うきよのおはなし~江戸文学紹介ブログ~

江戸文学に少しでも興味を持つ方が増えれば良いなと。

暗い夜 『変化物春遊』より

桜川慈悲成作・歌川豊国画『変化物春遊(ばけものはるあそび)』(寛政五[1793]年刊)を、ちょこちょこ読んでいます♪

f:id:KihiminHamame:20171229214708j:plain

国会図書館の画像を利用しています
国立国会図書館デジタルコレクション - 変化物春遊 : 2巻
12ページ目です。

f:id:KihiminHamame:20171229214755j:plain

f:id:KihiminHamame:20171229214807j:plain

翻刻
わしづか八へい次と◆いへるろうにんありし◆
がそのこまいよおび◆ゆること三四たび◆
にしてよるねづ◆八へい次あまり◆
にじればけものに◆やるなんとておどし◆
いかにもくらきよ◆おもてのとをあけ◆
しやうべんやりて◆いたりけるにその◆
ことゝさまおまへ◆のざとふころし◆
たまいしよは◆こよいのやうに◆
くらかりし◆といへばはつ◆
へいじきもを◆つぶしそのこと◆
なにとてしり◆たるやときけば◆
くらやみに◆さもやせ◆
たるめくら◆たちてわが◆
おしへしと◆なん申ける

【現代語表記】
わしづか八へい次[はつへいじ][鷲塚八平次?]と言える浪人ありしが、
その子、毎夜怯ゆること三・四度にして、夜寝ず。
八へい次、
「あまり躙[にじ]れば、獣[化物?]にやるなん」[?]
とて脅し、いかにも暗き夜、表の戸を開け、小便やりていたりけるに、
その子、
「父様[ととさま]、お前の座頭[盲人の最も低い位。または単に盲人のことを言う]殺し給いし夜は今宵のように暗かりし」
と言えば、八へい次肝を潰し、
「そのこと何とて知りたるや」
と聞けば、
「暗闇にさも痩せたる盲[めくら]立ちて、我が教えし」
となん申しける。

【ざっくり現代語訳】
わしづか八へい次という浪人がいました。
八へい次子供は、近頃、毎晩、何度も怯えて寝ることができませんでした。
あるとても暗い夜に、八へい次は、
「そんなに怯えてばっかりいたら、お前を獣にでもあげちまうぞ!」
と冗談めかして脅かしながら、玄関の戸を開けて、子供にオシッコをさせていました。
すると、子供は、
父様盲人を殺しなさったのは、今日のように暗い夜だったのですね。」
と言うのです。
八へい次はビックリして、
「そのことをどうして知っているのだ!」
と聞くと、子供は、
暗闇にとても痩せた盲人が立っていて、私にそのことを教えてくれたのです。」
と言ったのでした。

【解説】
現代の怪談でも似たような話ありますよね!
ただ、子供盲人の生まれ変わりとかではないので、その分、怖さは和らいでいる気がします。
ここに登場するのは、妖怪というより幽霊ですが、この時代は幽霊化け物の一種と考えられていたようで、鳥山石燕画図百鬼夜行にも幽霊は描かれています。
ちなみに、「座頭殺し」はこの時代によく見られる題材です。
「座頭」は高利貸しを営んでいるものが多く、お金を持っていたので殺されてしまったんでしょうね。

芝居『恋女房染分手綱[こいにょうぼうそめわけたづな]鷲塚八平次[わしづかやへいじ]という悪役が登場するのですが、関係はあるのでしょうか?
ちなみに『恋女房染分手綱』鷲塚八平次写楽の絵にもあります♪

東洲斎写楽画「谷村虎蔵の鷲塚八平次」

f:id:KihiminHamame:20171229214910j:plain

国会図書館の画像を利用しています。
国立国会図書館デジタルコレクション - 写楽
32ページ目です。

 

◆北見花芽のほしい物リストです♪ ご支援よろしくお願いします♪
f:id:KihiminHamame:20171119223122j:plain
◆オススメ書籍
江戸の怪異文学の挿絵解説CD-ROMが収録されています♪
西鶴と浮世草子研究〈第2号〉特集・怪異―闇の叫びを追究する

西鶴と浮世草子研究〈第2号〉特集・怪異―闇の叫びを追究する

 
◆北見花芽 こと きひみハマめ のホームページ♪
f:id:KihiminHamame:20171108164138j:plain
◆下の広告をクリックしていただけたら、ありがたいです♪
はてなIDをお持ちでない方も、拍手で応援していただけたら嬉しいです♪

web拍手 by FC2

 ◆ランキング参加してます♪ ポチしてね♪
にほんブログ村 本ブログ 古典文学へ
にほんブログ村

江戸時代ランキング
◆よろしければ はてブ もお願いします。憧れのホットエントリー(笑)
Add Staroninouta147madatamago
コメントを書く
  • 北見花芽 (id:KihiminHamame)

    KIKU (id:kiku38d) さん
    拙い説明でお粗末さまでした!w

  • KIKU (id:kiku38d)

    差し出がましい真似をしてしまい、ごめんなさい。
    でも、花芽さまに詳しく解説して頂けて本当に嬉しいです!
    ありがとうございます♡


    江戸時代の文学についても、踏み込んだ事情を教えていただき、有難く存じます。
    またひとつ、お勉強させていただきました!!

  • 北見花芽 (id:KihiminHamame)

    KIKU (id:kiku38d) さん

    細かい所まで丁寧にお読みいただいて、ありがとうございます。

    この箇所、書き間違いや誤記があるのかなと思って[?]をつけました。

    私も文法が苦手なので偉そうなことは言えませんが、個人的な見解を述べると、「をば」だと主に名詞に接続するので、単純に接続助詞の「ば」だと思います。
    「なん」も係助詞だとは思いますが、特に後ろに省略されるべき言葉も見あたらないので、単純に強調するためだけに使っていると思います。

    この時代、すでに学校で習うような文法ではなくなっており、かなり乱れて適当になっています。
    江戸時代の文学が教科書にあまり載っていないのはそういう理由もあります。
    なので、私は、文法よりも、前後の流れを重視して訳すようにしています。

  • もっと読む