何気なく「悩みとか無いんですか?」と聞いたら
「強いて言えば、寿命が短いことですかね」と返ってきた。
聞いてみると、タコという種族は長くても3年生きられればいい方だということだった。
「だからいまを生きるっていうか、刹那的な生き方してるヤツが多いですよ。俺も、もう2歳過ぎてるんで、いつ寿命が来るか分からないんですよね。」
と言っていた。あまり深刻そうな感じではないのが不思議だったが、タコの世界ではそれが普通なのだから、彼らなりに納得しているところがあるのだろうと思った。
「今度一緒にランチ行きません?オススメのイタリアンを知ってるんです。」
いきなりそう言われて、困ってしまった。私はこういうお誘いには慣れていないのである。
初めのうちは断るつもりでいた。
と聞いたところ「イカスミパスタです」と返ってきたので、俄然興味が湧いた。
私はイカスミパスタを親の仇のように食べるタコを想像した。これは会うしかないと思った。
「じゃあ来月、とても楽しみにしてますね!」
私はタコに返事をした。
ふと、はたして一ヶ月後もこのタコは生きているのだろうか、という疑問が頭に浮かんだ。
もう長くないと自分で言っていたし、その間に寿命がくる可能性もあるのではないか。
そうなると悲しいと思った。
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