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虫歯になっても、神経は絶対に抜いてはいけない

現役歯科医が実名で警告 
週刊現代 プロフィール

治療の初っ端で歯を削ってしまったことにより虫歯が悪化、そのことで神経を抜かざるを得なくなり、さらには抜歯を選択しなければならなくなる――治療の「最初の一歩」を間違えてしまったがために、口のなかがボロボロになってしまう可能性があるのだ。

「すでに歯を削っている人も『もうダメだ』と諦めず、状況に合わせてベストを尽くすことが大切です。これ以上は歯を削らず、口のなかの環境を根本的に改善する努力をしてください」(小峰氏)

それでは、歯を削らずにどうやって治療をすればいいのだろうか。

現在は、いくつも新しい治療が開発されている。

●ドックベスト療法

前出の小峰氏が勧めるのが、この治療法である。歯の自然治癒力を生かした方法だ。

「人間の歯は、歯髄や唾液からミネラルを供給されることによって、一度虫歯になった後でも『再石灰化』が進み、治癒する傾向がある。つまり、歯には自然治癒力があるのです。

30代の男性の患者さんのケースですが、奥歯に小さな虫歯を見つけた際、削らずに様子を見たことがありました。1年後に再びその歯を調べてみると、虫歯がきれいに治っていました。

医師は、虫歯菌を死滅させ、後は歯の自然治癒力に任せればいいのです。ドックベスト療法は、銅2%、鉄1%、そして複数のミネラルが含まれた『ドックベストセメント』という薬を患部に詰めて虫歯菌を死滅させ、歯の自然治癒力を促しつつ、その働きに任せる方法です。

無理に削るよりも効果的で簡単。これまで、2000人以上がこの方法を試して治療に成功しています」

削りたがる歯科医がいる

●ヒールオゾン治療

塩素の7倍と言われるオゾンの殺菌力で虫歯菌を殺菌する方法で、初期の虫歯であれば、まったく削ることなく治療することができる。

●レーザー治療

虫歯の菌をレーザーで焼くことによって歯を治療する方法。歯周病の治療にも用いられており、歯と歯肉の間にできた「歯周ポケット」の隙間に潜む歯周病菌を焼き殺すことができる。

●シュガーコントロール

虫歯と並んで、人が歯を失う要因となるのが、歯周病である。
歯垢についた歯周病菌が、歯を取り囲む歯肉や歯槽骨を侵し、破壊する病気だ。悪化すると、歯茎が熟れたトマトのようになる「歯槽膿漏」になり、歯はグラグラに。ひどい場合には抜歯を余儀なくされる。

しかし、歯周病についても、外科的な療法を行う前に、自然治癒力によって症状を改善させることが、治療の常識となりつつある。前出の小峰氏が解説する。

「歯周病は、体質を改善することによって治療できることがわかっています。具体的には、炭水化物を控えること。歯周病は、高血糖状態によって歯肉の血管が傷つけられて発症するという側面があるからです。炭水化物を控えれば、歯につく歯垢を減らすこともできます。

やや極端な例ですが、歯周病でうちの医院を訪れた58歳の男性の患者さんは、朝食、昼食にごはんを2杯ずつ食べ、体重が120kgを超えているという方でした。そこで、炭水化物(糖質)を減らしたところ、歯周病が改善されました」

 

歯を削らずに済む治療法はこれだけある。ところが歯科医のなかには、自分たちの儲けのために、こうした方法をまったく紹介することなく、患者の歯を削る人々がいる。

「現在の医療保険制度では、虫歯を削れば歯科医の収入になるけれど、何もしなければ収入になりません。そのため、治療の必要のない歯でも削ってしまう歯科医はいます。

私も以前、週末だけアルバイトにいった病院で、『時給分は削ってください』と面と向かって指示されたこともあります。もちろんそんなことはしませんでしたが……」(前出・池村氏)

歯科医のカネ儲けや間違った知識のために、歯を削る→抜歯となってしまった場合、健康が害されるのは、口のなかだけにとどまらない。

二部では、その点を詳しくご紹介しよう。

「週刊現代」2017年11月25日号より