2017年12月31日
ブルドックアリの女王アリの主食とは!?
ブルドックアリは以前、女王アリや働きアリが頻繁に産卵して、その卵を幼虫に与えるという変わった習性をご紹介しましたが、今回はさらに驚きの習性をご紹介します。
それは、女王アリの食性についてです。
ブルドックアリの巨大な女王アリ。
この女王アリを観察していると、何も食べないことに気が付きました。
ブルドックアリは口移しによるエサの分け与え行動はしないので、働きアリが女王アリにエサを与えることもありません。
巣の中にある食料と言えば、働きアリが幼虫に与えるために運び込んだ小昆虫です。
働きアリも、この小昆虫を食べることもあるため、女王アリもきっとこれを食べているのだと思ったのです。
しかし、何日観察を続けても、女王アリは巣に運ばれた小昆虫には一切興味がないようで見向きもしません。
他に巣の中にあるもので考えられるものと言えば丸々太った幼虫があります。
ノコギリハリアリの女王アリも、自分の子供である幼虫の体液を吸うことが知られていますので、ブルドックアリにも同じような習性があっても不思議ではありません。
しかし、これも違ったようで、巣の中にたくさんいる幼虫や卵には無関心です。
一体何を食べているのでしょうか?
何も食べていないのに産卵をしている女王アリが不思議でした。
何も食べていないのに産卵が続けられるわけがありません!
絶対に何かを食べていはずです。
そして観察を続けると、ついに女王アリの食料が判明したのです。
右にいる女王アリが、左にいる働きアリの頭部を触角で叩いています。
まるで、他のアリで見られる口移しを要求するような行動なのですが、ブルドックアリは口移しはしません。
女王アリは口移しではなく別のものを要求しているのです。
女王アリに触角で叩かれた働きアリは、腹部を前に曲げ始めました。
この体勢は!?
これは産卵行動です。
毒針が出て、腹部先端が開いてきました。
そして産卵。
女王アリは働きアリが産卵した卵を、アゴではなく直接口で受け取ります。
そして食べます。
ブルドックアリの女王アリの主食は、働きアリの産んだ卵だったのです。
長期間観察を続けていますが、この女王アリは卵以外のものは一切食べていません。
拡大すると、口にある複数のヒゲで上手く卵を固定しながら食べているのが分かります。
それにしても、卵を食べて卵を産んでいるというのも不思議ですね。
女王アリに要求されて、すぐに産卵できる働きアリもすごいです。
ちなみに新女王単独や、働きアリが数匹の初期コロニーの場合は、女王アリもアントサプリなどの甘いエサや、巣に運び込まれた小昆虫も食べます。
しかし働きアリが増えてきて、栄養卵を豊富に食べられるようになると、これらの甘いエサや小昆虫を食べることはなくなり、働きアリが産む栄養卵だけで必要な栄養を摂取できているようです。
ブルドックアリの女王にとって、働きアリの産んだ卵は、すべての栄養が摂取できる完全食のようです。
同じくそ嚢を持たずに、吐き戻しによる口移しをしないパラポネラやトゲオオハリアリなどは、液体の表面張力を利用して巣の中に運び、他の仲間や幼虫にも与えるのですが、ブルドックアリはこの行動はしないため、巣から出ないブルドックアリの女王アリは、蜜などの液体は食べたくても食べることはできません。