身長167cm、体重は56.5kg。やあ!僕ケンゴロウ。
と話したりはしないが、その身のこなしは人間とそっくりだ。
東京大学情報システム工学研究室(JSK)の浅野悠紀氏が開発したヒューマノイドロボット「ケンゴロウ(Kengoro)」は、人体の動きをただ模倣するのではなく、その動きを生み出す仕組みを模倣したロボットだ。
骨格構造や筋肉の配列、関節の可動も人間を模して造られており汗もかく。最近公開された映像では、スムーズな動きで腹筋や腕立て伏せをやってのける。
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Flexibility is the Key to a Good “Workout,” for Human-Resembling Robots
「ケンゴロウ」の特徴はその柔軟性と、力や効率よりも人体構造の再現を重視した設計思想にある。『Science Robotics』に掲載された論文では次のように説明している。
従来のヒューマノイドには、従来の工学、機械学、電子工学、情報科学の理論に基づいて設計されてきたという限界がある。
それとは対照的に、我々が意図するのは、人間のシステムに基づいたヒューマノイドを設計することだ。
すなわち筋骨格構造、感覚神経系、脳の情報処理法といったものを通じて、人間の内部メカニズムのさらに深い理解を得るといった科学的ゴールを目指すことである
この意図を実現するために開発されたのがケンゴロウだ。
ケンゴロウが汗をかく理由
モーターで動くケンゴロウは、長時間連続で動かすと熱を持ってオーバーヒートしてしまう。そこで高い浸透性を持つ多孔質素材フレームを採用したモーターに冷却水を入れ、モーターの温度が上昇すると、人工孔から水が流れ出る仕組みとなっている。
これが人間の汗のような働きをし、熱の放出を速めているのだ。
可能な限り人間を模倣する動きを採用することの重要性
論文によれば、人間の生体構造をそれが便利な部分だけでなく、可能な部分ならすべて模倣することが重要なのだという。
力強い腕に加えて、脊椎が硬くまっすぐで、なおかつ首がなければ、重量物を持ち上げる上では都合がいいだろう。
しかし、それは人間のやり方とは違うものである。仮に人間のような動作が望ましいような状況(人間が行動するために設計された環境など)においては、我々の長所と同時に短所も盛り込まねばならない。
ヒューマノイドロボットの未来
ケンゴロウは筋肉・関節・骨を模したモーターとストラットを備えており、腕立て伏せやカーフレイズといった一般的な運動をこなすことができる。
彼(13歳の日本人の少年がモデル)の動きは、まるで運動の苦手な少年が一生懸命腹筋をしているようでかわいらしい。
興味深く、また当然ながら複雑な試みであるが、その結果は一見の価値がある。その応用可能性も有望だ。
近い将来、人間とロボットが共存していく社会となるかもしれない。その時、人間のように動くロボットは重要性を増していくことだろう。
人間を模倣したヒューマノイドの開発計画は現在進行形である。
ケンゴロウの1世代前にはケンシロウというロボットが開発されていたが、そこからかなりの勢いで進化している。
今後もケンゴロウはますます人間らしく進化することだろう。
References:motherboard / techcrunch / roboticsなど/ translated by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
米国は人型戦闘ロボを目指してるけど、
日本はアシモフが描いた人に仕えるロボットや R.ダニールを目指してるな。
2. 匿名処理班
自分と同じ発想だな。ロボットを構想するに辺りまず人間をベースにする。
人工的な骨格、人工的な筋肉。それらのパフォーマンスを100%人間の性能に近づけることができれば、人間と同じ運動能力を得られる。力を人間以上にするのはそこから。