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2018-01-01

[]お正月特別企画:2017年心に残る経済書ベスト20発表!!(ベスト10日本人著者全コメント公開) お正月特別企画:2017年心に残る経済書ベスト20発表!!(ベスト10日本人著者全コメント公開)を含むブックマーク Add StarBUNTENtakuchan0024

 明けましておめでとうございます。今年も皆さんのご多幸、ご健勝をお祈りしております。

 2017年でこの経済書ベスト20も5回目を迎えました。ネット(twitterFacebook、メールなど)を経由して毎年100名以上の方々から投票をしていただいています。参加いただいたこと感謝申し上げます。今年も2016年12月から17年11月までに出版された経済書の中から基本三冊を、ハッシュタグをつけて選らんでいただき、投票結果は毎年このブログに掲載してきました。11月下旬から12月中旬まで例年実施。

おひとりの投票ポイントは最大6ポイントになります。1位に3点、2位に2点、3位に1点を与えます。順位が不明のものなどは私の方で適宜配分しています(例:順位不明で二作品投票などは、二著作に2点ずつの配分、1作品だけ投票の場合は3点を付与など)。

『エコノミスト』(毎日新聞社)のような雑誌側の選んだ専門家たちの選択よりも、ネットを通じて多数の方に自由に投票していただいた結果は、価値のあるものと思っています。

昨年までの一位をご紹介します。

2012年第一位 ポール・クルーグマン

    『さっさと不況を終わらせろ』(早川書房

2013年第一位 田中秀臣編著

    『日本経済は復活するか』(藤原書店)

2014年 実施せず

2015年 原田泰

    『ベーシックインカム』(中公新書

2016年 井上智

    『ヘリコプターマネー』(日本経済新聞社)

今年は上位四冊が最終盤まで激しく競いました。また票も多くの著作で分散し、初年度のクルーグマン氏の本のように独走する事態は今年は起きませんでした。特に第一位と第二位は、長年、経済論壇で華々しく活躍をされている尊敬すべきお二人が投票締め切り最終日までもつれました。そして最終日に逆転しての第一位です。

では、今年の第一位をご紹介します!

第一位  飯田泰之

    『マクロ経済学の核心』(光文社新書

また第六位にも『経済学講義』(ちくま新書)が同時入賞。

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著者から投票してくださった方々へ

 業界内で次年度経済論壇のBest Biased Estimaterではないかと噂される「心に 残る経済書ベスト」の第一位に選ばれたとのこと,正直に大きな驚きです.といいますのも,第一位として上げていただきました『マクロ経済学の核心』 (光文社新書,以下『核心』),第六位の『経済学講義』(ちくま新書,以下 『講義』)ともに,私のオリジナルの知見をほとんど含まない,経済学の知見を できる限りそのままの形で伝えることを意図した書籍だからです.残念ながらランキングには入らなかった『これからの地域再生』(晶文社)が選ばれたとして もここまでは驚かなかったことでしょう.

 『核心』は,「何の変哲も無い」「親切すぎず,難解すぎない」マクロ経済学の 教科書を書くことを最優先して執筆しました.近年の経済学のテキストを見る と,計算問題の解き方から多彩な歴史的事例を含んだ「コレ一冊で全部OK」というものと,あまりにも読者の理解を求めない「コレぞ古き悪しき大学の教科書」という古式ゆかしい本に二分されているように感じます.そのなかで、「古き良 き大学の教科書」を書いてみたいというのが本書の執筆動機です.

ちなみに,本書は当初『飯田のミクロ』(光文社新書)の姉妹編として企画され,タイトルも『飯田のマクロ』となる予定でした.しかし,このタイトルでは より現代的で,より親切な入門書を想起させてしまうのでは無いかと思い……あえて手に取りづらいタイトルを選択させていただきました.

このような本を評価いただき,投票いただいた皆様には感謝しかありません.かつて一世を風靡した新古典派総合ケインジアンの思考法の基礎とその現代性を感 じていただければ幸いです.

 一方の『講義』は『核心』とは逆に,徹底的に親切な今風の経済学入門を意図して執筆しております.イメージとしては『講義』は大学の教養科目で非経済学部 の学生に向けて経済学のおもしろさを知ってもらう本,『核心』は経済学部の専 門科目としてはじめて本腰をいれて経済学を学ぶ人への本といったイメージで しょうか.

計量経済学に紙幅を裂いた点が『講義』のこだわりのポイントです.一生に一度しか経済学の講義を受けないという人に,経済学の論理の部分だけを教えると,「経済学は理屈だけの机上の空論のような学問だ」という印象を与えてしまいかねません.あらゆる経済理論はデータの洗礼を受けてこそ価値があるという点を入門の段階で知っておいて欲しいというのが,教師としての強い思いです.

栄えあるランキングに2冊同時に並べていただけること,実に光栄です.昨年ランキング一位を獲得した井上智洋氏はまさに2017年の経済論壇の中心となりまし た.別に注目されなくても良いので,来年の僕が今年の井上先生並に稼げることを祈念して,御礼の言葉に代えさせていただきたいと思います.

著者左、井上智洋氏(右)

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マクロ経済学の核心 (光文社新書)

マクロ経済学の核心 (光文社新書)

第六位の『経済学講義』書影は下記掲載。

第二位 高橋洋一

   『99%の日本人がわかっていない国債の真実 』(あさ出版

また第十位にも『ついにあなたの賃金上昇が始まる! 』(悟空社)がランクイン。

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著者から投票してくださった方々へ

経済書ランキングにおいて、ベスト10の2位と10位に選んでいただき光栄です。

2017年は10冊ほど新著を出しました。ベスト10の2位の『99%の日本人がわかっていない国債の真実』(あさ出版)と10位の『ついにあなたの賃金上昇が始まる! 』(悟空社)は好対照です。

『99%の日本人がわかっていない国債の真実』(あさ出版)は、国債というニッチな分野で長期的な啓蒙書です。私は、旧大蔵省理財局国債課で、企画担当課長補佐をした経験があるので、そのときの国債関係法令の知識や毎週の国債発行入札実務や国債整理基金オペ実務などをベースにした本です。入札や基金オペは、民間金融機関ディーラー国債市場で対等の立場で取引を行います。市場の人々の間隙をついて、年間発行コストを1000億円ほど減少させたというのが、筆者の仕事自慢です(笑)。

民間ディーラーにとっては「イヤな人」だったと思います。また、そのとき、海外の発行当局の人との意見交換も貴重な経験でした。日本の国債整理基金(減債基金)が先進国では既になく化石のような存在であることも知りました。今でも、日本の財政学者が減債基金を金科玉条のように説明するのは全く不勉強です。

 『ついにあなたの賃金上昇が始まる! 』(悟空社)は、10月の総選挙向けの短期的な時事問題を扱っています。10月出版なので、9月初めに原稿はほぼできています。そのとき、10月解散総選挙を予測していたので、なぜ総選挙なのかを書きましたが、出版社はギャンブル過ぎると難色を示しました。当たり前ですね、10月に総選挙がなければ、空振りで本は売れないからです。しかし、校正を進めていくうちに、書いてあることが次々に的中するので、最後は出版社が派手な広告などで逆にギャンブルした本です。小池新党がそのうち失墜するとも予測しています。結果はおかげさまで大当たりでした。これに慢心せずに、今後も予測の精度を高めるように精進します。

このほか、13位に『勇敢な日本経済論 (講談社現代新書) 』(講談社)、14位に『日本を救う最強の経済論』(扶桑社)、17位に『「日経新聞」には絶対に載らない 日本の大正解』(ビジネス社)がランクインしました。私の書いた経済書をほとんど取り上げていただき、読者のかたに御礼申し上げます。

99%の日本人がわかっていない 国債の真実

99%の日本人がわかっていない 国債の真実

第三位 原田泰・片岡剛士・吉松崇(編著)安達誠司・嶋津洋樹・青木大樹・村上尚己・中川藍・宮嵜浩(著)

    『アベノミクスは進化する』(中央経済社

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編著者から投票してくださった皆様へ

吉松崇さんから            

  多くの読者の方々に拙編著『アベノミクスは進化する』にご支持を頂き、誠に光栄に存じます。この本は、執筆者個々人の論文のアンソロジーの形をとっておりますが、あとがきに書きました通り、筆者たちは何度も集まってお互いの論文を批判的に検討し合い、また、アベノミクスに批判的な方々も勉強会にお招きして、そうした方々の論点についても更に再度検討を加える、というように、本の完成までにずいぶんと手間暇をかけました。こうした手続きにより、ある程度の練度は達成できたものと自負しております。執筆者グループは更に勉強会を継続しており、近いうちに、その成果を読者の皆さまにご提供できると思います。ご期待ください。

原田泰さんから            

  2015年の『ベーシックインカム』に引き続き、私の本を推薦していただきまして大変ありがとうございました。今回は編著ですので、執筆の皆様方とともに感謝いたします。

2013年からの大胆な金融緩和政策、リフレ政策によって、雇用、特に若い人の雇用が改善しています。ブラック企業がなくなった訳ではありませんが、状況は改善していると思います。

にもかかわらず、リフレ政策を非難する人は尽きません。このような非難がなぜ誤りなのかを、理論と事実によって示したのが本書です。非難している方々は納得いかないようですが、皆様には説得的と思っていただけたようで感謝しております。リフレ政策は、すべての人の利益となるものです。今や皆リフレ派だと言える世界を目指して、頑張っていきたいと思います。

片岡剛士さんから

アベノミクスは進化する」を推して頂いた皆様、誠にありがとうございました。

本書は原田泰さんの下に集ったエコノミストの皆様と共に、アベノミクスの第一の矢である「大胆な金融緩和政策」への様々な非難を統計と理論に基づき検討したものです。本書をご覧いただくと、「金融岩石理論」の何がどう問題なのかをよく知る事ができるのではないかと存じます。

なお、私が担当した第11章につきましては、新たに得た知見をもとにやや書き換えが必要かなと感じていますが、5年後に自由な立場になりましたら再び書いてみたいと存じます。是非ご期待ください!

アベノミクスは進化する

アベノミクスは進化する

第四位 安達誠司

   『ザ・トランポノミクス』(朝日新聞出版社)

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著者から投票してくださった方々へ

1月10日という年初の発売にも関わらず多くの方に記憶にとどめていただき、本当に感謝いたします。本書はトランプの経済政策の見通しについて考察したものですが、個人的には空間経済学やFTPL的な考えなど、比較的新しい経済学の考え方を援用するという新しいアプローチで書かせていただいた本で、消化し切れていない部分もありますが、個人的には非常に思い入れが深い本です。本書では読者の方に上から目線で情報を提供するというよりも、読者の方と一緒に新しい経済書のあり方を考えるというのが主たる目的でしたが、読者の方におかれましても、マスコミの一方的な報道に踊らされることなく、ご自身で試行錯誤しながら考察するきっかけになれば幸いです。また来年はアベノミクスについて私なりの考えを本にさせていただく予定です。もしよろしければ来年もご購読いただければ幸いです。         

第五位 上念司

   『経済で読み解く織田信長 』(KKベストセラーズ

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著者から投票してくださった方々へ

経済で読み解く臨済宗』じゃなくて、織田信長への熱い一票ありがとうございました。

景気が悪くなると人はやぶれかぶれになって普段は見向きもされない危険な思想に救済を求めます。だから景気を悪くしてはいけない、ましてデフレにしてはいけないというメッセージが込められた本です。ところが、今の日本政府もこの歴史の教訓から何も学んでおりません。唯一分かっているのが総理大臣一人だけ。あとは全員緊縮派。これは困ったものです。一人でも多くの人に歴史の真実が届くことを希望します。今後ともよろしくお願いします。

第六位 飯田泰之

   『経済学講義』(ちくま新書

経済学講義 (ちくま新書1276)

経済学講義 (ちくま新書1276)

第七位 村上尚己

    『日本の正しい未来』(講談社+α新書

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著者から投票してくださった方々へ

刊行一ヶ月未満で多くの方の支持を得られて光栄です。担当編集者からの提案で、近未来小説を冒頭に入れるなど、多くの人に伝わる分かりやすさが、良かったのかもしれません。リフレが普通の政策であることの世間の理解はまだまだなので、今後も頑張って参ります。

第八位 金子洋一

   『デフレ脱却戦記:消費増税をとめろ編』

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著者から投票してくださった方々へ

有名著者が有名出版社から出した経済書を押しのけて、私がほそぼそと自費出版した本を応援してくださったみなさんが大勢いらっしゃったことに心から感謝します。この本は、私と安倍総理、黒田日銀総裁などの方々の消費増税をめぐっての国会審議に、バックグラウンドなどの解説を加えたものです。これまでありそうでなかった企画だと思っています。また、今回の当選(?)をきっかけに続編を書く意欲ももりもりとわいてきました。「デフレ脱却戦記2:日銀貴族を討て!編」(仮題)もご期待ください!今度は金融緩和を取り上げます。悪しき日銀を討て!!

デフレ脱却戦記:消費増税をとめろ編

デフレ脱却戦記:消費増税をとめろ編

第九位 森永卓郎

    『消費税は下げられる! 借金1000兆円の大嘘を暴く』(角川新書

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著者から投票してくださった方々へ

この本は、財政に関する常識を問う本です。批判を覚悟で、厳密な論証を行ったつもりでしたが大手メディアが採り上げてくれることは、ほとんどありませんでした。そんななかで、ランキングに入れていただいたことには、本当に感謝しています。これをきっかけに、一人でも多くの方に読んでいただいて日本財政の真実を知っていただければと思います。

第十位 高橋洋一

   『ついにあなたの賃金上昇が始まる! 』(悟空社)

ついにあなたの賃金上昇が始まる!

ついにあなたの賃金上昇が始まる!

以下、11位から20位まで紹介。

第11位 坂井豊貴

    『ミクロ経済学入門の入門』(岩波新書

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

第12位 鯨岡仁

    『日銀と政治 暗闘の20年史』(朝日新聞出版社)

日銀と政治 暗闘の20年史

日銀と政治 暗闘の20年史

第13位 高橋洋一&ぐっちーさん

    『勇敢な日本経済論』(講談社現代新書

第14位 高橋洋一

   『日本を救う最強の経済論』(扶桑社

日本を救う最強の経済論

日本を救う最強の経済論

第15位 田代毅

   『日本経済 最後の戦略 債務と成長のジレンマを超えて 』(日本経済新聞社)

第16位 デロング&コーエン

   『アメリカ経済政策入門』(みすず書房

第17位 高橋洋一

  『「日経新聞」には絶対に載らない 日本の大正解』(ビジネス社

「日経新聞」には絶対に載らない 日本の大正解

「日経新聞」には絶対に載らない 日本の大正解

第17位 伊藤公一朗

 『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(光文社新書

第17位 上念司

『タダより高いものはない』(イースト新書)

第17位 アデア・ターナー

債務、もしくは悪魔』(日経BP社

以上です! コメント頂戴しました著者のみなさんに感謝申し上げます!

2018年がよい年になりますように! 日本と世界に安寧と繁栄を!