色彩豊かにライトアップされる牛久大仏(牛久大仏管理事務所提供)

写真拡大 (全3枚)

 「新年早々すっきりする」「こんなにおめでたいカウントダウンは見たことがない」「最強過ぎる」…。

 ここ数年、会員制交流サイト(SNS)で若者を中心に話題を集めている年越しカウントダウンイベントが、茨城県牛久市のランドマーク「牛久大仏」で今年も行われる。若者たちを魅了するその型破りな様子とは…。(水戸支局 上村茉由)

 「南、無、阿、弥、陀、仏!」

 大みそかから1月3日までの4日間、牛久大仏で行われる「修正会(しゅしょうえ)」では、年越しカウントダウンが最高の盛り上がりを見せる。

 12月31日夜、牛久大仏の足下に広がる庭園に、続々と人が押し寄せる。家族連れやカップルなど老若男女が白い息を吐き出しながら見上げるのは、ライトアップされて神々しさを増した高さ120メートルの巨大な大仏様だ。

 大みそかの開園は午後11時。年越しを前に、園内では煩悩の数にちなんで108発限定の「奉納花火」を打ち上げる。1発3千円だが、受け付け開始早々に埋まってしまうという。僧侶による歳末勤行も行われる。

 11時半ごろになると、大仏様を照らすライトは赤や青、黄色などさまざまな色に刻々と変化し、動き回るサーチライトも花を添える。

 カウントダウンは10秒前。特徴的なのはその掛け声だ。

 「10、9、8、7、南、無、阿、弥、陀、仏!」

 来園者も一緒になって声を張り上げ、年が明けた次の瞬間、約1千発の花火が一気に打ち上げられる。ライトアップされた大仏様と、怒濤(どとう)のように上がる花火の共演を見られるのは、全国でもここだけではなかろうか。

 「仏教に親しんでほしい」

 なぜ、このような“型破り”なカウントダウンイベントが始まったのか。

 牛久大仏管理事務所の宮崎弘子さんは「基本からは離れているかもしれないが、宗教をもっと身近に親しんでほしいとの思いから」と説明する。

 カウントダウンの掛け声は、5年ほど前、事業主体である浄土真宗東本願寺派本山、東本願寺(東京)の僧侶が発案したという。特に若者はお経を唱える機会はほとんどない。せめて年に1回くらいは口に出してもらいたい思いがあった。

 花火やライトアップにも宗教的な背景があると宮崎さんは説明する。

 ライトアップは「阿弥陀様が放たれる12の光にちなみ、生きとし生けるものの道しるべとなるように」、花火には「お釈迦様が誕生したとき、空からさまざまな光が舞い降りてきた。この世がその光で満ちあふれ、平和で穏やかになるように」との願いが込められているという。

 2万人が年越し

 牛久大仏への来園者は年間約50万人。28~29年にかけての修正会全体での来園者は約5万8千人で、カウントダウンが行われる12月31日は、午後11時から午前2時までに約2万人が訪れた。

 牛久大仏は阿弥陀如来の「十二光」にちなみ、全長120メートル。世界最大の青銅製立像としてギネス世界記録に登録されている。「手のひらの上に奈良の大仏(像高14・98メートル)が乗る」という驚異の大きさだ。

 牛久大仏は平成4年11月に完成し、5年7月に開園。鎌倉時代に、浄土真宗の開祖、親鸞聖人が常陸国(今の茨城県)を布教の拠点としたことがゆえんで牛久市に作られた。

 3階部分には寺院で本堂にあたるスペースがある。約3400体の「胎内仏」が納められており、毎日朝夕、東本願寺からきた僧侶が読経する。胸部にある展望台は地上85メートルで、茨城県内を一望できる。

 平成29~30年の修正会も12月31日は午後11時に開門する。宮崎さんは「多くの方にお参りしてほしい。仏様の御前であることを意識して、押し合わずマナーを守って楽しんで」と話している。

 31日は午前2時までで、1~3日は午前9時半から午後4時半まで。期間中は大仏内部が3階まで拝観無料となり、写経や書き初めも体験できる。

 〈アクセス〉茨城県牛久市久野町2083。圏央道阿見東ICから車で3分。JR常磐線牛久駅からバスで25分。