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「私は三菱につぶされました」…『三菱電機』新入社員パワハラ自殺の真相

「ニクいねぇ!三菱」と女優の杏が微笑むテレビCMでお馴染みの『三菱電機』。就職人気ランキングでも常に上位の総合電機メーカーだが、新入社員パワハラ自殺問題をきっかけに、そのブラックな内情が白日の下に晒された――。 (取材・文/フリージャーナリスト 小石川シンイチ)

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「私は自殺をします。私は三菱につぶされました」「全員の前で公開処刑されました」――。4ページの遺書を残し、昨年11月に自殺したのは、三菱電機に入社したばかりの新入社員の男性(※当時25)だった。男性は大学院で通信技術を研究し、昨年4月に三菱電機に入社して、兵庫県尼崎市にあるソフトウェア開発部署に配属された。「彼が配属されたのはソフト製造のプログラミングをする部署で、全くの門外漢。プログラム言語も大学院で使っていたものとは異なるもので、ゼロからの習得が必要でした」(労働ジャーナリスト)。「分からず質問をしても、『(そんな)質問は受け入れない』と言われました。(逆に答えられない質問を投げつけられ)私にはどうすることもできません。今まで情報をやってこなかった人間にさせる仕事ではないはずです」(※遺書より)。男性が課題を何とか仕上げても、その成果物に対して上司たちは「何これ?」といちゃもんを付け、評価しなかったという。昨年11月15日、男性はぶら下がり健康器をインターネットで注文し、届いたその日の夜に社員寮の自室で真新しい器具にロープをかけて自殺した。遺書は、数式やプログラムのチャート等でびっしりと埋まった大学ノートに記されており、上司や先輩ら3人(※いずれも名指し)によって職場全員の前で激しく非難・嘲笑され、開発費用の過大請求の為に書類改竄を指示された実態等が綴られていた。「家族との別れはつらいですが、人格を否定してくる●●(※上司、遺書では実名)と一緒に働き続けるほうがつらいので私は死を選びます。私を死に追いやった関係者には罰を受けて欲しいです」「三菱は私のことを一生忘れないでほしいです。特に●●は今後も新人を殺す可能性があるので注意が必要です」と遺書は続いた。

三菱電機について少し説明すると、同社は三菱財閥の流れを汲むグループ企業の1つ。1921年に『三菱重工』の電機部門として、『三菱造船』より分離独立する形で設立された。今年3月期の売上高は4兆2386億円、営業利益は2701億円、時価総額は3.6兆円に達し、株式市場では影響力のある銘柄となっている。総合電機大手3社の一角として、『日立製作所』と『東芝』に匹敵する売上を誇り、そのブランド力から理系の就職人気ランキングでも常に上位だったが…。「昨年10月といえば、大手広告代理店・電通の新入社員だった高橋まつりさんが過労自殺(※2015年12月)したことが報道され、大手企業のブラック労働が問題視されていた時期でした。にも拘わらず、三菱電機は碌な対策も打たず、問題を放置したのです。それどころか、今回の問題が白日の下に晒された今年7月には、『上司らが不適切・不合理な指導をしていた事実は無い』と東北地方に住む自殺者の両親に伝えたといいます」(労働ジャーナリスト)。この三菱電機の発言を受け、今年9月に両親は「息子が自殺したのは上司や先輩社員のパワハラや社内苛めが原因」として、三菱電機に対し総額約1億1800万円の損害賠償を求めて、東京地裁に提訴した。ところで何故、今回の自殺問題をマスコミは当初から報じなかったのか? 男性が自殺してから既に1年が経過したが、報道が見られるようになったのはつい最近のことだ。「今年9月に男性のご両親が裁判を起こし、10月に『兵庫労働局尼崎労働基準監督署に労災を申請する』と発表してから漸く、マスコミは報道を始めたのです。これは、第一報をスクープした会員制情報誌“選択”5月号から4ヵ月遅れてのことでした。要するにマスコミは、年間200億円超の宣伝費予算を持つ“広告主タブー”には敢えて触れないようにしていたのでしょう」(同)。今回のパワハラ自殺問題で三菱電機が特に“悪質”と非難されるのは、昨年、ブラック告発があったばかりだからだ。「昨年11月に神奈川県の藤沢労働基準監督署は、三菱電機に勤めていた社員の男性(31)が長時間労働で鬱病になったとして、労災認定しています。しかし三菱電機は、この男性を鬱病による休職期間満了後に解雇したのです」(同)。男性は大学院の博士課程を修了して、2013年に三菱電機に入社。同社の情報技術総合研究所(神奈川県鎌倉市)で、家電等に用いるレーザー技術の研究に携わっていたが、2014年2月は残業時間が月160時間に達し、同年4月に適応障害を発症した。労基署は「発症の3ヵ月前から月100時間を超える残業があった」と認定し、「強い心理的負担がかかっていた」と判断したのだ。因みに、過労死ラインは残業80時間とされている。「男性によれば、連日のように直属の上司から自分の能力を超えた仕事を与えられ、長時間労働が常態化していたようです。2014年1月時点での残業時間は100時間を超えていましたが、“37時間台”と申告させられ、2月には160時間を超えても“59時間30分”としか申告できなかったと聞きます。『研究職はブラックとか言わず、死ぬ気でやれ』『お前の研究者生命を終わらせるのは簡単だ』等と上司からは脅され、公衆の面前で叱責されても直ぐ横にいる部長は見て見ぬふり。男性は、『研究職というイメージからはかけ離れていて、精神論ばかりが飛び交う体育会系の空気だった』と語っています」(同)。

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メーカーの心臓部である研究・開発部門の若い社員を次々と喰い潰す三菱電機だが、同社がこんなブラック企業並みの荒みきった社風になってしまった最大の原因は、1990年代から続いた業績不振である。1990年代後半に半導休事業で大打撃を受けた同社は、1996~1997年度の2年間で半導体部門が累計約1500億円の最終赤字を計上。その影響で、1997年度の連結決算も1000億円を超える巨額最終赤字に陥り、有利子負債は一気に1兆7700億円まで膨らんだ。1999年にはパソコン生産から撤退し、2003年にはDRAM事業(※半導体部門)を『エルピーダメモリ』(※現在の『マイクロンメモリジャパン』)に、同年にはシステムLSI事業も『ルネサステクノロジ』(※現在の『ルネサスエレクトロニクス』)に譲渡。2008年には携帯電話端末事業や洗濯機事業からも撤退し、“選択と集中”を繰り返した。「中でもえげつないのは、半導体部門の大規模なリストラですね。三菱電機の半導体事業を引き継いだエルピーダでしたが、2012年に倒産してマイクロンテクノロジーに買収されました。ルネサスも倒産しかかった為、産業革新機構等に買収され、その際に最大4万8000人いた社員を半分以下の2万1000人に減らすほどの人員整理が行われたのです。ルネサスの経営再建を巡っては、同社の母体企業である三菱電機と産業革新機構との間での従業員の押し付け合いが行われ、見るに堪えない醜いものでしたね」(経営ジャーナリスト)。そういった経緯もあり、三菱電機はコストカットとリスク排除を最優先に置く経営方針に様変わりした。

「どんなに受注額の大きなプロジェクトでも、発注元の予算が確定していなければ受注が見送られるようになりました」(経済誌記者)。「今では、官公庁・企業向けの産業用エレクトロニクス(※主にエレベータや空調設備等)に特化した事業が、売り上げの約8割を占めるようになりました。安定的な収益が得られるBtoB(※法人向け事業)分野に経営資源を集中させた結果、社員は法人向け営業が業務の中心となり、社風の体育会化が加速していったのです」(前出の経営ジャーナリスト)。三菱電機は金銭絡みのトラブルも多い。2012年には、同社が過去40年に亘って防衛省やJAXA(宇宙航空研究開発機構)に過大請求をしていたことが明らかとなった。また2015年には、JR東海のシステム子会社であるジェイアール東海情報システム(JTIS)に4億6000万円の架空発注をしていたことが発覚している。「いずれの事件でも、社員のモラルの低下と社内のコンプライアンス体制の不備が指摘されています。また、こうした事件の背景には経理部の不正があったという話も聞きます。今回自殺した新入社員の男性の遺書でも、三菱電機の不正疑惑を告発していましたからね」(前出の経済誌記者)。遺書には「コンプライアンスに反する行為をさせられました。工数の付け替えです」と告発があったが、三菱電機側は事実を否定している。「マスコミは、こうした闇の部分をあまり報道せず、役員報酬の高さにフォーカスしがちです。上場企業は、年度末の有価証券報告書に1億円以上の報酬を受け取った役員の氏名や報酬額を開示することが義務付けられていますが、2017年3月期は三菱電機から22人が名前を連ねていました。この人数は、上場企業の中で4年連続トップです」(前出の経営ジャーナリスト)。三菱電機は、2014年11月に開いた投資家向け経営戦略説明会で、「2020年度までに連結売上高5兆円以上、営業利益8%以上を目指す」という数値目標を発表した。売上規模は未だ日立製作所(※2017年3月期の売上高9兆1622億円、営業利益5873億円)には及ばないが、営業利益率(6.3%)は同等であることから、十分実現可能な数字と言える。不採算事業を切り捨て、若手社員を使い潰した結果、少なくとも会計上は順調に見える同社だが、三菱グループ全体を見れば不安要素は多い。「燃費不正問題で日産自動車の傘下に入った三菱自動車は大量リストラ中ですし、三菱御三家の1つである三菱重工でも、国産ジェットのMRJが5度に亘る納入延期で債務超過状態。更に、三菱東京UFJ銀行の小山田隆頭取が健康上の理由で、就任から僅か1年あまりで退任したり等、問題が山積みです」(前出の経済誌記者)。日本のGDPの1割を占める企業グループとして、今もなお財界に君臨する三菱。その崩壊も近いのかもしれない。


キャプチャ  2017年12月号掲載

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