ローマ法王、エルサレムの平和を呼びかける クリスマス演説
ローマ法王フランシスコ1世は25日 、クリスマス恒例のメッセージをバチカンのサン・ピエトロ広場で読み上げ、「エルサレムに平和を」と呼びかけ、イスラエルとパレスチナの対話を求めた。
法王はラテン語で「ローマと全世界へ」を意味する、「ウルビ・エト・オルビ」の演説を行い、イスラエルとパレスチナ双方の「緊張悪化」に言及。「2つの国家が平和的に共存できるよう(中略)交渉を通じた解決策」を実現するよう訴えた。
「この祝祭の日に、エルサレムと聖地全体の平和を主なる神にお願いしましょう」と法王は呼びかけ、「当事者の間で対話再開の意思が広がり、最終的に交渉を通じた解決策を見出せるよう祈ろう。双方が合意する国際的に認められた国境を持つ2つの国が、平和的に共存できる解決策を」期待すると述べた。
法王は演説の中で、シリアやイラク、ベネズエラ、北朝鮮の難民危機や紛争などの喫緊の国際的な問題にも言及した
ドナルド・トランプ米大統領は今月初め、米国はエルサレムをイスラエルの首都と認定すると発表し、国際的な非難を浴びた。
これについて国連総会の緊急特別会合は21日、認定の撤回を米国に求める決議案を圧倒的多数で採択。エルサレムの地位をめぐるいかなる決定も「無効」で、撤回すべきだとする決議だが、法的拘束力はない。
パレスチナ自治政府は東エルサレムを将来のパレスチナ国家の首都にする考えで、各国は現在、大使館をテルアビブに置いている。
エルサレムを首都認定するのは米国だけか
中米グアテマラはトランプ氏の宣言を受け、大使館をエルサレムに移す方針を明らかにした。
グアテマラは21日の国連総会で、米国、イスラエル、ホンジュラス、マーシャル諸島、ミクロネシア、ナウル、パラオ、トーゴとともに決議案に反対した。
一方で、128カ国が決議案に賛成し米国を批判。その他は棄権した。
なぜエルサレムはそれほど重要なのか
エルサレムには、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教にとっての聖地がある。キリストの生涯において重要な位置を占めているため、キリスト教にとっても最も神聖な場所の一つだ。
エルサレムの地位は、イスラエルとパレスチナの対立の核心に関わる。
エルサレムは1949年の第1次中東戦争の休戦協定で、イスラエルとヨルダンが東西に分割統治。一旦ヨルダン領となった東エルサレムを、イスラエルは1967年の第3次中東戦争(6日戦争)で占領し、エルサレム全体を「永遠かつ不可分」な首都と位置付けている。
一方で、パレスチナ自治政府は東エルサレムが将来樹立されるパレスチナ国の首都となると主張。イスラエルとパレスチナ自治政府を相互承認した1993年のオスロ合意では、エルサレムの最終的地位は和平交渉の中で協議していくと保留された。
イスラエルはエルサレム全体への不可分な主権を主張しているが、国際社会がこれを正式に承認したことはなく、各国の大使館はいずれもテルアビブにある。ただし、トランプ氏は米国大使館のエルサレム移設手続きを開始するよう、すでに国務省に指示している。
イスラエルは1967年以降、東エルサレムに多数のユダヤ人入植地を建設。現在は約20万人が居住している。これらの入植地は国際法上、違法だと見なされているが、イスラエルは反論している。