ドローン危険飛行で会社厳重注意
東京の商業施設でドローンに菓子をつり下げて飛行し、子どもたちにつかみ取りをさせていた会社が、墜落や接触事故につながりかねない危険な行為だとして、国土交通省から厳重注意の行政指導を受けていたことがわかりました。
国土交通省などによりますと、ことし4月、東京・八王子市内の商業施設で、ドローンが機体に取り付けた洗濯ばさみに菓子をつり下げて飛行し、来場者につかみ取りをさせていたということです。
NHKが入手した動画には、飛行するドローンの真下に集まった20人ほどの子どもたちが菓子を取ろうと飛びついて、引っ張るたびに機体が上下に大きく揺れる様子が写されています。
飛行を行ったのは、ドローン操縦者の養成スクールを運営する東京の会社で、国土交通省は重さ1キロを超える機体が墜落したり、高速で回転するプロペラに接触したりすると事故につながりかねない危険な行為だとして、27日、この会社に対し厳重注意の行政指導を行いました。
ドローンをめぐっては、先月、岐阜県大垣市のイベント会場で飛行中のドローンが墜落して観客6人がけがをするなど事故やトラブルが相次いでいます。
このため国土交通省は人が集まる場所ではドローンから半径30メートル以上の範囲を立ち入り禁止区域にすることやプロペラの周りのカバー取り付けを義務づけるなど規制を強化する方針です。
ドローンの飛行を行った会社はNHKの取材に対し、「軽い気持ちでこのような飛行を行ってしまい重大な問題だと認識している。二度とこうしたことがないよう社員一同徹底したい」とコメントしています。
今回のドローンの様子は、飛行を行った会社のホームページに動画が掲載されていましたが、現在は削除されています。
NHKが入手した動画では、ドローンは機体の下に物干しハンガーを取り付け、20個ほどの洗濯ばさみでキャンディーような菓子をつり下げた状態で飛行していて、その様子を別のドローンから撮影しています。
飛行の高度は大人の身長より少し高い2メートルほどとみられ、ドローンの真下に集まった20人ほどの子どもたちが、つり下げられた菓子にかわるがわる、勢いよく飛びついています。
そして、子どもたちが菓子を引っ張って取るたびに、機体が上下に大きく揺れているのがわかります。
なかには、赤ちゃんを抱いた母親が菓子に手を伸ばす様子も写っています。
菓子をつり下げたドローンにもカメラが取り付けられていて、その映像では子どもたちが菓子を取るたびに画面が激しく揺れて、機体が不安定になっているのがわかります。
ドローンは、空中撮影やインフラの点検、荷物の配送など、急速に利用の幅が広がっていて、民間機関の調査では、国内のドローン関連ビジネスの市場規模は年間500億円を超え、2020年には1000億円以上になると推計されています。
一方、機体が軽く、風などの影響を受けやすいことや安全面の技術が開発途上にあることなどから、飛行にあたっては墜落など不測の事態への備えが不可欠だと指摘されています。
総理大臣官邸の屋上でドローンが見つかった事件を受けておととし施行された改正航空法では、航空機との接触や事故を防ぐため重さ200グラム以上のドローンについて飛行にさまざまな規制を設けています。
具体的には、都市部の人口密集地や空港の周辺、人が集まる祭りやイベント会場などでの飛行を原則禁じているほか、ドローンからの物の投下や夜間の飛行なども禁止されていて、例外的に飛行する場合には、国の許可や承認が必要です。
ドローンの飛行が可能な地域は国土交通省のホームページなどで公開されています。
今回の飛行では会社側が国から飛行の許可を得ていましたが、人の上を飛行することや機体に物を取り付けることなどは申告しておらず、国土交通省は法令に違反しているとしています。
一方、人が集まる場所での飛行で、どのような安全対策が必要かこれまで明確な基準がなかったことから、国土交通省は来月にも具体的な数値を示して規制を強化する方針です。
具体的には、ドローンの高度が20メートル未満の場合は半径30メートル、50メートル未満では半径40メートルなど、飛行する高さに応じて機体の下に立ち入り禁止区域を設けることなどを義務づけるということです。
また、万が一、人に接触した場合の被害を軽減するため、人が集まる場所で飛行する際はプロペラの周りにカバーを取り付けることも義務づけることにしています。