偏差値ばかり愛する「教育後進国」の淡い末路

海外の先進国にフィンランドの事例も

なぜ日本の教育は長い間、変われないのでしょうか。(写真:msv / PIXTA)
教育問題はいつの時代にも語られてきました。一国の未来を考える上で、教育は極めて重要です。『偏差値好きな教育”後進国”ニッポン』の著者である池上彰氏と増田ユリヤ氏がニッポンの教育を話し合います。

日本の教育は成功? 失敗?

池上:日本の小学校から高校までの教育内容の骨子を定める学習指導要領の改訂が2017年の3月に公示されました。「伝統や文化に関する教育の充実」、「道徳教育の充実」が謳われ、例えば中学校の保健体育の授業では銃剣道が選択肢として明記されました。現行の学習指導要領でも武道の中で銃剣道を教えることはできます。しかし今回あえてそれを明記した。

武道の必修化にともなって、中学校では武道場の整備がずっと進められています。校舎の耐震化の方をもっと優先すべきような気がするのですが。こういうところにも文部科学省(文科省)の忖度が働いているのかと勘ぐりたくもなる動きですが、日本の教育はなかなか変化しませんね。

増田:文科省から大学への天下りが問題になったりもしました。学校が文科省の意向を受け入れ易い下地はずっとあります。

池上:文科省は、「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」、要はアクティブ・ラーニングを進めたいようなことを言っているけれど、それもあまり進んでいきませんね。

増田:たとえば、さまざまな危機を乗り越えるために、なかなか答えの出ない問題をどう考えるかを課題にしている授業がフィンランドでは行われています。要するに教科書の教科を越えるような学びをしていく。つまり学んだことと現実の生活とのつながりを考えながら学ぶといったことなのですが、日本ではそういった授業ができているかというと、相変わらずあまりうまくいっていないですね。

池上:日本では「総合的な学習の時間」が、自分で課題を見つけて考え、解決していくことを目標に打ち出しています。ただ個々の授業では成功している例もあるのだろうけれど、「総合的な学習の時間」が、基礎的な学科の授業時間を削っているなどともいわれ、学力低下の一因にされたりしていました。

増田:日本の教育は、教科をなんでもプログラム化してきっちり教えます。そしてそれが今の日本をつくり上げたとも言えるのです。日本に住む多くの人たちの平均的な学力を上げてきたわけですから。だから一概にどちらがいいとか悪いとは言えませんが、教育の向きにも得手不得手はあります。

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  • 育客4eaa8a1e275b
    現在の教育システムが現状に即したものではないというのはそうだろう。
    「学力」というもの自体も大学教授になりたい人と板前になりたい人では必要な学習内容からして異なる。板前になりたければ早ければ小中学生の頃から修業した方が18の頃には一人前に店を切り盛り出来るようになる。
    浅田真央や羽生善治はまさにそれで専門分野を幼少期から専門的に学んだから世界で活躍できる能力に育ったと言える。
    官僚や医者、各種スポーツ選手や文化人など今思えば優れた人は皆幼少期から専門分野に触れていたように思う。
    同じ教室で同じ時間に同じ教科書で同じ先生が教えるという明治教育システムは教えられている側が同じレベルであれば実に効果的だろう。庶民のレベルが等しく低かった明治と焼け野原になった昭和ではその効果を遺憾なく発揮した。
    しかし今日本は先進国で発展途上時代の教育システムではうまくいくはずが無い。
    up11
    down2
    2018/1/4 09:31
  • NO NAME5fa2acaf6f00
    結局、少数精鋭主義で中間層のレベルアップとアッパー底辺の引き上げやるしかないんじゃないかと思う。
    そうして全体の生活水準を上げて、少数の底辺、落ちこぼれは全員で面倒見る。

    もう現在の現役世代への実施は無理。そこで親の能力や実績と子供の能力にはそれほど強い相関があるわけでもないようだから、10歳くらいを目安に徹底した、専門および総合的な適正チェックと能力開発するシステムを構築する。

    ドイツやフランスなんかのように15歳くらいで基本的な進路を決定させる。
    教育が重要だけど現在の教師に丸投げしてもうまくいくはずないので、やはりシステム設計が重要になる。

    個体差を目立たなくするような教育方針(ゆとり教育)では無く、互いの能力を認め合うという姿勢をいかに植え付けていくかが大事。


    up6
    down1
    2018/1/4 10:30
  • 育客24eaa8a1e275b
    経済的に余裕が生まれれば親は子供に習い事をさせたり本を買い与えたりする。学校以外で学習の場が出来た今日、同じ年齢であっても実力にばらつきが出るのは至極当然の事で「教育」という考え方が明治期のままでは優秀な人間を腐らせるだけである。因数分解が解る子と分数が解らない子が同じ教室で同じ教科書で同じ時間に学んでいるのだから因数分解がわかる子にとってはその算数の時間は無駄以外の何者でも無い。
    教育の分野でも分類化を行うべきでは無いだろうか。「クラス」というものはあっても良いと思うが受ける授業は実力別にすべきという事である。現在の「学校」というもの自体の運用方法を変えるべきだろう。「同じ教室で切磋琢磨」というのは実に日本に即していると思うが同じレベル出なければ切磋琢磨のしようがない。フィンランドのようにバラバラでは日本ではうまく行かないだろう。
    up5
    down2
    2018/1/4 09:50
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