『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』(喜多村信節作、天保元 [1830] 年刊)という江戸時代の百科事典的な書に「がんばり入道」のことが出ているようなので、読んでみようと思ったのですが、原書を公開している所が見つからなかったので、今回は古い活字本からの紹介です。
くずし字じゃなくて活字だから今回は余裕ですね(笑)
※国会図書館の画像を利用しています。
国立国会図書館デジタルコレクション - 嬉遊笑覧 : 12巻附1巻. 下
147ページ目です。
活字でも古い本のは読みにくいですよねー。。。
なので、現代の活字で書き起こしました。。。
【書き起こし文】
がんばり入道
又小児の諺に除夜に厠にてがつぱり入道ほとゝぎすといへるも厠にほとゝぎすを聞を忌ることよりいひ出しとみゆ
〔好色徒然草〕むさしの国にがんばり入道とかやいふ者のむすこ美男のほまれ有て女あまたいひわたりけれど此男若衆をのみ喰ひ更によねのたぐひをくはざりければかゝることかきたる者俗に有べからずとて親出家させけり
此戯文も諺をとれるかかんばり共いふ眼張にてをそろしけなるものを云ひてほとゝぎすを怖(オト)す意なるべし
【現代語表記】
がんばり入道
また小児の諺[ことわざ]に除夜に厠[かわや]にて「がっぱり入道、ホトトギス」と言えるも、厠にホトトギスを聞くを忌むることより言い出しと見ゆ。
〔好色徒然草〕武蔵の国にがんばり入道とかやいう者の息子、美男の誉れ[ほまれ]有りて、女数多[あまた]言い渡りけれど、この男、若衆のみ喰い、更に娼[よね]の類[たぐい]を喰わざりければ、「かかること欠きたる者、俗に有るべからず」とて親出家させけり。
この戯文も諺を取れるか。「かんばり」とも言う。眼張[がんばり]にて恐ろしげなるものを言いてホトトギスを怖(おど)す意なるべし。
【ざっくり現代語訳】
がんばり入道
また、子供が使うことわざに、「大晦日にトイレで「がっぱり入道、ホトトギス!」と唱える」というのがあります。
これは、トイレでホトトギスの鳴き声を聞くのは縁起が悪い、ということから言い出したことだと思われます。
武蔵の国のがんばり入道という者の息子は、美男子で評判で、女性がたくさん言い寄ってきました。
ところが、この男は若衆だけを抱いて、遊女のたぐいは全く抱かなかったのです。
「男として大事なことが欠けている[子孫を繁栄させることができない]者は、俗世間にいるべきではない」と、がんばり入道は息子を出家させたのでした[僧侶にしたのでした]。
(『好色徒然草』より)
この変な話もことわざを元にしているのでしょうか?
「かんばり」とも言います。
眼張で[目をひん剥いて]恐ろしげな様子の者のことを言って、ホトトギスを脅すということなのでしょう。
【解説】
原書を確認していないので何ともいえませんが、おそらく「がっぱり入道」というのは誤記でしょうね。
『好色徒然草』という作品から引用していますが、この作品が何なのかわかりません。
タイトルからするといかにも浮世草子なのですが、『浮世草子大事典』に記載がありませんでした。
同じタイトルの艶本があるようなのですが、同一の物かどうかは確認できていません。
そのうちもうちょっとちゃんと調べてみます。
内容は男色もからんで興味深いものなので、ぜひ原文を読んでみたいものです。
というか、この話の登場人物、別にがんばり入道って名前にする必要ないですよね?
ここでは「眼張」説を取っていますね。
ちなみに十返舎一九も「眼張」説を取ってお話を書いています。
私の「甲張り」説は分が悪いようです(笑)
本年の更新はこれで最後です!
年明けは新年らしい記事でも書こうと思っていますが、予定は未定です!
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おまけ 『妙なミョウ・ガール』112 「ももんじい」の巻
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