今年も最後。自分が見た中での展覧会ベスト10を記録しておきます。毎年言っていますが、あくまでも自分が見た中の話なので、見ていないものも多いです。安藤忠雄展行かなかった。怖い絵展も行かなかった。1968年展を勘違いで見逃したのも痛恨事。ミュシャは中国に巡回したら見に行こうと思ってるんですが、いつ巡回するんでしょうか…
今年は西のほうで良い展覧会が多かったし、上海で、アジアの先端都市における現代美術の需要の様を見られたのも興味深かったです。それにしても、去年に比べるとイマイチ、展覧会を見ていない年だったなあ、と。特に、渋い展覧会の見落としが多かったというか。来年はもっといろいろ見たい。
1.京都国立博物館『海北友松』
後年まで、あれを見たかと語り継がれるであろうエポックメイキングな展覧会になるのは間違いない。海北友松の凄さ素晴らしさが全部わかる。最後の最後まで驚かされ続ける構成もパーフェクト、見られて良かった。
2.奈良国立博物館『快慶』
とにかく凄いの一言、よくこれだけの快慶仏を。そしてひたすらに美しい。夜間開館で空いた館内、一体一体の仏像と向き合って、ほぉ、ふぅ、とため息の連続、有難いことこの上無し、出ていない快慶仏は写真で補完していて、とにかく網羅するぞと奈良博の本気を見せられました…。彫刻としての運慶展に対する、信仰としての快慶展と言う対比もよかった。
3.愛知県美術館『長沢芦雪展』
筆の流れ、刷毛の墨の滲みの空間、目で追う快感。犬も虎もずるいほどかわいい。よくぞこれだけ集めてくれましたという、大満足の展覧会ですね。会期が短くてしかも巡回無し、名古屋に来てよかった、と思った。1時間半では駆け足に近かった。
4.東京国立博物館『運慶』
気がついたら会場に3時間半くらいいた。どの角度から眺めても一分の隙もなく魅力的な運慶の彫刻、周りを回ったり、しゃがんだりしながら、延々と眺めてしまう。そしてこれは仏像の展覧会ではなく、彫刻の展覧会であり、奈良の快慶展とは、まったく異質の魅力であった。
5.龍美術館西岸館『タレル展』
上海でみました。展覧会としてこれだけたくさんのタレル作品を、という素晴らしさもあるんだけれど、3000円以上入館料を取る展覧会に、若者が大勢来て、みんなでインスタ映え撮影大会をしているという、上海の現状への驚きもまた大きかった。これはほんと、見に行って良かったと思いました。
6.故宮博物院『品牌故事』
乾隆帝などが、蒐集した宝物を収めるための箱とかなんですが、これがコレクター魂が爆発していて、ミニチュア好きの人とかも垂涎のものばかりですごく良かった…。
7.埼玉県立近代美術館『遠藤利克展』
人がいなくて静かな空間の、隔絶された外界から蝉の声だけが忍び込んでくる。静けさ、蝉の声、目の前の異物。まるで、山奥のアート展に旅した時のような、そんな感覚に陥る。浦和でこんな感覚が味わえるとは。
8.三菱一号館美術館『オルセーのナビ派』
目の前のものを写し取る印象派から脱して、絵画とは平面をいくつかの区画で色で塗り分けたもの、という根底に寄りながら、描く対象の内面を描く。セザンヌの影響の大きさ、まるで塗り絵のようなチェックと猫のボナール、ヴァロットンの静謐、ヴュイヤールの描く内面、どれもこれも、じっくり眺めて入り込んでしまう魅力がある。
9.大阪市立東洋陶磁美術館『台北 國立故宮博物院 北宋汝窯青磁水仙盆』
宋代に汝窯で作られた青磁無紋水仙盆は、ほんとうにキラキラ輝いていて、それでいて透き通るように青い空の色であり。貫入が無く、どこまでも滑らか。貫入はあるけれどさらに美しい空色で輝いているものなど、台北からいっぺんに貸し出された4つ、そして大阪の1つの青磁水仙盆が、狭い空間にぎゅっと並んでいる。その様は、濃密で、本当に幸せそのもの。
10.東京都美術館『杉戸洋 とんぼとのりしろ』
シンプルな色と形の絵画がパーツになり、展示空間に拡がり、建築空間自体の魅力が引き出されて、空間全体が一定のリズムを生み出している。そしてそれがまた、個々のドローイングへも奥行きを与えている。常滑焼のタイルを組み合わせた伽藍も目を引きつつ、空間全体に溶け込んでいる。照明のシェード、壁のテクスチャ、そしてエスカレーターの動きまでもが、作品の一部として存在感を示している。緻密に構成されたインスタレーションは、これだけの力があるものなのか。
企画展としてはトップテンは以上。コレクション展は、横浜美術館と国立近代美術館はいつ行っても充実してましたね。展覧会以外では、大徳寺、東寺、興福寺であらためて国宝攻めにあったのが印象に残ってます。アートイベントでは、今年の横浜トリエンナーレは良かったと思いますよ。BankART、黄金町バザール含めて
ギャラリーで見た中では、飯島モトハル『デカい牛のデカい内臓』が、なんか印象に残ってます
続いて、11~20位までは順不同で
◆京都国立博物館『国宝』
京都国立博物館 特別展『国宝』を見る - 日毎に敵と懶惰に戦う
東寺下賀茂神社から、細見美術館『末法』京都国立博物館『国宝』そして日本シリーズ第6戦 - 日毎に敵と懶惰に戦う
◆サントリー美術館『神の手の玉手箱』
汐留ミュージアム『日本、家の列島』、サントリー美術館『神の宝の玉手箱』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
◆三井記念美術館『地獄絵ワンダーランド』
都美『杉戸洋 とんぼとのりしろ』、やっぱりインディア、埼玉近美『遠藤利克展』、三井記念『地獄絵ワンダーランド』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
◆故宮博物院『国寳的形成』
台北の旅1日目 夜の故宮博物院『国寳的形成』『品牌故事』と夜市ぶらぶら - 日毎に敵と懶惰に戦う
東寺下賀茂神社から、細見美術館『末法』京都国立博物館『国宝』そして日本シリーズ第6戦 - 日毎に敵と懶惰に戦う
◆松涛美術館『三沢厚彦アニマルハウス』
森アーツ『THEドラえもん展』、松涛美術館『三沢厚彦アニマルハウス』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
東京国立近代美術館『熊谷守一 生きるよろこび』とコレクション展、馬子禄牛肉面 - 日毎に敵と懶惰に戦う
赤羽『鮮芋仙』『丸健水産』と、Bunkamura『これぞ暁斎!』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
◆中国美術学院美術館『治水最前線』
杭州へ。中国美術学院美術館と龍井茶畑と美味しいごはん(4日目) - 日毎に敵と懶惰に戦う
金沢文庫『愛された金沢八景』、横須賀美術館、夜のかねよ食堂 - 日毎に敵と懶惰に戦う
引き続き、21~30位までを順不同で
サントリー美術館『コレクターの眼』、国立新美術館『草間彌生 わが永遠の魂』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
『春の京都で楽しむ美術』トークで茶の湯と海北友松の話、高島屋『加山又造展』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
横浜美術館『石内都 肌理と写真』『全部見せます!シュールな作品』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
◆芳澤ガーデンギャラリー『さかざきちはる おしごと展』
芳澤ガーデンギャラリー『さかざきちはる おしごと展』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
◆Bunkamura ザ・ミュージアム『ソール・ライター展』
Bunkamura ザ・ミュージアム『ソール・ライター展』を見る - 日毎に敵と懶惰に戦う
◆東京ステーションギャラリー『パロディ、二重の声』
東京ステーションギャラリー『パロディ、二重の声』を見る - 日毎に敵と懶惰に戦う
◆森アーツセンターギャラリー『THEドラえもん展』
森アーツ『THEドラえもん展』、松涛美術館『三沢厚彦アニマルハウス』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
国立西洋美術館『アルチンボルド展』と、御徒町『羊香味坊』の魅力 - 日毎に敵と懶惰に戦う
◆国立科学博物館『大英自然史博物館展』
国立科学博物館『大英自然史博物館展』と大塚『プルジャダイニング』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
◆森美術館『N・S・ハルシャ』
森美術館『N・S・ハルシャ』、トラりん、三菱一号館美術館『ナビ派』、池袋の河南料理 - 日毎に敵と懶惰に戦う
これ以外にも、サントリー美術館は『小野田直武』『コレクターの眼』『狩野元信』もすべて良かったし、それぞれ11~20位くらいにいれてといて良いのかもと今になって思い、じゃあ順位ってなんなんだろう、となりまして…。
MOA美術館もリニューアル直後に行って非常に強く印象に残っているんですが、なんか、作品と言うか美術館としての印象なのでランキングに入れなかったというか…。
朝倉彫塑館『猫百態』は楽しい展覧会だったし、埼玉県立近代美術館『日本におけるキュビズム』は、この美術館らしらを存分に発揮したよい企画でしたね。
日産アートアワードは、来年にはあのBankARTの空間が無くなってしまうのか、と思うと複雑な想いが去来したのでした。
国立近代美術館『茶碗の中の宇宙』、東京国立博物館『茶の湯』、あるいは出光美術館での茶の湯展もそれぞれの良さはあったんだけれど、なんかこの順位の中に入れずらいというか、東洋陶磁の『イセコレクション』なんかもそうなんだけれど、展覧会として云々というか最近、陶磁器は欲しいですね、みたいな思いが先に立ち。
なんだかんだ言いつつ、今年も素敵な展覧会との出会いはたくさんあったのでした。ありがとうありがとう。
なお、一言言いたい、と特に思った展覧会は、東京オペラシティアートギャラリー『片山正通的百科全書』でした。なんだったんだ、あれは。
去年まではこちらです。