100年前の日本人が「全員結婚」できた理由

「恋愛結婚」が9割の現代は離婚率も増加

お見合い結婚から恋愛結婚へと移行したことで明らかに変化したことがもうひとつあります。それは離婚の増加です。

もともと江戸時代から明治の初期にかけては、日本は離婚大国でした(過去記事参照。「『夫婦は一生添うべし』が当然ではない理由」)。当時、世界トップレベルの離婚の減少に寄与したのもまた明治民法です。この民法によって、家制度型の婚姻や家父長制度が世間に浸透しはじめ、その頃から日本の離婚率は急激に減少しました。

一時1938年には人口1000人あたりの離婚率0.63という世界でも最も離婚しない国になりました。それがグラフを見てわかるとおり、一転1960年代以降の恋愛結婚の比率の上昇カーブとリンクするように離婚率が上昇しています。

恋愛結婚の夫婦のほうが離婚しやすい

もちろん「恋愛結婚が増えると離婚が増える」という因果関係までは断定できませんが、お見合いで結婚した夫婦より恋愛結婚の夫婦のほうが離婚しやすいというのは興味深いデータです。

このように、明治民法を起点とした「結婚保護政策」は、結果として婚姻数や出生数の増加に加え、離婚の減少をも生みだしたと言っていいと思います。自己選択権のないお見合いや妻を家に縛り付ける家制度、家族のために粉骨砕身働くことが父親・男としての責務という社会規範など、個人レベルで考えるならば不自由な制約が多かったのかもしれませんが、こと結婚の促進に関しては奏功したと言えるでしょう。

「吾人は自由を欲して自由を得た。自由を得た結果、不自由を感じて困っている」とは夏目漱石の言葉です。現代、恋愛や結婚に対して社会的な制約は何もない自由であるにもかかわらず未婚化が進むのは、むしろ自由であるがゆえの不自由さを感じているからではないでしょうか。

ただ、だからといって国家による結婚保護政策に戻すことは非現実的です。皆婚時代を否定はしませんが、冷静に考えれば国民全員が結婚していた状態こそ異常だと考えます。非婚の選択も生涯無子の選択も尊重されるべきですし、一方で結婚したいけどできないという人たちのサポートも必要です。とはいえ、恋愛強者は男女とも3割しかいません。かつてのお見合いや職場縁に代わる新しい出会いのお膳立ての仕組みが必須なのかもしれません。

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  • NO NAME8efc9f99df71
    我々が常識と思っているものも、どこかで作られているんですね。ということは別の常識も作り出せるわけで、そこに希望の光を見出したいですね。
    up189
    down24
    2018/1/2 07:47
  • NO NAMEb2c9a443c1ec
    浮気やDVがあっても夫婦は一生寄り添うものなのでしょうか?
    離婚が悪いことばかり言われているけれどその後の生活が幸せかどうかが大事だと思う。
    up268
    down103
    2018/1/2 07:09
  • 経済面で答えが出てるb0ea849c825e
    経済的な観点からズバリと分析すればいい。結婚して子供を持つことが、過去に比べ、労多く益少なしになったからね。庶民はいつの時代もタフで時代の変化に敏感だ。色々な理論をこねくり回すエッセイが多いけど、経済的な理由に行き着く。ただ人は動物でもあるので子孫を残したいという本能があるから本質が見えにくくなるだけ。卑近な例では独身で親の持家に暮らし、フルタイムの仕事がある人が一番生活に余裕がある。次にダブルインカムだ。子持ちは何処も経済的にはかなりきつそう。余裕のある子持ちの生活って今は本当に一握りでは?誰も貧乏くじは引きたくないよね。
    up167
    down59
    2018/1/2 08:25
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