アイドルグループの新メンバー加入は珍しくはない
アイドルグループへの新メンバー加入は、どんなグループでも賛否両論になるイメージがある。それは誰が加入したとしても。例えば脱退したメンバーの”補充”としての加入だとしても、脱退したメンバーがいた歴史と言うものもあるわけで。
でも多くのアイドルグループが新メンバー加入に否定派がいたとしても、時間とともに受け入れられていくことが多い。
例えば、私立恵比寿中学も中山莉子と小林歌穂が加入した際も賛否両論があった。しかし、すぐに受け入れられたし、今では大切なメンバーになっている。BiSHもそうだ。ハグ・ミィ脱退後に加入したアユニ・Dに対しても賛否両論があった。しかし、お披露目ライブでは「BiSHにかわいい子が入ってきた!」とすぐに受け入れられた。
受け入れられるためにはグループの状況や、新メンバーの努力やや周囲のサポート、ファンの器の大きさやら様々理由が必要になってくる。それが簡単に受け入れられるものか、受け入れることが難しいかも、グループごとに変わってくる。
でんぱ組.incにも新メンバーが加入した
2017年8月に最上もがが脱退した。その後5人で活動を続けるのかと多くのファンは思っていたのではないだろうか。しかし、12月30日の約11か月ぶりのワンマンライブで、新メンバーの加入が発表された。
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ぺろりん先生の愛称で人気の「ベボガ!(虹のコンキスタドール黄組)」の鹿目凛と「虹のコンキスタドール」の根本凪の2人だ。別のグループにも加入しているので、”かけもち”という形で、でんぱ組.incへ加入するらしい。
この2人は元々所属しているグループでは”エース”とも呼べるような人気メンバーで、もしかしたらでんぱ組に入れるだけの能力があるのかもしれない。しかし、この2人が多くのでんぱ組のファンに受け入れられるまでには時間がかかるのではと思う。もしかしたら、受け入れられることはなく、グループ自体からファンが離れてしまうかもしれない。
それはこの2人が悪いというわけではない。きっと誰が加入したとしても同じ反応になっていたと思う。他のグループへの加入ならば、本人たちの努力や時間が解決してくれることかもしれない。しかし、でんぱ組は他のグループとは少しだけ違うのだ。
元々でんぱ組もメンバーの入れ替わりがあるグループだったが、多くの人に受け入れられた時代は6人の時代であり、6人の時代での物語が他のアイドルグループ以上に感動的すぎたのだ。
でんぱ組の物語
でんぱ組は事務所も小さいし、1stアルバムはオリコン圏外だったし、秋葉原の売れない地下アイドルだった。ピンキーこと藤咲彩音と最上もがが加入した当初もそれは同じだったわけで。
それから6人になり『第1回 アイドル横丁杯!!』という来場者の投票で優勝を決めるアイドルイベントに出演し優勝。その後は私立恵比寿中学など他のグループと合同ではあるが全国ツアーを行うなど、活動も活発になった。発売するシングルのオリコン順位も、発売するごとにランクアップしていった。少しずつ注目されファンを増やしていった。
特に6人体制になってから初のワンマンライブでの、古川未鈴が言った「6人で武道館でライブがしたい」という発言から”でんぱ組.incの物語”が面白くなり、感動的になってきたように思う。
その後初の全国ワンマンツアーも成功させ、『W.W.D』は初のオリコンランキングトップ10に入った。『W.W.D』はメンバーの決して明るくはない実体験や過去を元にしたドキュメンタリーソングであった。この曲が多くのリスナーに響き、楽曲だけでなくらメンバーのキャラクターや人間性も知られることになり「6人のでんぱ組.inc」に魅力を感じ応援したいと思うファンが増えた。
そこから飛ぶ鳥を落とす勢いで人気を拡大し、「6人で武道館ライブがしたい」という発言から2年後には武道館ライブを行った。チケットは即日完売だった。
その後も「6人のでんぱ組.inc」の躍進は凄かった。アリーナでライブを行うことは当たり前になり、Mステなどテレビ番組にも出演したり、深夜ながら地上波で冠番組を担当したりと「大人気アイドル」になった。
でんぱ組は「この6人」だからここまで来ることができたと思っているファンも多いと思う。それは6人が必死にもがいて結果を出してきた姿を、ドキュメンタリーのように見てきて応援していた。メンバーも「この6人」であることを大切にしていて、インタビューやライブなどでも発言していたように感じる。
キャラクターも性格もバラバラだったけど、でんぱ組に対する想いはメンバー全員同じで、そこに対する絆はあったのだとファンも思っていた。最上もがは脱退してしまったが、それでも、”残った5人”で活動を続けることを選んで、ここから再スタートさせるのだと思っていた。
しかし、違った。他のグループの所属メンバーが”掛け持ち”という形で2名、新メンバーとしてでんぱ組に加入することになった。
それはでんぱ組の物語にとって突然の出来事だったし、でんぱ組にとって加入する理由となる物語も、その過程となる物語もなかった。あったのかもしれないが、ファンに伝わっていなかった。公式から発表される情報は復活ライブも5人で行うかのような発表だったし、それまでの発言も5人で続けていくかのような発言だった。
物語がなくなり、それまでの物語すら否定するかのような加入方法に対して、でんぱ組自体に冷めてしまうファンや、失望するファンが出てくることは当然なのかもしれない。
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本当に物語はないのか?
しかし、新メンバー加入に関して全く物語がなかったかわけではないと思う。最上もがの最後のステージになった日本武道館公演で、古川未鈴が言った「でんぱ組.incを諦めません」という言葉。これからもでんぱ組.incを続けてもっと大きくなって、もっと多くの人を笑顔にさせるという意味だと自分は捉えている。
諦めないためにはグループとして成長しなければいけないし、挑戦もしなければいけないのかもしれない。
メンバーが1人欠けてしまうことはマイナスな出来事だ。5人で上を目指すこともできたかもしれない。それでもさらに上を目指すためにはメンバーもスタッフや関係者も今までと同じでは駄目だと感じ、挑戦をしなければと思ったのかもしれない。プラスになるかマイナスになるかはまだわからないが、その挑戦の1つが「新メンバー加入」なのかもしれない。
でんぱ組.incを諦めないための賭けとしての挑戦だと考えると、新メンバー加入にも物語があり、必然な事だったのでかもしれない。
新メンバーの加入までの物語
そして、加入する新メンバーにも〝加入するまでに〟物語がなかったわけではないと思う。
ベボガのぺろりん先生も虹コンのねもも、でんぱ組.incに憧れてアイドルになった。根本凪に関しては学校へ行かずに引きこもっていた時期もあった。でんぱ組の物語に共感し、感動して憧れていた部分もあるのかもしれない。
そんなでんぱ組に憧れていた2人がアイドル活動を続けて評価され、憧れの先輩と同じ事務所に所属することになり、憧れのでんぱ組.incに加入することになった。
きっと知らないだけで、この2人にも加入するまでに物語があったし、加入して初ステージまでにも物語があったと思うんです。それはでんぱ組のファンの心にも刺さるものがあるかもしれないし、エモーショナルだと思う。
もしかしたら、この先のでんぱ組を照らす力になってくれるんじゃないかなと思ってます。(あと若くておっぱい大きい)
今更だが、もっと早くこのことをファンに伝えて、理由やそれまでの話をきちんと説明してくれたら受け取り方も違ったのではと思う。
これから物語を作ればいい
あくまで自分の感覚ではあるが、今回の新メンバー加入は否定的なファンが多いように感じる。これを機にでんぱ組の応援を辞めると言うファンもいるようだ。
ある意味、これはでんぱ組.incにとっては逆境かもしれない。最上もが脱退もマイナスだったのに、新メンバーを入れてもマイナス。これはこれで「マイナスからのスタート」かもしれない。
きっと新メンバーも大きなプレッシャーの中でステージに立っただろう。受け入れられないファンもいるだろうし、もしかしたらアンチも付いてしまうかもしれない。
でも、そこからファンにも受け入れられるようになるぐらい素晴らしいパフォーマンスを見せて、今までと同じように活動を続けたら、そこにも物語はあるし、感動的かもしれない。
7人になってパワーアップして、もっと多くの新しいファンも獲得して、もっと人気者になって、もっと大きな会場でライブをしたら、それはそれで感動的かもしれない。
「私はまだまだやりたいことがたくさんあります。もっと大きなところでライブもしたいし、もっといろんなところに行きたいし、もっとテレビとかに出て有名になりたいし。だから私思ったんです。私は何があってもでんぱ組.incを諦めません」
上記は2017年の日本武道館公演での古川未鈴のMCだ。みりんちゃんが「でんぱ組.incを諦めない」と言う限り「諦めない」とはどういうことなのか見せて欲しいし、それを応援したいと思う。自分にとっては、今のでんぱ組に対して唯一の希望となっている言葉だ。
日本武道館公演ではFuture Diverをパフォーマンスする前のMCで、いつもなら「夢で終わらんよ」と言う部分を「夢がはじまるよ」と言っていた。
今はきっとでんぱ組.incの新しい夢が始まったばかりなのだ。昔とは意味合いが違うかもしれないけど、マイナスからのスタートだと思う。
「マイナスからのスタート舐めんな」って気持ちで、でんぱ組.incを諦めない姿をファンにも世間にも見せつけて欲しい。
とは言え
正直、自分もファンとしては今回の新メンバー加入で冷めてしまった部分はある。今後ファンでずっといる自信はない。でも「でんぱ組.incを諦めない」という言葉は信じている。
もしも今のでんぱ組.incにどうしても付いて行けないのならば離れるしかないし、少しでも希望を持っているのならば、もう少し見守っても良いのかなとは思う。
そして、実際にライブを観て、メンバーの姿やパフォーマンスを観なければわからない部分はあるとは思う。そこで伝わってくるものもあるかもしれない。
自分は今日のCOUNTDOWN JAPANで、でんぱ組.incのライブを観る。そこでどのように感じるか、それで決めようと思う。