Balancing Competitiveness and Fun
By Will Jonathan // 18 Nov, 2017
https://www.channelfireball.com/articles/balancing-competitiveness-and-fun/
(著者紹介) Will Jonathan

スポーツ心理学者・メンタルパフォーマンス指導者。2000年のインベイジョンからマジックを始める。
クライアントにはPGAツアー(プロゴルフ)、メジャーリーグ、UFC(総合格闘技)、オリンピック選手など様々。世界中の様々な大学スポーツチームとも盛んに協議している。
公式HP:https://willjonathan.com/

今回のテーマはとてもありふれたことです。
いつもどこでも話されていることですが、それは競技志向になるプレイヤーほど見失いがちなことでもあります。

それは、楽しむことです。

より高みを目指すプレイヤーほど、ゲームを楽しむことは徐々に超・競技志向へと移り変わってしまいます。何故でしょう?それは競技性が高まり、プライズが豪華になると、人は楽しむことを止め、試合を『より真剣に』受け止め、なんとしても競技の場で戦い抜くための姿勢になってしまうからです。こうなるとゲームを愚直に楽しむことはなくなります。何故ならそのゲームはもう重大で真剣な勝負なのですから!PPTQも、グランプリも、そしてプロツアーですら、あなたはもう楽しむことなんて考えられなくなります。競技の世界で成功するためには一切の甘えを捨てた容赦のない真剣勝負を挑むべきなのです!

……この考え方は色々な意味で間違っています。

正しくはこう……単純なことです。楽しむことこそが、ベストなプレイをする上でも、成功に近づく上でも、不可欠なことなのです。
あなたがゲームを楽しみ、面白く思うことで、自分の力を最大限に発揮しブレなく勝つことが出来るのです。競技性が高まりプライズが豪華になるほど、楽しむことの重要性はより増していきます。問題なのは、この『楽しむこと』と『競技志向になること』は別のものと考えられがちであるということです。

『楽しむこと』と『競技志向になること』は相反するものである、と考える人は多くいます。どちらか片方は切り捨てなければならない、と考える人も。しかし、実際はそうではありません。少なくとも、片方を切り捨てる必要はありません。それどころか、非常に高い競技のフィールドで戦いながらも同時にゲームを楽しむことが出来る人もいるのです。そう、繰り返しますが、競技性と楽しさの両方を味わうことこそが、あなたのプレイヤースキルを最大限に発揮できる方法なのです。

楽しむこととプレイを疎かにすることは明確に違います。その境界線を理解することはとても大事です。何事もバランスです。どちらか一方に偏るべきではありません。
競技志向と楽しむことのバランスを考えるにあたって、0から10までの範囲をつけて考えてみましょう。"0"ではあなたはただの怠け者です。プレイングを考えることもしなければ適当に呪文をプレイするだけです。しかし、"10"だと逆に競技志向過ぎです。あなたはあらゆるゲームに対し神経を張り詰め、真剣になりすぎてしまいます。ゲームを楽しみながらも競技としての心持ちを併せ持った"5"であるべきでしょう。

もしゲームを楽しむようにすると、よりリラックスした気持ちで落ち着いてプレイすることが出来ます。緊張や重圧、不安などに慣れることは中々容易ではありませんよね。例えばただ笑顔を忘れないようにするだけでも、それはあなたがベストなプレイをするための大きな助けとなってくれます。
微笑むことは神経ペプチドの放出を活性化させ、ストレスや緊張を解消してくれます。 神経ペプチドとはニューロン(神経細胞)同士の情報伝達をつかさどる小さな分子のことです。 神経ペプチドはあなたが幸せや悲しみ、怒りや落ち込み、興奮などを感じた時に全身へその感情を伝達します。 中でも良い感情を伝達するドーパミンやエンドルフィン、セロトニンなどは笑顔によって解放されるのです。 これらはあなたの体をリラックスさせるだけでなく、心拍数や血圧を下げることもしてくれます。

常々言っているのですが、プレイヤーは試合の結果にのみ楽しさを求めようとしすぎなのです。
勝った時はそれはもう楽しくプレイできたことでしょう。逆に負けた時はその試合にはもはや楽しめる要素など何も無かったと……おおっと、早合点しないでください!もちろん勝った時が楽しいのは言うまでもありませんし、負けた試合は勝った試合と同様に楽しめるだなんて言うつもりもありません。それが当たり前です。

私が使った言葉はそういう意味ではありません。勝利自体は楽しいものですし、敗北は楽しくないことです。
私が言いたいのは、勝敗という結果自体が『そのゲームを楽しくプレイできたか』を決める要素であるべきではない、ということです。勝利は楽しむための必要条件ではなく、あくまで楽しむための補助なのです。敗北もまた楽しさを根底から台無しにするものではなく、楽しむことのちょっとした障壁にすぎません。ゲームを楽しみ、モチベーションを高めてくれる要因を試合結果に求めてしまうと、あなたは能動的にゲームを楽しむことが出来なくなってしまいます。何故ならゲームを楽しむためには勝利という特定の状況が必要となるからです。

もしゲームを勝利し、この楽しむための要件を満たした時はそれはもうゲームを楽しんだことでしょう。しかし、負けてしまった時はどうなるのでしょうか?勝利という結果自体を楽しむための条件にしているのであれば、どうやってそのゲームを楽しめるというのでしょう?
自明なことです。それでは楽しむことは出来ませんし、楽しんでプレイすることも出来ません。『あなた自身が決めた』、楽しむための条件が満たされていないからです。試合結果――結果が良かったか、悪かったか――とは、一時的なものにすぎないことを忘れてはいけません。結果の善し悪しでマジックを楽しもうとするならば、そこで得られる楽しさもまた、一時的なものにしかならないのです。

ええ、一時的なものであってはならないでしょう。常に楽しんでいるべきです。つまり、楽しむための要素は試合結果といった外的要因ではなく、ゲーム自体にあるべきなのです。
私自身は、勝っても負けてもいつもマジックを楽しんでいます。どうしてか?それは、私はマジックのデザインがとても大好きだからです。呪文を唱え、クリーチャーで攻撃し、あわよくば相手を倒したりすることが好きなのです。勝つための計算をするのも、プレイングを道筋立てて考えるのも大好きです。これらは勝ち負けに関係なく、マジックをする時は常に存在するものです。

ブラッド・ネルソン氏の記事に「心を強くしよう("Mental Mindset" http://www.starcitygames.com/article/29222_Mental-Mindset.html)」という素晴らしいものがあります。その記事では、ゲームの精神面に関連した話題と、なぜそれらが重要なのかが説明されています。 その内容の1つは楽しむことについてでした。ここに彼の説明をそのまま引用しましょう。
マジックはゲームです。忘れていた人もいるとは思いますが、本当に単なるゲームなんです。グランプリは同じ趣味を持った人々が週末に展示場へ集まった楽しいゲームイベントです。友人同士で近場に集まってワイワイ遊ぶことも出来ます。そこにストレスなんてあるわけがありません。
しかし残念なことに、マジックをすることで不要なストレスを溜めてしまう人があまりにも多くいます。彼らはとにかく試合の結果を重視し、試合の後はおろか、始まる前から既にストレスを感じてしまいます。結果だけが全てだと。

これはいけません。本当に、本当にいけない!

マジックはただのゲームです。そもそも楽しむために考案されたものであるはずです。特に目的の無い状況でマジックをして緊張する人なんていません。しかし大会の場では全てが変わってしまうのです。
何かを達成しようとするストレスは様々な状況に対する視点を乱し、優先順位を変化させます。マジックを楽しみながら腕を上げていくよりも先に、勝利ただそれだけを求めようとするのです。ただ勝てば嬉しい。負けたらただ悲しい。
マジックを楽しめない限り、あなたの腕前は一生上達しないでしょう。何事も楽しめていないならば、それを辞めるのが一番です。簡単なことです。しかし辞めたくないけど楽しめてもいないのであれば、マジックに求める優先順位をもう一度考え直してみましょう。あなたはただ勝利のためだけに、マジックをプレイしていませんか?

では、競技志向と楽しさのバランスを取るために必要なアドバイスをしましょう。

1. あなたがゲームを楽しむためには何が必要なのか分析してみよう。
楽しくゲームをプレイするためには、そもそも何で楽しいのかを考えてみることです。まずはゲームをしていて自分が最も楽しいと思える瞬間は何から生じているのか考えてみましょう。それは結果でしょうか?ゲームそのものでしょうか?そのゲームをする人の輪からでしょうか?それとも大きな目標でしょうか?より強いプレイヤーとの対戦でしょうか?何か好きなデッキタイプがあるのかも?あるいはフォーマット?
自分の楽しさの原動力が何処にあるのか分かったら、今度はゲームをする際にそれらへ着目する優先順位を正しいものにしましょう。もし、あなたが結果を楽しさの原動力としているように感じるならば、それからは脱出して別の原動力を探すべきです。結果という一時的なものにすぎない状態からしか楽しさを見いだせないのは、非常に不安定ですから。

2. 結果ではなく、その試合の流れや質に焦点を当ててみよう。
ChannelFireball.comにアップされているBen Starkによるアモンケットリミテッドの一場面にこんなものがあります。彼はメイン戦をほぼ勝ち確定の状況から、信じられないほど複雑な事象が混じり合った長期戦を経て、最後は負けてしまいました。しかし、彼は全く動揺しませんでした。サイドボーディング中に彼は「うわー、まさか負けるなんて思わなかったよ。さっきのは本当に面白い試合だったなあ」と感想をつぶやくのです。競技マジックをより楽しむための第一歩は、結果に一喜一憂せず、その試合で起こったやりとりや自分のプレイングを見直してみることです。先程も言いましたが、たとえ負けても楽しむことは出来るのです。負け試合にも興味深かった場面や難しかった場面、楽しかった場面があることでしょう。

3. 『競技マジック』をただ一つの競技ではなく、総合的な経験として捉えてみよう。
競技マジックはグランプリやPPTQ、プロツアーに限った話ではありません。その全てがユニークな経験となります。
大会では大切な友人や同じ志を持った人々に囲まれますし、そこで愛するゲームをプレイ出来ること自体が幸せなことでもあります。大規模イベントにはバイヤーやアーティストがいます。会場が大きければ大会後には観光や散策も出来るでしょう。競技マジックを楽しむには、そこで経験すること全てに目を向けてみることです。そこで得られる経験とは大会ただ一つのものに留まりません。競技マジックに参加することは、すなわち競技マジックがとても素晴らしいものであることを祝うことなのです。競技やプロの世界でゲームをプレイするために、競技志向と楽しむことの片方だけを選ぶ必要はありません。私達はそれらの丁度いいバランスを取ることが出来るのです。そうすることで、きっとあなた自身の助けになるでしょう。

コメント

ポニョ焼き
2017年11月27日12:18

翻訳ありがとう!すごくいい文章だと思ったから、この翻訳と原文一緒にフェイスブックで紹介していい?

いとだ
2017年11月27日12:22

はい、構いませんよー。

シグマ@dj-SIGMA
2017年11月28日19:44

これはもっと広がって欲しいですねこちらも自分のブログで紹介したいのですがよろしいでしょうか?

いとだ
2017年11月28日21:42

転載許可不要です。ご自由に紹介して頂いて構いません!

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