  • C:今回の相続により相続人と受遺者が取得した財産の総額
  • D:今回の相続でその控除対象者が取得した財産の価額
  • E:前回の相続から今回の相続までの年数(1年未満は切り捨て)

【適用要件】

  • 1 被相続人の相続人であること
  • 2 その相続の開始前10年以内に開始した相続により被相続人が財産を取得していること
  • 3 その相続の開始前10年以内に開始した財産について、被相続人に対し相続税が課税されたこと

贈与税額控除

直近で贈与していたら「贈与税額控除」

故人が亡くなる3年前以内に、相続人が財産を贈与してもらっていた場合、すでに支払った贈与税の金額が相続税の金額から差し引かれる制度が「贈与税額控除」です。例えば、故人が亡くなる1年前に、故人の子供が1,000万円の贈与を受けたときに、いったん贈与税を納めていたとします。贈与税の金額は「(贈与された金額-基礎控除額)×金額に応じて決められた税率-決められた控除額」で求めます。

図解で分かる!相続税の仕組みがわかる!自分で計算できる相続税計算ガイド
図解で分かる!相続税の仕組みがわかる!自分で計算できる相続税計算ガイド

贈与税率表

図解で分かる!相続税の仕組みがわかる!自分で計算できる相続税計算ガイド
この式で計算すると(1,000万円-基礎控除額110万円)×税率40%-控除額125万円=231万円が贈与税です。231万円を贈与税として、子供がいったん納付します。その後、故人が亡くなったときに5,000万円相続したとします。相続税は、相続した5,000万円に贈与された1000万円をプラスして計算します。ほかに相続人がいない場合、相続税を課税する財産の総額は、相続した財産5,000万円+贈与された財産1,000万円=6,000万円です。この金額をもとに相続税を計算すると(課税する財産の総額6,000万円-基礎控除額3,600万円)×税率15%-控除額50万円=310万円です。この金額からすでに納付した贈与税の金額を差し引くことができます。310万円-贈与税231万円=79万円が、納付する相続税の金額です。贈与された財産の金額は、その財産の相続開始時の金額ではなく、贈与されたときの金額を相続財産にプラスします。贈与税の基礎控除額110万円以下の財産でも、相続税の計算をするときにはプラスされるので注意が必要です。

相続税の2割加算

父母、子、配偶者以外が遺産を取得する場合は相続税額の20%を加算します。具体的に2割加算される対象は下記のとおりです。

  • 兄弟姉妹の相続人
  • 祖父祖母の相続人
  • 遺言等で血のつながりがなく財産をもらう人
  • 遺言等で財産をもらう孫

ちなみに代襲相続によって孫が相続人になる場合は相続する場合には2割加算は適用されません。

※代襲相続
仮に親をA、その子供をB、Bの子供(=Aの孫)をCとします。通常はAが亡くなり、Aの財産をBが相続し、その次にBが亡くなり、Bの財産をCが相続するという流れになることが多くなるでしょう。しかし、家庭によってはAよりもBの方が先に亡くなってしまうこともあります。そのような場合にCがBに代わってAの財産を相続できるというのが「代襲相続」です。なお、この場合のBのことを「被代襲者」Cのことを「代襲者(代襲相続人)」とよびます。

相続時精算課税

生前に相続時精算課税制度を活用して贈与を行った場合には、生前に贈与してもらった財産を相続時に持ち戻し、相続財産に含めて相続税を計算していきます。

※相続時精算課税

相続時精算課税制度とは、相続が発生する前(つまり財産を残す人が生きている間)に贈与の形で財産を渡しておくことにより、財産の分配をよりスムーズに行う方法のことです。
具体的には、贈与を行なった時に「この贈与は相続時精算課税制度の対象となる贈与ですよ」と税務署に届出を行なっておくだけで、2500万円までの贈与であれば贈与税は非課税としてもらうことができるのです。

参考:相続時精算課税制度のメリット・デメリット

 

その他参考記事
相続税が支払えない!物納や延納とは?
相続税の申告期限と納付期限はいつまで?

参考:相続に関する基礎知識を図解で分かりやすく解説!

6 相続税シミュレーション

こちらで相続税をシミュレーションできます

 

相続税簡単計算

相続人人数と財産額を入れるだけで簡単にシミュレーションできます!

ステップ1法定相続人の入力

配偶者の有無
子供

ステップ2財産額の入力

合計額
万円

(入力例)1億3千万円の場合"13000"とご入力ください。

※当シミュレーションは、各法定相続人が法定相続分で相続するものとして算出した概算の相続税額を表示します。参考数値としてお考えください。
※Javascriptを利用しています。ご利用環境における動作の保証は致しかねます。
※平成27年1月1日以降の税制に基づき計算しております。
※当シミュレーションはあくまで概算税額の算出です。シミュレーション結果を利用したことで生じた不利益や損害等に関しましては、弊社では責任を負いかねますのでご了承ください。

相続税の概算計算をしてもらいたい 相続税の概要計算を無料で行えます。 無料概要計算はこちらから

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