江川卓氏

写真拡大

 元プロ野球・広島の石渕国博氏(62)が3日放送のTBS系「消えた天才 一流アスリートが勝てなかった人大追跡」に出演し、作新学院の怪物・江川卓(62)から放った本塁打の“真相”を明かした。

 高校時代の江川は公式戦44試合でノーヒットノーラン9回、うち完全試合2回を記録。同世代のライバルだったミスタータイガース・掛布雅之氏(62)をして「大谷(翔平=23)が162キロ出すといってもバットに当たるでしょ。江川の球は当たらなかった。打てる自信は0%」というほどのすごさだった。高校時代にバッテリーを組んでいた捕手を務めた衆院議員の亀岡偉民氏(62)は「一番すごかったのは2年生の秋。バットにかするだけで歓声が上がった」と証言した。

 公式戦の被本塁打ゼロの怪物・江川だが、高校3年の秋に練習試合で唯一の本塁打を浴びた。亀岡氏は「完全なホームランでした」と証言。掛布氏は「天才でしょうね」と称えた。

 その天才バッターは宮崎実業の石渕。5番打者は江川のストレートを完璧に捉え左翼席に放り込んだ。引き分けに持ち込んだ2ランは大ニュースになり、無名だった石渕氏は一躍全国区の選手となった。これがきっかけになり、広島がドラフト7位で指名。一般的なサラリーマンの倍の給料と終身雇用という好条件での社会人野球入りが内定していたが「プロより上はない。一回やってみたい」とプロの道を選んだ。

 番組の直撃を受けた石渕氏は、当時を振り返り「(江川の球を外野まで打ち返せるはずがないと)レフトがサードとショートの間にいるんですよ。なめられているという感覚はありました。ストレートにヤマを張るしかない。私が振ったところに江川が投げてくれた。交通事故みたいなものですよ」と奇跡の一発は偶然の出来事だったと解説した。

 石渕氏はプロ入りしたが「プロのアマチュアの球は全然違う。もう無理やろと自分で感じた」と、一度も一軍出場することなく3年で引退した。一本のホームランが人生を変え、野球を奪ったのだ。

 引退後、地元で建設業を営む石渕氏は、プロ野球を選択したのは正しかったと思いますかの質問に「正しかったと思います」と答えた。さらに「若いときは少し、あのときこうだったらとか考えたが、プロ野球に行かせてもらって経験できた面の方が強いかな。納得はしてます。江川がいたからこそ、俺がそれを打ったからこそ、そこまでの経験ができた」と続けた。「(江川が)人生を変えてくれたと思いますよ」と納得の表情で締めくくった。