(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年12月29日付)

モバイク躍進、シェア自転車として初めて「ブランドランキング」上位に

中国・上海にあるモバイクがテーマのレストラン前(2017年4月13日撮影、資料写真)。(c)CNS/王岡〔AFPBB News

 新しいレコードアルバムの包装を破るときの音、新車の匂い、新しく購入した住宅の玄関を開けるときのわくわくした気持ち。そういったものを読者は覚えているだろうか。

 筆者の場合、そうした音や匂いは人生のいろいろな段階において、モノを所有する喜びを象徴していた。これらを通じて、これは自分のものなのだと実感していた。

 筆者の十代の子供たちやその友人たちは、そういうふうには考えない。

 彼らなら、DVDを買ったりインターネットで数曲をダウンロード購入したりするよりも、スポティファイやネットフリックスに毎月決まった金額を支払い、膨大な量のコンテンツから好きな音楽や動画を選んでオンライン再生することの方を好むだろう。

 このストリーミングという技術の背後には、音楽や動画にはとどまらない幅広い産業をひっくり返す恐れを秘めたトレンドが控えている。

 高度な技術を基盤とする企業グループは今、教科書からパーティードレス、さらには住宅や移動手段に至るありとあらゆるモノに対するアプローチを変えるよう消費者に働きかけているのだ。

 変化は様々な分野で生じている。プラットフォームアプリケーションは、モノやサービス――自転車、余っている寝室、さらには太陽光エネルギーまで――の所有者を多数の潜在的な利用者と結びつけている。

 衣料品の小売店や自動車メーカーを含め、これまで製品を売ることに特化してきた企業も、今ではサブスクリプション(注1=一定額の利用料を受け取って、製品やサービスの利用を一定期間許可する方式のこと)やレンタルの可能性を探っている。

 こうしたサービスの成長は、消費者が所有権よりも利用できる権利を、資産よりも体験を評価する時代に入りつつあることを示唆している。