社会放射線測定に無人飛行機 名古屋の企業など開発、福島で実用目指す東京電力福島第1原発事故を受け、日本原子力研究開発機構(原子力機構)などが中部地方に拠点を置く航空機設計ベンチャー2社と組み、放射線測定のための無人飛行機を開発した。ヘリコプター型のドローンと比べ速度は15倍、飛行時間は36倍と運用効率が良い。除染範囲設定に向けた詳細なデータ取得が期待され、世界初の実用例として2019年度から福島県への投入を目指す。 (小柳悠志、写真も) 機体は全長約3メートル、幅4メートルで放射線検出器を装備。衛星利用測位システム(GPS)により、あらかじめ設定した航路をプロペラで進む。原子力機構と宇宙航空研究開発機構(JAXA)がAETアビエーション(名古屋市)に一部の設計を委託して開発、17年度からは浜松市で航空機開発を行うコントレイルズ(川崎市)が業務を引き継いだ。 両社には大手重工メーカーやヤマハ発動機で航空機やヘリを設計した技術者がおり、機体の強度計算や翼の厚みの最適化で知見を発揮した。航空機産業の集積地である中部の技術ノウハウが原発事故対応で活用された格好。道路を使って離着陸し、高度150メートルを最大6時間、時速100キロ超で飛行できる。1回の飛行で45平方キロの調査が可能だ。 これまで放射線測定に使ってきた有人ヘリは速度が2倍近いが地上近くでの測定は難しく、操縦士が被ばくする恐れもある。ドローンは時速約7キロ、バッテリーも10分ほどしか持たず、長時間の測定には不向きだ。無人飛行機はこれらの弱点を補う特性があり、人が立ち入りにくい森林の汚染調査にも適している。 強風時の運航など残る課題をクリアした後、福島県で放射線測定を行う原子力規制庁や他の省庁に採用を求めていく構え。製造コストは1機2千万~3千万円を見込む。運用業務は大手重工など航空機メーカーを想定している。 原子力機構福島環境安全センターの真田幸尚氏によると、無人飛行機による放射線測定の研究は欧米でも進んでいるが、実用化はされていない。 (中日新聞)
今、あなたにオススメ
|
|