架空の犬と嘘をつく猫

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

2018年は今のところ、単行本が2冊出る予定です。1月発売の『飛ぶ教室』52号に「秘密結社園芸クラブ」という短編が掲載されるのと、2月に『ミナトホテルの裏庭には』が文庫となって発売されるのが今のところ決まっています。新たな連載などもはじまる予定です。

こらえ性がないので、長編を書きはじめるとはやく終わらせたくて焦って焦って駆け足で書いてしまい、結果的にぜんぜんおもしろくない話を渡してしまうということがよくあるので、「もうすこし落ち着いてじっくり小説を書きましょう」というのが2018年の目標です。あと15年ぐらい前に1万円ぐらいで買って毎年着続けているせいで袖がぼろぼろになっているコートをいい加減捨てたいです。大掃除で捨てろよ。

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架空の犬と嘘をつく猫|単行本|中央公論新社

 

昨年12月21日ぐらいに『架空の犬と嘘をつく猫』という本が出ました。ことしは戌年なので、みんな買ったらいいと思います。装画は北澤平祐さん、装幀は鈴木久美さんで、手にとった瞬間すてき過ぎて「ホゥ! プホウゥ!」的な奇声を発しちゃうこと確実な仕上がりになっております。書店で買う時は気をつけなはれや。

ざっくり言うと男の子が中年になるまでのお話です。ぜんぜん感動的な話じゃないのに、帯の裏に「感動作品」とちっちゃく書いてあったので、あわわ、と思いました。

 

デビューした直後ぐらいに、本の感想をこそっとツイッターのDMで伝えてくれた人がいて、その人は「自分は世の中の、何の役にも立てていないと思って落ちこんでいた時期に読めたのでよかったです」と言っていました。

その人とは別に、同じくツイッターで「社会の役に立っていないことがつらい」とよくつぶいている人がいて、なんとなくずっとひっかかっていました。役に立つ、ってなんなんだろうなあ、と思っていた。

何かの、誰かの役に立たないと、私たちはだめなんだろうか。ひけめを感じて生きていかなきゃいけないんだろうか。いやそんなことはないんじゃないでしょうか、私たちは当たり前に、生きていく権利がありますよね、と言いたかった、それが『架空の犬と嘘をつく猫』という小説を書いた理由のひとつです。

もし「役に立つものしかこの世に存在してはならない」としたら、窮屈ですよね、それってすごく余裕のない世界ですよね、ということを登場人物のひとりであるおばあちゃんに言わせているのですが、それはそのまま、私自身の気持ちです。というわけで、多くの人に届きますように。