工学系修士のM1学生、早いけどもう就職が決まった。博士には行かない。修士では、とある先端技術を民製品利用可能にするための低コスト化に関する研究をしている。研究成果はそれなりに認められて、学会で表彰された。
「やろうと思えば誰でもできたこと」
「ただひたすら頑張りました、ってだけだよね?」
と叩くばかり。唯一、指導教官の教授だけは研究の意義を理解し応援してくださっている。
たしかに今やっている研究は理論的新規性が乏しい。説明が難しいが、
ではなく
という感じ。根性さえあれば誰でもできたのかもしれない。
ただ、そういった泥臭い作業をしなかったがために世の中に還元できなかった素晴らしい研究成果というものが大学には星の数ほど眠っている。
昨今「産業界からの要請」で、即戦力となる人材を育てる、みたいなニュースがたくさんあるが、教育内容変えるよりも、こういった眠っている研究成果を一般に届けるための「研究」に力を入れたほうがよほど産業界にも有意義だと思うのだが。
こういった実応用のための泥臭い部分を投げっぱなしにしているから、世間一般から「大学は好き勝手やって金を無駄にしている」みたいなことを言われてしまうのだと思う
研究者は未開の地を探検する探検家であって、研究者が作った地図に沿って道を舗装するのは研究者ではない、という考えがあるのかもしれない。
でも実際には、探検家が持っている専門知識がなければ道を引くことはできない。道を引く前にジャングルで遭難してしまうだけだ。それに道を引くには資金がいる。お金がかかることを企業は嫌う。もしくは道路をひいてから通行料を取るようになるだろう。公的な支援をもらっている大学の研究者が道をひき、無料で開放することは義務であり賞賛されるべきことではないのだろうか。
一応付け加えておくと、純粋に「知の整理」に重きが置かれる分野もあるし、それを軽視するつもりはない。「工学部が実応用を軽視していること」に問題提起しているのである。そもそも、他人の研究内容について、問題点を指摘し改善のためのアドバイスをすることはあっても、ただケチをつけるだけというのが研究者の取る態度なのだろうか。
結局、以上のようなことに嫌気が差して普通の就職を選んだ。そのことを告げると教授はとても残念そうだった。教授はずっとこの研究を応援してくださったので、裏切ってしまったことを非常に申し訳なく思っている。
忘年会で後輩に「なぜ博士行かなかったのですか?」と聞かれたので自分の中で整理したものをまとめた。
M1の冬なんて入ったばっかじゃん。普通に考えたらB4のときの研究をM1で学会に出して表彰されたってことかと思うんだけど、そんな状態で他の研究室の先生から意見がもらえるほど顔が...
他の大学・学科で似たような制度があるかはわかりませんが、私の専攻では全研究室の学生を集めた輪講が週1であり、すべての教員と議論を交わします。全学生が半年に一回発表義務が...
まあどっちの気持ちもわかる 大学内では少数派でも外に出ればお前の方が多数派になるんだから、外部から攻撃したりはしないでやれ