続きを書こう。
その後、俺と彼女は同棲を始めた。といっても、彼女は彼女の家があったが、そこにはもはや帰らずに、俺の家に同居することになった。
彼女は、東京ヒルトンで調理補助の仕事をしており、俺の家から共に新宿へ向かって出社していた。
彼女との日常は、およそアラフォーとは思えない、まるで二十代の盛りのついた男女の組み合わせのように、激しく、それは動物的でさえもあった。
この時、俺は一抹の不安を覚えはした。あまりにも刹那的すぎる気がしたのだ。
しかし、この時点では、彼女が抱える軽度知的障害や発達障害の数々(うつ、ADHD、自閉症、アスペルガー、LDなどなど)は、俺は全く理解してもいなかった。
彼女は、普通に接している分には、およそ健常者と何も変わらず、それどころか、意志の強い彼女はハキハキと答え、しっかりも者のような印象さえ与えた。
ここに読者諸氏には注目して欲しい。軽度知的障害や発達障害を持っているからといって、普通のコミュニケーションには一見何ら問題はなく、むしろ、意志が強く、時に頑迷であるとさえ思えるということを。
あまりにも情熱的な愛し合い方に、俺は二十歳のころの自分を思い出しつつ、ただその日その日の繰り返しを満喫していた。
そして、後から思うに、この頃が、二人にとって一番幸せだった頃だったのかもしれない。