自分の売り場は自分で守る

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ルートセールスをしていると、同業他社のルートマンとか麺会社や冷凍食品会社なんかのルートセールスと仲良くなる事がある。

お互い巡回している店が同じだからいつも同じタイミングで会う。

あれこの店でシマダヤさんに会うと言う事は、俺今日配達遅れているな?とか会社に帰って同僚と話していると、お前のコースもマルシンハンバーグあの担当?同じ人だな、なんて話していた。

俺も自分のコース内の他の会社のルート営業と仲良くなった

その頃に当時結構大きなスーパーの担当者さんが色々目を掛けてくれて最初はなんか、とっつきにくい感じだなて思った。

でもいきなり大量注文もらってコーンポタージュ50ケースとかで通路ど真ん中の平台の場所をもらって大量陳列した。しばらくして出入り業者さんとその担当さんを囲んで飲み会のようなものが自然発生し定期的に開かれるようになった。

当時その担当さんと店のレジの子が付き合ってて、その飲み会にも来るようになって結局その担当さんと結婚したんだけどその結婚式には俺も呼ばれててみんなで横浜まで行った、そこに奴も来ていて気まずい思いをした。奴とは当時大手の雪○乳業の営業のおっさんだった。

なぜ気まずい思いをしたのかと言うとこいつとは浅からぬ因縁がある。

さかのぼる事、1年位前かな?年末はほんと今以上に書入れ時でスーパーではクリスマス前に200mlの家庭用のホイップクリームが飛ぶように売れた。

田舎に住んでいて家でお菓子作りなんてしている光景を見たことが無かった俺には、にわかに信じ難かったが実際に売れている。クリスマス前に特売なんてやっていたら出遅れる。

それじゃなくても俺の所属する千葉営業所は全国1このホイップクリームを売る営業所として、その名が知れ渡っていて。12月1日には完全に過積載ではないかと言う位、コンテナの内部全てにうず高くこのホイップクリームを満載したトラックで配達した。

車両が重いとブレーキが利かなくなる。こんな当たり前の事を初めて身をもって知る事となる。

実際に購入するお客さんは12月の24日とかに手作りケーキを作ってホームパーティーという感じだったのだろう。しかし普段から売れている。ホワイトソースやシチューとかを作るときに使っているようだ。なぜ12月1日から特売をして大量陳列しているかというと言わばお客様に刷り込ませる行為だったんだと思う。12月のクリスマスらしい商材として日配品売場を彩り、なおかつ手作りケーキを作る場合はこの店のこの場所でホイップクリームは売られていますよと認識してもらう為に大量に陳列する。

この時はダンボールの形状もかわり面積が広く薄いタイプのものに、商品のトップシールと呼ばれる三角形の部分にプラスチックの口金のついたしぼり袋がサービスとしてついていた。まさにクリスマス商戦に突入していった。

そしてこの結婚式にまで呼んで頂いた担当さんのいる大型食品スーパーの納品口付近でその出来事は起こった。

12月初旬、人間関係も出来ていた俺は件の担当者から、なんなくホイップクリーム50ケースの大量注文を受けていた。本数にして1000本、動向次第でまだまだ追加してやると意気込んでいた。売場に大量に陳列して出し切れなかったホイップをチャンバーと言われる人も入る事の出来るわかりやすく言うとウォークインクローゼットの冷蔵庫版と言ったらいいだろうか、その冷蔵庫に台車から商品を仕舞っているときに声を掛けられた。

「そんなに売れるか?」

確かこんな風に声を掛けられた。当時19歳の俺より遥かに年長というよりはもう完全に世代が違うおっさんの部類に入る人だ。顔はあんま覚えていないけど、スーツ姿で確か眼鏡をかけていた。俺は瞬時にこの会社の偉い人か本部のバイヤーではないかと感じ満面の笑みで「大丈夫ですよ!今野さんからも注文いただきましたし」そうそうその仲の良かった担当さんは今野さんと言って俺より10個位上のお兄さんのような感じだった。なおもその年配の人は「そんなに売れないだろう?残るだろう?」と執拗に責めたててきた。

やばいここで返品を喰らったら今日の目標は達成しない。

そんな心を見透かされないよう精一杯の笑顔で「大丈夫ですよ!クリスマス過ぎて残ったら返品しますから」と言った次の瞬間、耳を疑う一言がこのおっさんの口から発せられた。

「それじゃあ、うちのが入らないからな~」

???え~もしもしどういう事?俺は冷静に聞いてみた。

「すいません。どちら様でしょうか?」

「えっ私は雪○だけど」

その言葉を聞いた瞬間、頭に血の気が上っていくのを感じ理性を失ってしまった。

今は本気で反省している。

「こら!おっさん!てめえ雪○か?このやろう?なめてんのか?」

あんま覚えていないが確か、そんな言葉を浴びせかけたような気がする。

当時雪○は業界1位の本当に大きい企業だった。

多分そんな業界1位のプライドの塊だったエリートビジネスマンかどうかは知らないがそんな環境が同業他社に対して高圧的な態度に出たのだろう。

向こうにしてみたらいい迷惑である。業界一位、超有名企業のスーツを着た営業マンが薄汚い作業着を着た、チンピラに噛み付かれたのだから、多分始末が悪かっただろう。

今も昔もこういう権力を笠にきて高圧的な態度に来る奴には向かっていってしまう。

入社して1年以上が経ち、自分の会社と商品を守る。ある意味、どぶねずみのようだが、企業ソルジャーとしての俺が形成されはじめていたのかもしれない。

まさか雪○の営業さんも、他社メーカーの18や19の若いルート営業マンがこんな愚行にでるとは夢にも思っていなかったはずである。

俺はいい意味でも悪い意味でも大半は悪いほうに作用してしまうが、こういう時に後先考えずにケツを捲くってしまうクセがあった。

もうどうでもいいや!

今は人を使う立場だしよくわかるが、こういう後先考えない奴が一番やっかいだ!

多分かなり興奮して口論となっていたのだろう。ただならぬ空気を感じて人が集まってきた。担当の今野さんも駆けつけてくれ仲裁に入ってくれた。

後先考えない俺はもしかしたらもう少しで手なり足なりを出してしまっていたかもしれない。そうすれば傷害事件だ。今、ここにいないかもしれない。

今野さんがその雪○の営業さんに「私が頼んで発注したものですから」と伝えてくれて、その雪○さんも「そうだよね!これ位売れちゃうよね」と先程とは打って変った大人の対応をしてくれた。

なんか俺は学生時代のケンカと違い、勝ち負けというよりは結局誰が得をしてどこに落としどころがあるのかという事が重要で大人のケンカは最後その矛先をどこに持っていくのか、どう納めるのかが重要である事を学習した。

その後O-157に端を発する人為的一大食中毒事件で雪○という会社そのものがこの世からなくなってしまうなんて俺自身もこの雪○の営業さんもここにいる誰一人として予想できなかったと思う。

それ位、雪○という会社は巨大だった。

今思い出しても自分の素行の悪さには、顔から火が出る思いである。

でも誤解を恐れず言わせて頂ければ当時の私は先輩から受け継いだ売り場を守り自分の商品を守ると本気で思っていて、この頃は無断欠勤、遅刻などもなくなり仕事に対するやりがいも感じていた頃である。

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