配達が出来れば経営が出来る
当時会長はこう言っていた。
当時はなんで配達と経営が関係あるのかと感じていたが、今は正にその通りと感じる事ができる。
当時担当していたルートで、所謂ローカルチェーンと呼ばれ6軒か7軒チェーン展開しているスーパーがあった。そのうちの1軒に失礼だがバーコード頭で目がぎょろっとし出っ歯な店長がいる店があった。
数々の嫌がらせを受けたが、最初は担当の代わりしなで、色々と無理な追加を入れてこられた今日中に商品を持ってこいだの、あきらかな嫌がらせだったが耐えることを学んだ気がする。閉店時間間際に商品を持ってすいません!遅くなりましたと店内に入っていった事も1回や2回じゃなかった。
ある日、その店長がまた無理を言ってきた時に笑いながら「そんなにいじめないでくださいよ!」と自然に口に出た。そうしたら今度は店長が事あるたびに笑いながら「そんないじめないでよ」と笑顔で言ってくるようになり、なぜか無理な追加注文やその他がなくなった。18歳にして「馬には乗ってみよ人には添うてみよ」と言う事を実感した瞬間である。世の中そんなに悪くないなと感じた。
今思えば私の売り場の売れ行きのつかみ方、在庫管理が甘かっただけなのだが
おかげでその後、追加を入れられないよう色々知恵を出し研究した事も覚えている。
高校の卒業式のときに担任の植村先生がはじめて担任を持って送り出すクラスと言う事で感慨深いものがあったのか、自分の担任したクラスを送り出すという学習経験がなかった為か卒業式が終わり最後のホームルームの時にスクールウォーズや金八先生のように一人一人の名前を読んで泣きながら一言づつ言葉を頂いた。
あれは絶対ドラマの影響だと思う。
俺の番になった時にお前はどこに行っても人にかわいがってもらえる。頑張れみたいな事を言われた社会に出てから今日まで上司先輩後輩お得意先の皆さんにすごくお世話になってそして凄く可愛がってもらえた。あの時の一言はあながち間違っていなかったな
今は素直にそう感じる事が出来る。
社会人人生がはじまったばかりのこの頃から既にその片鱗は窺えたように自分の事ながら思い出される。
会社の中でもあの担当者はあの店長は付き合いにくい、やりにくいと言われると逆に闘志が湧いてきてそんな事を言わせない位、そういう人達とは良い関係を築き、その後コース変更があり次の担当者に引き継ぐ時のお前が来ないなら取引をやめるとか、もう商品をとらないとか、お前の後の担当は大変だなとか営業マンにしてみたら究極の殺し文句を数多く頂く事が出来た。最後にはたまには遊びに来いよとか、笑顔で送り出して頂いた。本当に有難い。
その頃こんな得意先もあった。
その地域にドミナント(集中出店)している地元密着型スーパーがあって当時そこの社長は、ほんとヤクザみたいな感じで、いつもダブルのスーツにパンチパーマで茶色いベンツの560SELに乗っていてリアトランクにはその頃流行っていたブーメラン型のアンテナをつけていた。
まさにスーパー経営でアメリカンドリーム?をつかんだ成功者だったのではないか?
その社長の奥さんの弟さんと聞いていた人がある系列店舗で店長をしていた。
最初はもうこの店に行くのが嫌で嫌でしょうがなかったんだけど
向こうもまだ若くて20代前半だったのかな?結構やんちゃでパンチパーマかなんかで、こっちもリーゼント頭で目つきも悪かったから色々目つけられてしまって、実際に出入り業者の中で一番目をつけられていたのではないか?学校で生意気な新入生が入ってきて目つけられるのと同じ感じかな?商品の置き方、値札の貼る位置、口の聞き方なんか徹底的にやられてしまった。
でも自分で言うのもおかしいが、めげなかった。嫌で嫌でしょうがなかったけどなんとか喰らいついて行った。またこの店にひょろひょろの色黒で天然パーマで眼鏡のでかさが際立っている人がいて結構どもる人なんだけど、なんかアジアの友達みたいなキャラでこの人も結構無理難題を言ってきたけど、店長に比べたら楽勝だった。
昔不良をしていた人って人の嫌がることを直感的に察知してそこを責めてくる人が多かった。そして筋だの道理だのを凄く説いてくる。こういう人には絶対言い返しては駄目だ。彼なりの男気であったり筋とかケジメと言われるものに対しては過剰すぎる位の相槌と返事を返す事が一番だ。
今思い出してもこんな事を必死で理解し仕事を潤滑に進めていく術を必死で身につけていこうとする18歳の私を自分の事ながら可愛い奴と感じてしまうのは、やはり自分大好きなのだろうか?
少しずつだが、その店でも信頼を勝ち得てきたなと感じた頃には、そんなに口うるさい事も言われなくなり、俺もこの店に行くのが結構楽しみになっていた。
ある日店長がやっぱり配達って成長するんだな?そんな事を俺につぶやいた
なんですか?聞き返すと
お前最初に来たときと全然違うよな。成長したよな
そう言ってくれた時に、やべ泣きそうだった!
この店はそのチェーン店でも亜流というかほんと個人商店みたいな店だったんだけど、社長の義理の弟と言う事で各メーカーや問屋の担当者がご機嫌伺いみたいにきていた。
そんなある日に俺が売場で商品を品出ししていると店長とどこかのスーツを着た営業マンが話していた四方を見渡す事の出来る狭い店内だから否応なしに俺の耳にも入ってくる。
店長が「いやぁ~うちは業者さんには恵まれてるよ!ほんとよくやってくれて助かってる」
店内には店長とその営業マン以外は俺しかいない。
そんな事を声高に言っていた。これはスーツ姿の営業マンをフィルターとして俺に言ってくれているんだなと理解し嬉しかった。
後日談があってそこのチェーンの本部商談を一時期担当している事があってスーツで、そこの本部に行っている時に件の店長と数年ぶりに会うことができた。
お久しぶりです。というと最初は分からなかったみたいだけど私と分かるとおー久しぶり。
何?今商談担当なの?偉くなったのかと聞かれたのでそんな事はないですと伝えるといや偉くなった。やっぱり偉くなったんだろう?と言ってくれた。
その時に素直に当時は厳しくされて時に理不尽な思いもしたけど良かったな。
鍛えて頂いてありがとうございました。
そう感じた。結局それがお会いした最後で今はどこで何をやられているのか知らないし程なくしてそのチェーンは経営破たんしてしまった。